Aさん(24歳、男性)は急性虫垂炎の術後1日で、ベッド上で仰臥位になり右前腕から点滴静脈内注射が行われている。Aさんは左利きである。病室外のトイレまでAさんが移動するための適切な療養環境はどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第111回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
術後早期の患者がベッドから移動する際、転倒防止は最も重要な看護介入の一つです。ベッドの高さを調整し、端座位で足底が床にしっかりとつくようにすることで、患者は安定した姿勢で立ち上がることができ、転倒のリスクを大幅に低減できます。これは、患者の安全を確保するための基本的な療養環境の整備です。
選択肢ごとの解説
- 1. 左利きであることを考慮すると、左手側に履物を置くことは一見自然に思えます。しかし、点滴を行っている右腕に負担をかけず、かつ輸液スタンドを動かしながら安全に移動することを考えると、利き手側に置くことが常に最善とは限りません。転倒リスクを低減するためには、履物が適切な位置にあることだけでなく、履きやすさ、滑りにくさ、そして安全な立ち上がり動作をサポートする環境全体の整備がより重要です。正しくは:履物は、Aさんが安全に立ち上がり、無理なく履ける位置に置く。点滴を行っている腕や利き手、輸液スタンドとの兼ね合いも考慮し、転倒のリスクを最小限にするよう工夫する。例えば、ベッドの足元付近など、立ち上がってから安定した体勢で履ける位置を検討する。選びやすい理由:患者が左利きであるため、利き手で履物を扱えるよう配慮することは正しい選択肢のように感じられます。混同注意:利き手側への配慮と、点滴中の安全な移動・転倒予防のための総合的な環境整備が混同されやすいです。
- 2. 患者がベッドから移動する際には、通常、移動する側のサイドレールは下げます。右手側に点滴が行われている状態でサイドレールを立てたままにすると、立ち上がりの際に身体を支えにくく、点滴ルートがサイドレールに引っかかったり、無理な体勢になったりして転倒のリスクを高める可能性があります。移動時には、安全な立ち上がりを妨げないように配慮することが重要です。正しくは:Aさんがベッドから安全に降り、移動する際には、移動を妨げないようにベッドのサイドレールを下げる。特に点滴側の腕には十分なスペースを確保する。選びやすい理由:サイドレールは患者の転落防止に役立つため、立てておくことが常に安全につながると思われがちです。混同注意:ベッド上での転落予防と、ベッドからの移動時の転倒予防のための環境整備が混同されやすいです。
- 3. 点滴はAさんの右前腕に行われています。輸液スタンドを左手側に置くと、点滴ルートがAさんの身体を横切る形になり、ルートのたるみや引っ張り、絡まりのリスクが高まります。これにより、点滴が抜けたり、流量が不安定になったりするだけでなく、Aさんの移動の妨げになり転倒の危険性も増します。輸液スタンドは、点滴を行っている腕と同じ側(この場合は右手側)に置くのが適切です。正しくは:輸液スタンドはAさんの右手側、つまり点滴を行っている腕と同じ側に配置する。これにより、点滴ルートが最短距離になり、絡まりや引っ張りのリスクを低減し、安全な移動をサポートできる。選びやすい理由:Aさんが左利きであるため、利き手で輸液スタンドを操作しやすいように左側に置くことが配慮だと誤解しがちです。混同注意:患者の利き手への配慮と、点滴ルートの安全管理・身体の動きやすさの優先順位が混同されやすいです。
- 4. 正解。術後1日の患者がベッドから安全に立ち上がり、移動するためには、端座位で足底が床にしっかりと接地できる状態が非常に重要です。足底が床につくことで、身体が安定し、スムーズに立ち上がることができます。これは転倒リスクを低減するための最も基本的な環境整備の一つであり、安全な移動を促す上で不可欠な配慮です。
国試ポイント
術後早期の患者に対する安全な移動支援と転倒予防のための環境整備に関する知識が問われています。特に、点滴中の患者や利き手を考慮した上での、具体的な看護ケアの優先順位と適切な方法を理解しているかが重要です。
混同注意
患者の利き手への配慮(選択肢1, 3)と、点滴中のルート管理の安全性(選択肢2, 3)、そして術後早期の患者の転倒予防のための環境整備(選択肢4)の優先順位が混同されやすいです。特に、利き手への配慮と点滴管理の安全性が、転倒予防という最も重要な視点よりも優先されると誤解しやすい点に注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
次に同じような論点が出た場合、まず患者の「安全」を最優先に考えます。特に「転倒」のリスクがある状況では、安全な移動を可能にするための最も基本的かつ重要な環境整備は何かを判断します。また、点滴などの医療処置が行われている場合は、その処置の安全性も同時に確保できるような選択肢を選びます。患者の利き手などの個別性は考慮すべきですが、それよりも身体機能や治療状況に応じた安全確保が優先されます。
関連知識
術後早期患者の全身状態のアセスメント(めまい、ふらつき、疼痛の有無など)転倒・転落アセスメントスケール(例:Morse Fall Scaleなど)点滴静脈内注射中の患者の移動時の注意点(ルートの管理、輸液ポンプの操作など)患者の利き手や身体機能に合わせた環境調整の原則トイレ動作時の介助方法