上肢のフィジカルアセスメントの立位での実施場面の写真(別冊No. 1)を別に示す。手のひらを上にして、肩の高さで水平に前方に両腕を伸ばしてもらった。その後、閉眼してもらうと、左腕が回内しながら下がっていった。アセスメントの結果で正しいのはどれか。

選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第111回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
上肢を水平に保つには、抗重力筋による持続的な筋収縮が必要です。錐体路(皮質脊髄路)は随意運動、特に抗重力筋の運動を制御しています。錐体路に障害があると、筋力低下や筋緊張の異常が生じ、このテストでは回内しながら腕が下がる現象(回内現象・プロネーションテスト陽性)として現れます。これは伸筋よりも屈筋の筋力が優位になるためです。
選択肢ごとの解説
- 1. 位置覚の異常は深部感覚障害の所見であり、目を閉じると肢位が分からなくなり、腕が不規則に動いたり、重力に従って単純に下がったりはするが、特徴的な回内現象は示さない。また、位置覚異常のみであれば、運動能力自体は保たれる。正しくは:深部感覚(位置覚)の異常では、ロンベルグ徴候陽性(開眼では姿勢を保てるが、閉眼で動揺増強)などが典型的。選びやすい理由:目を閉じるという指示が含まれているため、感覚系の異常を想起しやすい。混同注意:深部感覚障害(位置覚)と運動機能障害。
- 2. 正解。設問の「目を閉じてもらうと、左腕が徐々に回内しながら下がっていった」という所見は、上肢のバレー徴候(プロネーションテスト)陽性であり、錐体路障害に特徴的な所見である。特に、腕を水平に保つ伸筋よりも、腕を回内・屈曲させる屈筋の筋力が相対的に優位になることで生じる。選びやすい理由:問題文の所見が錐体路障害に典型的な症状を正確に描写しているため。混同注意:錐体外路障害、小脳機能障害、深部感覚障害。
- 3. 小脳機能の異常では、協調運動障害や平衡機能障害が主な所見となる。例えば、測定障害(目的の動作で目標を超えてしまう)、運動失調(体幹や四肢のふらつき)、構音障害、眼振などが現れるが、回内しながら腕が下がるという特徴的な所見は小脳機能異常では見られない。正しくは:小脳機能異常では、測定障害や反復拮抗運動不能などが認められる。選びやすい理由:体のバランスや動きに関わるため、小脳の問題を想起するかもしれない。混同注意:錐体路障害と小脳障害の症状の区別。
- 4. 関節可動域の障害は、関節自体の構造的な問題や炎症などによって、関節を動かせる範囲が制限される状態を指す。このテストは筋力や神経機能の評価であり、関節可動域に直接関連するものではない。患者は腕を肩の高さまで伸ばせているため、可動域自体に大きな問題はないと考えられる。正しくは:関節可動域の障害は、関節の屈曲・伸展などの角度が制限される所見として現れる。選びやすい理由:腕が下がるという現象を、物理的な動きの制限と誤解する可能性がある。混同注意:運動機能障害(神経性)と運動器障害(関節・骨・筋の器質的異常)。
国試ポイント
錐体路障害の診察所見と、それが示唆する疾患を理解しているか。
混同注意
小脳機能障害では、測定異常や運動失調が主な所見となり、プロネーションテストとは異なる。深部感覚障害(位置覚異常)では、目で見ていれば姿勢を保てるが、目を閉じると著しく動揺する(ロンベルグ徴候陽性など)。
次に同じ論点が出たら
同様の症状が提示された場合、随意運動や筋緊張の異常を伴うかどうか、眼を開けている時と閉じている時の差があるか、他の神経学的所見(反射、感覚など)と組み合わせて判断する。
関連知識
錐体路障害は脳卒中(特に皮質下梗塞や脳出血)、脊髄疾患、多発性硬化症などで見られる。錐体路徴候には他にバビンスキー反射、腱反射亢進、クローヌスなどがある。プロネーションテストは軽度の片麻痺を見つけるのに有用である。