Aさん(60歳、男性)は、自宅近くを散歩中に突然の胸痛が出現し、救急車を要請した。救急隊到着時のバイタルサインは、呼吸数28/分、脈拍100/分、血圧80/40mmHgであった。冷汗が著明で、前胸部から左肩にかけての激痛を訴えていた。問診で狭心症の既往歴があることが分かった。入院時の検査で急性心筋梗塞と診断された。 緊急心臓カテーテル検査で左冠動脈起始部に90 %の閉塞を認め、緊急冠動脈バイパス術が行われた。術後5日、集中治療室から一般病棟に転棟した。Aさんは「手術も無事終わって命が助かった。リハビリテーションが大切と聞いたので、頑張って廊下を歩きますよ」と看護師に話した。術後のADL拡大は順調に進み、Aさんは病棟内での200 mの歩行が許可されている。胸部症状の出現や心電図の変化は認めない。Aさんへの心臓リハビリテーションについて適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
心臓リハビリテーション中の運動において、息苦しさ(呼吸困難)は心臓への過負荷を示す重要な症状である。狭心症や心不全の悪化、不整脈の誘発などに繋がり、重篤な合併症を避けるためにも直ちに運動を中止し、安静にすることが原則である。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。息苦しさ(呼吸困難)は心臓への負担増大を示す重要な症状であり、運動中止の明確な基準である。患者の安全を最優先するため、症状出現時には速やかに運動を中止することが適切である。選びやすい理由:症状出現時の適切な対応は、医療従事者として基本的な判断であるため。混同注意:症状がある程度であれば継続してもよいという誤った判断。
- 2. 術後早期の冠動脈バイパス術患者にとって、階段昇降は身体に大きな負担をかける運動であり、心臓リハビリテーションプログラムにおいて慎重に段階的に導入されるべきである。安易な勧奨は心臓への過負荷や合併症のリスクを高める。正しくは:階段昇降は病態が安定し、医師の許可を得た上で、心臓リハビリテーションの専門職の指導のもと、段階的に負荷を上げて行う。選びやすい理由:「気分の良いとき」という言葉から、患者の状態が良いと判断し、より活動的な運動を勧めたくなる心理。混同注意:患者の自覚的な「気分」と客観的な心機能の安定性との混同。
- 3. 術後5日で集中治療室から一般病棟に転棟し、200mの歩行が許可されている患者であれば、衣服の着脱は日常生活活動(ADL)の中でも比較的負荷の低い動作であり、自立を促すべきである。家族に介助を任せるのはADL拡大の阻害となる。正しくは:衣服の着脱は患者自身で行うよう促し、必要に応じて部分的に介助する。選びやすい理由:術後患者の安静を重視しすぎたり、過保護なケアが適切な場合もあるという誤解。混同注意:術後早期のADL制限が必要な時期と、ADL拡大を促す時期との混同。
- 4. 術後早期の心臓リハビリテーションでは、心臓への負担を考慮し、ウォーキングなどの有酸素運動を中心に実施される。レジスタンストレーニング(筋力トレーニング)は心臓への急激な負荷をかける可能性があり、一般的には有酸素運動よりも遅れて、心機能が安定してから段階的に導入される。正しくは:ウォーキングなどの有酸素運動を中心に、軽度から中等度の強度で実施する。選びやすい理由:全身の筋力維持・強化はリハビリテーションに重要であるという一般的な認識から。混同注意:心疾患患者のリハビリテーション全体と、術後早期のリハビリテーションの段階別の運動内容の混同。
国試ポイント
心臓リハビリテーションにおける運動療法の原則と中止基準。
混同注意
自覚症状による運動中止基準と、客観的な運動耐容能の評価基準。
次に同じ論点が出たら
心臓リハビリテーションの問題では、運動負荷の適切な設定、運動中の観察項目、および運動中止基準に関する知識が問われることが多い。特に、患者の自覚症状と客観的指標の両方から安全性を判断する視点が重要。
関連知識
心臓リハビリテーションの運動中止基準(胸痛、めまい、ふらつき、冷汗、著明な息切れ、収縮期血圧の急激な低下、重篤な不整脈出現など)、運動強度設定の指標(心拍数、Borgスケール)。