Aさん(26歳、女性)は高校生のころからリストカットを繰り返し、ボーダーラインパーソナリティ症〈境界性パーソナリティ障害〉の診断を受けている。最近仕事が忙しくなったパートナーに「今すぐ返事が欲しい。私を見捨てるのか」とメールを送り続け、帰宅したパートナーが、手首から血を流しているAさんを見つけた。パートナーに付き添われて総合病院の救急外来を受診したAさんは、意識清明で神経損傷はなく、手首の処置をした看護師に「消えてしまいたい。生きている意味がない」と話した。 処置時の看護師の声かけで適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
看護師が患者へ声をかける際は、患者の感情や状況を受容し、共感的な態度を示すことが重要です。選択肢2の「死を望むほど、大変な苦しみだったのですね」という言葉は、患者の極度の苦痛を理解し、その感情を否定せずに受け止める姿勢を表しています。これにより、患者は自分の感情が理解されたと感じ、安心感を抱きやすくなります。精神的苦痛が強い患者に対しては、まず共感的に傾聴し、患者が心を開きやすい環境を作ることが看護の基本です。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者自身の感情よりも配偶者の感情を優先するような表現であり、患者の主体性を損ねる可能性があります。また、患者自身の苦しみに焦点を当てておらず、共感的な応答ではありません。正しくは:「あなたにとって、この苦しみがどのように配偶者に影響すると感じていますか?」のように、患者自身の視点から配偶者との関係性を探る。選びやすい理由:患者を取り巻く人間関係もケアの一環として重要だと考えがちですが、この状況ではまず患者自身の感情に焦点を当てるべきです。混同注意:家族支援の重要性。
- 2. 正解。患者の極度の苦しみを理解し、その感情を否定せずに受け止める姿勢を表しています。これにより、患者は自分の感情が理解されたと感じ、安心感を抱きやすくなります。選びやすい理由:患者の苦痛に寄り添う姿勢が明確に示されているため。混同注意:患者の感情を評価する、あるいは同情することと、共感することの区別。
- 3. 患者が抱える苦痛とは直接関係のない話題であり、患者の感情に寄り添う姿勢が見られません。また、患者のコミュニケーション手段について一方的に指導するような印象を与えかねません。正しくは:「どのようなことが、メールの返信を即座に期待できないと感じさせているのですか?」のように、患者の状況に対する感情や思考を探る。選びやすい理由:現代のコミュニケーションツールに関する一般論として正しいと捉えられがちですが、患者の苦痛に対する応答としては適切ではありません。混同注意:一般的な社会常識と治療的コミュニケーションの区別。
- 4. 「止めるべきです」という表現は、患者の行動を否定し、命令するようなニュアンスを含みます。患者は自身の行為を止められないほど苦しんでいる可能性があり、このような一方的な指示は患者を孤立させ、自己否定感を強める恐れがあります。正しくは:「ご自身を傷つける行為に駆られるほど、つらいのですね。その苦しみを少しでも和らげるために、私にできることはありますか?」のように、患者の苦痛を受容し、支援の姿勢を示す。選びやすい理由:患者の安全を確保したいという看護師の思いから、自傷行為を止めるよう促すことが正しいと錯覚しやすいですが、一方的な指示は逆効果です。混同注意:患者の安全確保と、患者の感情・行動の受容のバランス。
国試ポイント
精神看護におけるコミュニケーションの基本原則、特に共感と受容の重要性を理解しているか。
混同注意
患者の苦痛を直ちに解決しようとする指示的コミュニケーションと、患者の感情を受容する非指示的コミュニケーションの区別。特に、自殺念慮がある患者に対しては、安易な励ましや否定は逆効果となるため注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
患者の感情を直接的に否定したり、アドバイスを与えたりする選択肢ではなく、患者の感情や体験を肯定的に受け止める表現を選ぶ。
関連知識
精神看護における治療的コミュニケーション、特に傾聴、共感、受容、明確化、自己開示の技法。ラポール形成の重要性。患者中心のケア。