Aさん(81歳、女性)は、1人暮らし。7年前から糖尿病、高血圧症、便秘症で病院の内科に定期的に通院しており、近所に住む長女が時々様子を見に来ていた。本日、長女がAさん宅を訪ねたところ、Aさんは床に倒れて起き上がれなくなっていた。受診の結果、胸椎と腰椎の圧迫骨折で病院に入院した。入院時、Aさんは病棟看護師に「朝食は食べていません。朝の薬を飲んだと思うが、はっきり覚えてません。家に帰ればわかります」と話した。病棟看護師が体のことで心配なことはあるかを問うと「この半年で体重が2kg減りました。最近は疲れやすく歩くのもゆっくりで、握力も弱くなり荷物を持つのがつらいです。このまま寝たきりになるのではないかと不安です」と話した。内科のカルテには1か月前の計測で身長150 cm、体重41 kgと記載されていた。入院時のバイタルサインは、体温36.6°C、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧144/88 mmHg。血糖値114 mg/dLで、軽度の皮膚湿潤があった。改訂長谷川式簡易知能評価スケールは29点であった。 Aさんは、入院中に要介護1と認定された。退院後は週2回の家事援助サービスを利用した。退院3か月後、Aさんは長女と病院の整形外科外来を受診した。長女は診察を待つ間、外来看護師に「母は最近、ご飯を食べたのに食べていない、と近所の人に言うので困っている。薬の飲み忘れも目立ってきた。どうしたらよいか」と話した。外来看護師が長女に説明する内容で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第108回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
Aさんの長女からの相談内容は、Aさんの認知機能が低下している可能性を強く示唆しています。食事の記憶障害や服薬忘れは、現在の介護度やサービスでは対応しきれていない新たな課題であり、生活の質や安全に直結します。このような状況では、まず現在の介護保険サービスが適切であるか、介護度自体を見直す必要があるかを検討することが最優先です。介護支援専門員(ケアマネジャー)は、介護保険制度におけるサービスの利用調整や、状態変化に応じたケアプランの見直し、医療機関との連携などを担う専門職であり、長女の困りごとに対する最初の、そして最も適切な相談先です。介護支援専門員を通じて、認知症の診断・治療が可能な医療機関への受診を促したり、認知症対応型サービスなど新たなサービスの導入を検討したりする道筋をつけることができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。Aさんの認知機能の変化(食事忘れ、服薬忘れ)は、現在の介護サービスの量や内容が適切でなくなっている可能性を示唆しています。介護支援専門員に相談することで、Aさんの状態に合わせた介護度の見直しや、認知症に関する医療機関への受診調整、新たなサービスの導入などを検討することができます。これが、娘さんの具体的な困りごとに対し、根本的な解決に繋がる最も適切な対応策です。
- 2. これは一時的な対処法であり、認知機能低下の根本的な問題解決にはなりません。また、食事が終わったことを忘れる場合、目の前に食べ物があっても「食べた」という認識がなければ効果が薄い可能性があります。誤嚥のリスクを高めることもあります。正しくは:認知機能の評価とそれに合わせたケアプランの見直しを検討しましょう。選びやすい理由:食事忘れに対する直接的な対策に見えるため、選びやすいかもしれません。混同注意:認知症高齢者の食事に関する具体的なケア方法の一つと混同する可能性がありますが、本件はより包括的な対応が求められています。
- 3. 認知機能低下が見られる場合でも、社会参加や外出は生活の質を保つ上で重要です。一方的に外出を制限することは、Aさんの活動能力や精神的な健康に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これは娘さんの相談内容に対する適切な助言ではありません。正しくは:安全を確保しつつ、社会参加を促すための具体的な支援策を介護支援専門員と検討しましょう。選びやすい理由:近所でのトラブルを回避するための短絡的な解決策に見えるかもしれません。混同注意:認知症高齢者の安全管理と混同する可能性がありますが、過度な行動制限は推奨されません。
- 4. 入院後の環境変化で一時的に認知機能が低下することはありますが、退院3か月後も継続し、具体的な困りごととして現れている場合は、単なる「よくある症状」として見過ごすべきではありません。認知症の進行や、他の原因による認知機能障害の可能性を考慮し、専門的な評価と介入が必要です。この説明だけでは、娘さんの不安を解消し、適切な支援に繋げることはできません。正しくは:認知機能の変化が継続しているため、専門医による詳しい診察や評価を検討する必要があります。選びやすい理由:高齢者の一般的な状態として納得させようとする心理が働くため、選びやすいかもしれません。混同注意:せん妄など、入院中の急性期に起こる一時的な認知機能障害と混同する可能性があります。
国試ポイント
この問題は、認知機能の低下が疑われる高齢者の家族からの相談に対し、看護師がどのような専門職に繋ぎ、どのような対応を促すべきか、という多職種連携と介護保険制度に関する基本的な知識を問うています。特に、ケアマネジャーの役割と、身体状況や認知機能の変化に応じた介護度の見直しの重要性を理解しているかがポイントです。
混同注意
認知症高齢者への具体的な介助方法(選択肢2、3)や、一般的な高齢者の状態に関する知識(選択肢4)と混同しやすいですが、本問の状況では根本的な支援体制の見直しが最も重要です。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、高齢者の状態変化(身体的、精神的、認知機能)があり、現在のサービス体制に疑問が生じている状況であれば、まずその状態を評価し、最も適切な専門職(ケアマネジャー、医師など)に繋ぐ選択肢を選ぶことが重要です。個別の対処法よりも、全体的なケアプランの見直しや制度利用を促す選択肢が正答となる傾向があります。
関連知識
介護保険制度、介護支援専門員の役割、地域包括支援センターの機能、認知症の初期症状と対応、認知症の診断・治療の流れ、認知症高齢者の生活支援に関する具体的なケア(食事、服薬管理、BPSDへの対応)。