Aさん(23歳、女性)。両親との3人暮らし。Aさんは大学受験に失敗して以来、自宅に引きこもりがちになった。1年前から手洗いを繰り返すようになり、最近では夜中も起き出して手を洗い、手の皮膚が荒れてもやめなくなった。心配した母親が付き添って受診したところ、Aさんは強迫性障害と診断された。母親は、Aさんについて「中学生までは成績優秀で、おとなしい子どもだった」と言う。Aさんには極度に疲労している様子がみられたことから、その日のうちに任意入院となった。 入院後、Aさんは主治医と話し合い、1日の手洗いの回数を決めたが、毎日その回数を超えて手洗いを続けている。看護師が確認するといつも洗面所にいる。Aさんが決めた回数を超えて洗面所で手洗いを続けているときに、看護師がとる対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
強迫性障害の疑いがある患者に対する看護師の対応として、まずは患者の状況を理解し、その行動の背景にある不安や苦痛に寄り添うことが重要です。一方的に行動を止めさせたり、非難したりするのではなく、患者自身が抱える問題について共に話し合い、解決策を模索する姿勢が治療的関係を構築し、今後の介入に繋がります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。強迫行為と思われる行動に対して、まずは患者の状況や感情を理解し、問題解決に向けて共同で取り組む姿勢が重要です。一方的に制止するのではなく、患者自身が抱える苦悩や不安に寄り添い、行動の背景にある原因を探ることが適切な初期対応となります。選びやすい理由:すぐに手洗いを止めさせたり、精神的な問題として専門医に丸投げしたりするのではなく、まずは傾聴と共感を試みるのが第一歩です。混同注意:患者の自律性を尊重しつつ、問題行動の根源を探るアプローチが最も効果的です。単なる説明や制限は根本的な解決にはつながりません。
- 2. Aさんの手洗いは、単なる不潔恐怖からくるものではなく、強迫的な行為である可能性が高いです。病棟の清潔さを説明するだけでは、行為の根本原因には対応できず、不安が解消されることは期待できません。正しくは:Aさんの行動の背景にある精神的な苦痛や不安に焦点を当て、傾聴や共感を通じてアセスメントを行う必要があります。選びやすい理由:清潔保持という行動の側面だけを見ると、病棟の清潔さを説明することは一見合理的に思えるかもしれませんが、強迫行為の本質を見誤っています。混同注意:強迫性障害の場合、論理的な説明だけでは行動は止まりません。患者の認知の歪みや不安に寄り添った対応が必要です。
- 3. 手洗い行為が過剰であるというだけで、直ちに隔離を検討するのは不適切です。隔離は患者の自由を大きく制限する行為であり、自傷他害のリスクが高い場合など、やむを得ない場合にのみ検討されるべきです。まずは他の介入方法を試みるべきです。正しくは:まずはAさんの行動の背景をアセスメントし、精神科専門医との連携や薬物療法、精神療法などの検討を主治医と行うべきです。隔離は最終手段であり、まずは他の介入を優先します。選びやすい理由:行動が過剰でコントロールが難しいと判断した場合、対応に困って最終手段を検討したくなるかもしれませんが、患者の人権を最大限尊重する必要があります。混同注意:隔離は精神科医療における最終手段の一つであり、適切なプロセスと根拠が必要です。安易に隔離を検討することは、患者の尊厳を傷つけることになります。
- 4. 手洗いの回数を増やすことは、Aさんの強迫的な行動を容認し、さらに助長してしまう可能性があります。問題解決には繋がらず、むしろ病状を悪化させる危険性があります。正しくは:手洗いの回数を増やすのではなく、Aさんが手洗い行動に駆り立てられる原因や感情を深く掘り下げ、代替行動や不安軽減の方法を共に探ることが重要です。選びやすい理由:患者の希望を叶えることが良い対応だと誤解する可能性がありますが、強迫行為の場合はその限りではありません。混同注意:強迫行為に対しては、行動の制限や段階的な減少を目指すのが治療の基本です。回数を増やすことは、治療方針に逆行します。
国試ポイント
強迫性障害の患者に対する看護師の基本的な対応(受容的態度、傾聴、共感、協同的な問題解決)が問われています。強迫行為を単なるわがままや不潔恐怖と捉えず、疾患の症状として理解し、適切なコミュニケーションをとることが求められます。
混同注意
論理的な説明で行動が改善すると考える(選択肢2)ことや、患者の訴えをそのまま受け入れて行動を助長する(選択肢4)こと、あるいはすぐに身体拘束や隔離といった制限的な手段を検討する(選択肢3)ことと混同しやすいですが、これらは強迫性障害の病態理解に基づいた適切な対応ではありません。
次に同じ論点が出たら
話し合いを通じてAさんの不安の誘因や感情をさらに詳しくアセスメントし、精神科専門医との連携、具体的な行動制限や代替行動の提案、不安軽減のためのリラクセーション法の導入などを検討する。
関連知識
強迫性障害(OCD)の診断基準(DSM-5)、認知行動療法(曝露反応妨害法など)、薬物療法(SSRI)、精神科看護における治療的コミュニケーション。