Aさん(32歳、男性)。自宅の部屋で多量の鎮咳薬を見つけた母親に心配され、自宅近くの病院を受診した。「5年前、仕事が忙しくなって風邪がなかなか治らないことがあった。そのときに処方された咳止めの薬を飲むと、頭がボーッとして気持ちが良かったのがきっかけで、近所の薬局で咳止めを買うようになった。3年前から飲む量が増えるようになり、やめられなくなっている。仕事もうまくいかなくなり、退職した」と言う。Aさんは紹介を受けた精神科を受診した。 さらに2週が経過し、Aさんは鎮咳薬の服用をやめる意思を強く固め、今後の依存症の治療について真剣に考えるようになった。Aさんの父親はAさんが幼少期のころ死亡しており、Aさんは母親と2人で暮らしていた。母親は週2回面会に来て、Aさんに対して小さな子どもに接するように世話をしていた。担当看護師が母親と今後のことについて話すと、母親は「私が何とかします。私しかこの子の力になってあげられないのです。本当はもっとAにしっかりして欲しい。でも、そう言うとAは怒ってしまいます」と話した。担当看護師の母親への声かけで適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Aさんは自律性を持ち始め、依存症治療への意欲を示しています。母親もAさんの自立を願っているものの、過干渉な関わり方が背景にあると考えられます。この状況で「Aさんが自分で自分のことを決められるように支えていきましょう」という声かけは、Aさんの主体性を尊重し、母親がAさんの自立を支援する方向へと関わり方を変えていくことを促します。これは、共依存的な関係から脱却し、Aさんの治療と自立を両面からサポートするための第一歩として非常に適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 母親がAさんの依存に対して孤立感を抱いている状況で、すぐに他の親族の関与を促すのは、母親の気持ちを無視した対応となり、信頼関係を損なう可能性があります。まずは母親の気持ちに寄り添い、現在の状況を共有することが優先されます。正しくは:まずは母親の気持ちを受け止め、「お一人で抱え込まれているのですね」などと共感を示す。選びやすい理由:家族全体で支える視点から、他の親族を想起させる。しかし、タイミングや母親の状況を考慮すると不適切。混同注意:家族の協力は重要だが、このタイミングで直接的な介入を提案すると、母親が責められていると感じる可能性がある。
- 2. Aさんが怒ることを避けるだけでは、Aさんの自立を促すことにはなりません。また、母親の過干渉やAさんの依存という問題の根本的な解決にはつながりません。Aさんの感情を尊重しつつも、自立への支援が必要です。正しくは:Aさんの感情への配慮と自立支援のバランスを考え、「怒りも大切な感情ですが、Aさんが自立に向けて一歩踏み出せるよう、どのようにサポートできるか一緒に考えましょう」などと伝える。選びやすい理由:母親の「そう言うとAは怒ってしまいます」という発言に寄り添うように聞こえるが、問題の解決にはならない。混同注意:Aさんの感情を考慮することは必要だが、怒りを避けること自体が治療の目的ではない。むしろ、怒りの背景にある感情を理解し、適切に対処する方が重要。
- 3. 母親の「小さな子どもに接するように世話」という関わり方がAさんの自立を阻害し、依存を助長している可能性が示唆されています。このままの関わり方を続けることは、Aさんの依存症治療にとって適切ではありません。母親自身も「本当はもっとAにしっかりして欲しい」と感じており、この言葉は母親の葛藤を無視することになります。正しくは:母親の関わり方がAさんに与える影響について、共感的に語りかけながら見直すきっかけを提供する。「お母様がAさんのことを大切に思っていらっしゃるのはよく分かります。その関わり方が、Aさんの自立に向けてどのように影響しているか、一緒に考えてみませんか」など。選びやすい理由:母親の不安を和らげるように聞こえるが、現状維持を肯定することは問題解決から遠ざかる。混同注意:母親の関わり方に問題がある可能性が高い状況で、それを肯定する発言は、看護師としての専門的な視点から見て不適切。
- 4. 正解。Aさんは鎮咳薬の服用中止と依存症治療への意欲を示しており、母親もAさんの自立を願っています。この言葉は、Aさんの主体性を尊重し、母親にもAさんの自立を促す関わり方を支援する方向性を示しています。母親の「本当はもっとAにしっかりして欲しい」という思いにも寄り添いつつ、具体的な支援の方向性を提示しており、適切な声かけです。正しくは:この選択肢は適切であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:Aさんの主体性を尊重しつつ、母親の共依存的な関わり方からの脱却を促す点が優れている。混同注意:「自分で自分のこと」という表現は、現在の母親の過保護な態度と対比され、Aさんの自立支援の明確な方向性を示す。
国試ポイント
本問題は、薬物依存症の患者と、その家族(特に共依存関係にある母親)への看護師の適切な介入方法を問うものです。患者の自立への意欲を尊重しつつ、家族の関わり方がその自立にどう影響するかを理解し、適切な支援を促すコミュニケーション能力が求められます。共依存関係の理解と、脱却に向けた支援の視点が重要となります。
混同注意
他の選択肢は、母親の気持ちを一時的に和らげるように見えますが、根本的な問題解決には繋がりません。特に「怒らせないようにする」や「今まで通りの関わりで良い」は、現在の状況を悪化させる可能性すらあります。本問では、患者の自立と家族の関わり方の変化という、より本質的な支援が求められています。
次に同じ論点が出たら
この声かけの後に、母親がAさんへの関わり方を具体的にどう変えていけるか、一緒に目標設定を行い、具体的な行動計画を立てていく必要があります。また、母親自身の不安や葛藤に対する心理的サポートも継続して行うことが重要です。
関連知識
薬物依存症患者の家族の特徴として、共依存関係が挙げられます。共依存とは、特定の関係性において、一方がもう一方の世話を過剰に焼くことで、自身の存在意義を見出そうとする状態です。この状態では、依存症患者の自立が阻害され、問題が長期化しやすい傾向にあります。看護師は、患者だけでなく家族に対しても、共依存からの脱却を促す支援が求められます。