Aさん(82歳、男性)は、介護付の有料老人ホームに入居している。10年前まで会社を経営していた。プロ野球や世界経済に興味があり、友人とインターネットを用いて交流するのを楽しみにしている。Parkinson〈パーキンソン〉病で、現在Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉の重症度分類でステージII。両側の上下肢の静止振戦や動作緩慢がみられる。食事は自分の居室に運んでもらって食べている。身の回りのことは1人でできる。1人での外出も可能だが、転倒に対する恐怖が強いため1日中室内で過ごしている。 有料老人ホームの看護師はAさんに病気の進行を予防するために運動を勧めたが、Aさんは「この病気は進行性だからいつかは動けなくなる。今、転ぶと骨折して動けなくなるかもしれない。だから運動するのは嫌だ」と言う。AさんはParkinson〈パーキンソン〉病に関する情報を入手しており、病状の理解ができている。薬物は自己管理できている。かかりつけ医に自分から病状の説明を求めることもある。Aさんの転倒の不安を軽減するために看護師とAさんが一緒に実施することで、最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2・4番(いずれも正解)
解説
【公式の取扱い】この問題は1つを選ぶ形式ですが、公式の正答表では2・4のいずれも正解とされています。 Aさんはパーキンソン病について理解しており、転倒の不安から運動に抵抗感を示しています。看護師とAさんが共に取り組むことで、転倒の不安を軽減し、運動への意欲を高めることが重要です。選択肢2の「転倒予防に関する講座への参加を検討する」は、Aさん自身が転倒予防の知識や具体的な対策を学ぶことで、不安が軽減され、運動に対する肯定的な意識が育まれる可能性があります。選択肢4の「運動の効果と転倒のリスクとを比較検討する」は、Aさんが抱える具体的な懸念(転倒リスク)と運動のメリットを客観的に評価することで、Aさん自身が納得し、不安を乗り越えて運動に取り組むための合理的な根拠を得ることができます。Aさんの主体性を尊重し、情報に基づいて意思決定を支援する観点から、これら2つの選択肢が適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 転倒不安の軽減にはつながる可能性がありますが、Aさんが運動を嫌がる理由が『動けなくなること』と『転倒による骨折』であるため、車椅子での外出は運動の機会を奪い、廃用症候群を助長する恐れがあります。Aさんの意欲や身体能力を考慮せず、活動性を低下させる選択肢は適切ではありません。正しくは:Aさんの残存機能の維持・向上を目指し、転倒リスクを管理しながら運動機会を確保する方法を検討する。選びやすい理由:転倒のリスクを直接的に回避できるため、一見すると不安軽減に有効に見える。混同注意:転倒を防ぐ目的で即座に車椅子を勧めるのは、活動性の維持という観点から適切ではない。
- 2. 正解。Aさんは転倒に対する不安を抱えているため、転倒予防に関する具体的な知識や対策を学ぶことは、不安の軽減に直結します。講座で正しい情報や実践的な方法を学ぶことで、不安が軽減され、運動への抵抗感が減少する可能性があります。また、これはAさんの主体的な行動を促す選択肢でもあります。正しくは:この選択肢は正しい。選びやすい理由:すぐに運動を始めることではないため、直接的な解決策に見えにくいかもしれない。混同注意:単なる情報収集だけでなく、具体的な行動変容につながるかを疑問視するかもしれない。
- 3. Aさんは病状の理解ができており、自ら情報収集する意欲も高いため、廃用症候群に関する情報も既にある程度認識している可能性があります。また、この選択肢は看護師とAさんが『一緒に実施する』という問いの要件を満たすものの、Aさんの『転倒の不安』に直接的にアプローチするものではありません。情報の収集自体は重要ですが、転倒不安の軽減という主訴に対しては間接的すぎます。正しくは:転倒不安の軽減に直結する具体的な転倒予防策の検討や、運動のメリットとリスクのバランスについて話し合う。選びやすい理由:Aさんの情報収集意欲や、運動不足による廃用症候群の懸念から、重要そうに見える。混同注意:運動しないことのデメリットを伝えるという意味では重要だが、転倒不安の軽減という直接的な解決策ではない。
- 4. 正解。Aさんの不安は、運動による転倒リスクへの懸念から生じています。看護師がAさんと共に、運動を継続することのメリット(病気の進行抑制、ADL維持など)と、転倒リスク(実際の発生確率、予防策など)を具体的に比較検討することで、Aさん自身が納得して運動の必要性を理解し、不安を合理的に評価できるようになります。これにより、運動への抵抗感が軽減される可能性が高まります。正しくは:この選択肢は正しい。選びやすい理由:単なる話し合いで不安が解消されるのか疑問に思うかもしれない。混同注意:数値や統計を伴わない比較だと、Aさんが納得しないのではないかと考えるかもしれない。
国試ポイント
パーキンソン病患者の心理的側面(転倒不安)へのアプローチと、患者の主体性を尊重した看護支援が問われています。身体的介入だけでなく、心理的サポートや意思決定支援の重要性を理解しているかがポイントです。
混同注意
選択肢1の「車椅子で外出する」は、転倒リスクを直接避けるように見えるため魅力的に映るかもしれませんが、Aさんの活動性低下を招くため適切ではありません。選択肢3の「廃用症候群に関する情報を収集する」は、運動しないことのデメリットを伝える一環として重要ですが、直接的に転倒不安を軽減するものではありません。
次に同じ論点が出たら
Aさんが転倒予防講座に参加したり、運動の効果とリスクについて話し合った後、具体的にどのような運動から開始するか、その際の注意点、そして運動継続を促すためのフォローアップをどのように計画するかが次の課題となります。
関連知識
パーキンソン病患者における運動療法の重要性、転倒予防の実際、心理的アセスメントと介入、患者中心の意思決定支援、情報提供と教育。