Aさん(82歳、男性)は、介護付の有料老人ホームに入居している。10年前まで会社を経営していた。プロ野球や世界経済に興味があり、友人とインターネットを用いて交流するのを楽しみにしている。Parkinson〈パーキンソン〉病で、現在Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉の重症度分類でステージII。両側の上下肢の静止振戦や動作緩慢がみられる。食事は自分の居室に運んでもらって食べている。身の回りのことは1人でできる。1人での外出も可能だが、転倒に対する恐怖が強いため1日中室内で過ごしている。 Aさんは「最近、尿が出始めるまでに時間がかかるので、排尿時は自分で下腹部を押しています。尿がすっきり出ません」と言う。泌尿器科を受診したところ、Parkinson〈パーキンソン〉病による自律神経障害と診断された。Aさんの現在の状況から最も考えられるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
パーキンソン病に起因する自律神経障害では、膀胱括約筋の協調不全や排尿筋の収縮力低下が生じやすく、尿の排出が困難になります。この結果、膀胱内に尿が残る残尿の状態となり、患者の訴える「尿がすっきり排出されない」という状況と合致します。下腹部圧迫も残尿感を軽減するための行動と考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。パーキンソン病による自律神経障害は、排尿筋の収縮力低下や尿道括約筋との協調運動障害を引き起こし、排尿困難や残尿を生じさせます。患者の訴える症状と合致するため、最も推測される状況です。選びやすい理由:症状と病態が直接的に結びつくため、正しいと判断しやすい。混同注意:他の排尿障害全般。
- 2. 膀胱の萎縮は、通常、神経因性膀胱などによる長期的な膀胱容量の低下や線維化によって生じますが、パーキンソン病による自律神経障害の直接的な結果として「萎縮」は一般的ではありません。むしろ残尿があれば膀胱は過伸展している可能性もあります。正しくは:パーキンソン病で膀胱が萎縮することは稀で、むしろ残尿により膀胱が過伸展することがあります。選びやすい理由:排尿に関わる臓器の異常という点で関連があるように見える。混同注意:膀胱の機能的障害と器質的変化。
- 3. 蓄尿障害は、膀胱に尿をためておく機能に問題がある状態を指し、頻尿や尿失禁などが主な症状です。問題文の患者は「尿が出始めるまでに時間を要する」「尿がすっきり排出されない」と訴えており、これは排尿困難の症状であり、蓄尿障害とは異なります。正しくは:患者の訴えは排尿困難であり、蓄尿障害の症状(頻尿、尿失禁など)とは異なります。選びやすい理由:排尿に関わる障害の一種であるため、混同しやすい。混同注意:排尿障害と蓄尿障害。
- 4. 骨盤底筋群の筋力低下は、主に腹圧性尿失禁の原因となります。しかし、患者の訴えは「尿が出始めるまでに時間を要する」「尿がすっきり排出されない」という排尿困難であり、骨盤底筋群の筋力低下による症状とは直接的に結びつきません。正しくは:骨盤底筋群の筋力低下は腹圧性尿失禁の主な原因であり、患者の訴える排尿困難とは異なります。選びやすい理由:排尿に関わる筋肉の機能不全という点で関連があるように思える。混同注意:尿失禁と排尿困難の原因。
国試ポイント
パーキンソン病における自律神経障害、特に排尿機能障害の具体的な症状(残尿)を理解すること。
混同注意
残尿と蓄尿障害は排尿の問題ですが、残尿は排尿後の膀胱内に尿が残る状態、蓄尿障害は尿を十分に膀留できない状態(頻尿や尿失禁など)を指し、病態が異なります。
次に同じ論点が出たら
「尿が出始めるまでに時間を要する」「尿がすっきり排出されない」「下腹部圧迫」といったキーワードがあれば、残尿の可能性を第一に疑う。
関連知識
パーキンソン病の三大症状(振戦、固縮、無動・寡動)だけでなく、自律神経症状(便秘、起立性低血圧、発汗異常、排尿障害など)も重要である。残尿が多いと尿路感染症のリスクが高まるため、適切な管理が必要。