Aさん(71歳、女性)は夫と10年前に死別し、1人で暮らしている。息子は結婚して他県に住んでいる。Aさんは、3か月前に脳梗塞を発症して要介護1となり、介護老人保健施設に入所した。Aさんは老人性白内障があるがADLに支障はなく、認知機能やコミュニケーションに問題はない。食事は自力で摂取できる。紅茶が好きで、毎日カップ2、3杯は飲んでいる。我慢できない強い尿意があり尿が漏れてしまうため、下着に尿取りパッドを付けている。トイレには自力で移動でき、下着やズボンの上げ下ろしは自立している。排便は2日に1回である。 Aさんの尿失禁の種類で考えられるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
Aさんには「我慢できない強い尿意があり尿が漏れてしまう」という症状があります。強い尿意(尿意切迫感)が急に起こり、我慢できずに漏れてしまうのは切迫性尿失禁の特徴です(公式正答3)。Aさんはトイレに自力で移動でき、下着やズボンの上げ下ろしも自立しており、認知機能にも問題がないため機能性尿失禁は考えにくく、咳やくしゃみなど腹圧がかかったときに漏れるという記載もないため腹圧性尿失禁も当てはまりません。
選択肢ごとの解説
- 1. 溢流性尿失禁は、膀胱の過拡張によって尿が溢れ出す状態を指します。Aさんの情報からは、このタイプの尿失禁を示す具体的な根拠がありません。正しくは:排尿困難や残尿感があり、少量ずつ頻繁に漏れるといった症状がある場合に考えられます。選びやすい理由:尿が漏れるという点では共通していますが、背景にあるメカニズムが異なります。混同注意:切迫性尿失禁と混同しがちですが、こちらは尿意切迫感が主症状ではありません。
- 2. 機能性尿失禁は、身体機能や認知機能の低下により、トイレまで間に合わない、またはトイレでの排泄が困難な場合に起こります。Aさんの情報からは、身体的・認知的な機能低下が尿失禁の原因であるとは読み取れません。正しくは:歩行困難や認知症など、排泄行動を阻害する要因がある場合に該当します。選びやすい理由:一般的な尿失禁の分類の一つですが、Aさんの症状と結びつく情報がありません。混同注意:切迫性尿失禁は膀胱の過活動が原因であるのに対し、機能性尿失禁は排泄行動に関連する機能の問題です。
- 3. 正解。切迫性尿失禁は、急激に強い尿意(尿意切迫感)を感じ、我慢できずに漏れてしまう状態です。Aさんの「我慢できない強い尿意があり尿が漏れてしまう」という症状に一致します。正しくは:急な強い尿意があり、トイレに間に合わない、または間に合ったとしても漏らしてしまうといった症状がある場合に考えられます。混同注意:腹圧性尿失禁と混同しやすいですが、こちらは咳やくしゃみで漏れるのに対し、切迫性は強い尿意が先行します。
- 4. 腹圧性尿失禁は、咳、くしゃみ、運動など、お腹に力がかかった際に尿が漏れてしまう状態を指します。Aさんの情報からは、腹圧がかかることで尿失禁が起こるという具体的な記述がないため、この種類であると断定することはできません。正しくは:咳、くしゃみ、重い物を持つ、走るなどの動作時に尿が漏れるといった症状がある場合に考えられます。選びやすい理由:女性に多く見られる尿失禁であり、選択肢として魅力的ですが、Aさんの症状が腹圧と関連している情報はありません。混同注意:切迫性尿失禁とは異なり、尿意切迫感ではなく、腹圧の上昇が直接の原因です。
国試ポイント
症例文の排泄に関する情報(強い尿意で漏れる、移動や衣服の着脱は自立、認知機能は保たれている)から、尿失禁の種類を鑑別できるかが問われています。
混同注意
腹圧性尿失禁は咳・くしゃみ・運動など腹圧の上昇で漏れ、切迫性尿失禁は強い尿意で漏れる点が異なります。脳梗塞後の高齢者では機能性尿失禁も考えがちですが、Aさんはトイレへの移動や衣服の着脱が自立しているため該当しません。
次に同じ論点が出たら
もしAさんの具体的な症状(例:咳をすると漏れる、急に我慢できない尿意があるなど)が与えられた場合、それに合わせて尿失禁の種類を特定する判断が必要になります。
関連知識
女性に多い腹圧性尿失禁、高齢者に多い切迫性尿失禁、前立腺肥大症などで見られる溢流性尿失禁、認知症や麻痺などによる機能性尿失禁。それぞれの治療法や看護介入も関連知識として重要です。