Aさん(30歳、初産婦、会社員)は、夫と2人暮らし。妊娠38週6日で3,200 gの児を正常分娩した。分娩後から母児同室を開始しており、母乳育児を希望している。 産褥3日。Aさんの子宮底は臍下3横指、硬度は硬い。悪露は血性少量であった。乳房は左右とも全体的に硬く触れ、熱感と発赤があり痛みを訴えている。乳汁分泌状態は、乳管口は開口数左右5本ずつ、移行乳の分泌を認める。Aさんのバイタルサインは体温37.9°C、脈拍72/分、血圧108/60 mmHgであった。Aさんの状態として最も考えられるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第108回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・4番(いずれも正解)
解説
【公式の取扱い】この問題は1つを選ぶ形式ですが、公式の正答表では3・4のいずれも正解とされています。 Aさんの症状として、乳房の全体的な硬結、熱感、発赤、疼痛、そして微熱が挙げられています。これらは乳腺炎および乳房緊満の典型的な所見です。乳房緊満は母乳のうっ滞によって起こり、進行すると乳腺炎に移行することが多いため、両者は密接に関連しています。子宮関連の所見(子宮底の高さ、硬度、悪露の性状)は正常範囲内であり、子宮復古不全ではありません。発熱は乳房の炎症が原因と考えられ、産褥熱の診断基準(38℃以上の発熱が2日以上など)には合致しません。
選択肢ごとの解説
- 1. 産褥熱は、産褥期に感染により発熱する状態ですが、診断には通常38℃以上の発熱が2日以上続くことや、全身状態の悪化、特定の感染源(子宮内感染など)が認められることが必要です。この事例では、体温は37.9℃と微熱ですが、38℃以上の持続的な発熱はなく、他の所見(子宮底や悪露の状態)から子宮内感染を示唆する明確な兆候はありません。発熱の主な原因は乳房の炎症と考えられます。正しくは:産褥熱と診断するには、より明確な感染兆候(例:38℃以上の発熱が2日以上続く、子宮や悪露からの感染徴候)が必要です。選びやすい理由:発熱があるため、産褥期の感染症である産褥熱を連想しやすいです。しかし、発熱の程度と他の身体所見から、より直接的な原因である乳房の炎症を疑うべきです。混同注意:乳腺炎による発熱と産褥熱を混同しやすいです。産褥熱は通常、子宮内感染などが原因で起こります。
- 2. 子宮復古不全は、子宮の収縮が不十分で、子宮底の下降が遅れたり、悪露が多量になったり、悪露の色が遷延したりする状態です。Aさんの場合、子宮底は臍下2横指と順調に下降しており、硬度も硬いと記載されているため、子宮の収縮は良好です。悪露も血性少量であり、子宮復古不全の兆候は見られません。正しくは:子宮復古不全と診断するには、子宮底が高い位置に留まる、子宮が柔らかい、悪露が多量で遷延するといった所見が必要です。選びやすい理由:産褥期の合併症として子宮復古不全はよく問われるため、選択肢として考慮されやすいです。しかし、問題文の子宮関連の所見は正常範囲内です。混同注意:子宮の収縮状態や悪露の性状に関する知識が不十分だと、正常な状態を異常と誤解する可能性があります。
- 3. 正解。乳腺炎は乳腺に細菌感染が起こることで、乳房の硬結、熱感、発赤、疼痛、発熱といった症状を伴います。Aさんは『乳房は左右とも全体的に硬く触れ、熱感と発赤があり痛みを訴えている。体温37.9℃』という典型的な乳腺炎の症状を呈しています。授乳中の女性に多い合併症です。正しくは:(正答のため修正不要)選びやすい理由:(正答のため該当せず)混同注意:(正答のため該当せず)
- 4. 正解。乳房緊満(うっ滞性乳腺炎)は、母乳が乳房に過剰に貯留し、乳管が閉塞することで起こります。症状は乳房全体の硬結、熱感、疼痛、圧痛、腫脹であり、発熱を伴うこともあります。Aさんの『乳房は左右とも全体的に硬く触れ、熱感と発赤があり痛みを訴えている』という記述は、乳房緊満の典型的な症状と合致します。乳腺炎の前段階として起こることもあります。正しくは:(正答のため修正不要)選びやすい理由:(正答のため該当せず)混同注意:(正答のため該当せず)
国試ポイント
産褥期の合併症に関する知識、特に乳房に関するトラブル(乳房緊満、乳腺炎)の症状と鑑別が問われています。発熱の原因がどこにあるのか、他の身体所見と照らし合わせて判断する能力が求められます。
混同注意
乳房緊満と乳腺炎は症状が類似しており、鑑別が難しい場合がありますが、国試では両方とも正解となることがあります。乳腺炎は細菌感染を伴うことが多く、より炎症が強い状態です。産褥熱と乳腺炎による発熱の鑑別も重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、まず発熱があるか、発熱がある場合は他に感染兆候がないかを確認し、特定の臓器(乳房、子宮、泌尿器など)に局所的な炎症の兆候がないかを詳細に判断する必要があります。特に乳房のトラブルは授乳状況と合わせて考えることが重要です。
関連知識
乳房緊満のケア(授乳の継続、冷却、マッサージ)、乳腺炎の治療(抗菌薬、冷却、排乳促進)、産褥期における子宮復古の機序、悪露の正常な経過、産褥熱の診断基準。