Aさん(65歳、男性)は、胃癌を疑われ検査入院した。入院時、認知機能に問題はなかった。不眠を訴え、入院翌日からベンゾジアゼピン系の睡眠薬の内服が開始された。その日の夜、Aさんは突然ナースステーションに来て、意味不明な内容を叫んでいた。翌朝、Aさんは穏やかに話し意思疎通も取れたが「昨夜のことは覚えていない」と言う。Aさんの昨夜の行動のアセスメントで最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Aさんは高齢者であり、検査入院という環境変化とベンゾジアゼピン系睡眠導入剤の内服が引き金となり、急激な意識障害、認知機能の変動、記憶障害を伴う精神症状を呈しています。翌朝には症状が軽快している点も、夜間せん妄の特徴と一致します。ベンゾジアゼピン系薬剤は特に高齢者でせん妄を誘発しやすいです。
選択肢ごとの解説
- 1. 観念奔逸は、思考の流れが速く、次々と連想が働き、まとまりのない発言が続く状態を指します。本症例の「理解不能なことを叫んでいた」という記述は、意識障害を伴うせん妄の混乱状態を指しており、観念奔逸とは異なります。正しくは:せん妄は意識障害を伴う状態であり、思考の速さのみを指す観念奔逸とは区別されます。選びやすい理由:「理解不能なことを叫んでいた」という部分から、思考の混乱やまとまりのなさを示す観念奔逸を連想する可能性があります。混同注意:せん妄(意識障害を伴う思考の混乱)と観念奔逸(意識清明下での思考の流れの速さ)
- 2. 感情失禁は、感情のコントロールが困難で、些細な刺激で過度に笑ったり泣いたりする状態を指します。本症例の「理解不能なことを叫んでいました」という記述は、感情のコントロール障害というより、意識混濁を伴う精神運動興奮と理解され、感情失禁とは異なります。正しくは:せん妄は意識障害と認知機能の変動を伴う状態であり、感情失禁とは異なる病態です。選びやすい理由:「叫んでいた」という表現から感情の爆発を連想し、感情失禁を選ぶ可能性があります。混同注意:せん妄(意識障害と精神運動興奮)と感情失禁(感情のコントロール障害)
- 3. 妄想気分は、特定の妄想内容が形成される前の段階で、漠然とした不気味さや奇妙な感覚を抱く状態を指します。本症例の「理解不能なことを叫んでいました」という記述や記憶障害は、意識変容や急激な認知機能の変動を伴うせん妄の特徴であり、妄想気分とは異なります。正しくは:せん妄は意識障害と認知機能の変動が特徴であり、妄想気分のような特定の感覚体験とは異なります。選びやすい理由:「理解不能なことを叫んでいた」という状況から、何らかの精神病的な状態を連想し、その初期段階である妄想気分を選ぶ可能性があります。混同注意:せん妄(意識障害、幻覚、興奮、記憶障害)と妄想気分(妄想の準備段階の漠然とした不安感)
- 4. 正解。Aさんは高齢者であり、入院による環境変化、ベンゾジアゼピン系睡眠導入剤の内服という誘因があります。急激な精神症状(理解不能なことを叫ぶ)、意識障害(記憶にない)、認知機能の変動(夜間と翌朝の症状の差)は、夜間せん妄の典型的な症状と経過です。選びやすい理由:せん妄の典型的な症状と誘因が揃っているため、最も適切と判断できます。
国試ポイント
高齢者のせん妄の誘発因子、症状、経過について理解すること。特に薬剤によるせん妄について注意が必要です。
混同注意
観念奔逸は思考の進行が速すぎてまとまりがない状態であり、感情失禁は感情のコントロールが困難な状態、妄想気分は漠然とした不気味な感覚で、いずれも本症例の意識混濁を伴う急激な精神症状とは異なります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、高齢者の急激な意識変容や精神症状、特に夜間発症で日中軽快し、特定の薬剤(ベンゾジアゼピン系など)の使用がある場合に「せん妄」を第一に疑って判断します。
関連知識
せん妄の危険因子(高齢、既往歴、多剤併用、脱水、感染症など)、誘発因子(薬剤、手術、環境変化など)、症状(意識混濁、幻視、見当識障害、記憶障害、精神運動興奮など)、鑑別疾患(認知症、精神病性障害)。