Aさん(83歳)は寝たきり状態で、便意を訴えるが3日間排便がみられない。認知機能に問題はない。昨晩下剤を内服したところ、今朝、紙オムツに水様便が少量付着しており、残便感を訴えている。このときのAさんの状態で考えられるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第111回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
寝たきりで数日間排便がなく、下剤服用後に少量の水様便が漏れ出て、残便感を訴えるという一連の症状は、直腸に硬い便塊(便塞栓)が詰まり、その周囲から液状の便が漏れ出る「嵌入便(かんとんべん)」の典型的な所見です。これは溢流性便失禁とも関連が深く、高齢者や寝たきりの患者によく見られます。認知機能が正常であるにもかかわらず便意があるのに排便がないという点も、便塊による直腸の刺激と閉塞感を示唆しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。寝たきりの高齢者で数日間排便がなく、下剤使用後に少量の水様便と残便感を訴える場合、直腸に硬い便塊が詰まり(便塞栓)、その隙間を液状の便が漏れ出てくる「嵌入便」の状態が強く疑われます。認知機能が正常であるにも関わらず便意があるのに排便がない点も特徴的です。
- 2. 器質性便秘は腸管の形態的な異常(例:腫瘍、狭窄)によるものですが、本事例の「下剤服用後の水様便と残便感」は嵌入便の兆候であり、器質性便秘を直接示すものではありません。器質性便秘であれば、下剤の効果も限定的であるか、腸閉塞などのより重篤な症状を呈することが多いです。正しくは:器質性便秘は、腸管の通過障害や狭窄など、特定の身体的な原因によって引き起こされる便秘です。この場合、X線検査や内視鏡検査などで病変が確認されます。選びやすい理由:便秘の一種ではあるため、考えやすいかもしれませんが、具体的な症状が嵌入便の特徴と一致します。混同注意:機能性便秘(弛緩性、痙攣性、直腸性など)と混同しやすいですが、器質性は構造的な問題が原因です。
- 3. 切迫性便失禁は、強い便意があるにもかかわらず排便を我慢できずに便が漏れてしまう状態を指します。本事例では「便意はあるが排便がない」「下剤後に少量水様便と残便感」という状況であり、嵌入便に伴う溢流性便失禁の可能性はありますが、切迫性便失禁とは異なる状態です。正しくは:切迫性便失禁は、便意が急激で我慢しきれず、便を漏らしてしまう状態です。通常、便塊が詰まって漏れる溢流性便失禁とはメカニズムが異なります。選びやすい理由:「便意を訴えるが水様便が漏れている」という点から連想するかもしれませんが、残便感の訴えが嵌入便を示唆します。混同注意:溢流性便失禁(嵌入便によるもの)と混同しやすいですが、両者は原因と機序が異なります。
- 4. 非急性感染性下痢は、感染を伴う下痢が長期にわたる状態を指しますが、本事例は数日間の排便がなく下剤使用後の水様便、残便感という状況であり、感染性下痢の典型的な症状ではありません。発熱や腹痛、体力の消耗などの全身症状も示されていません。正しくは:非急性感染性下痢は、細菌やウイルスなどの病原体感染による下痢が長期間持続する状態です。発熱、腹痛、全身倦怠感などを伴うことが多いです。選びやすい理由:水様便というキーワードから下痢を連想するかもしれませんが、他の症状が当てはまりません。混同注意:一般的な下痢と感染性下痢、特に急性感染性下痢と混同しやすいです。
国試ポイント
高齢者、特に寝たきりの患者における便秘の複雑な病態理解と、その典型的な兆候(嵌入便、溢流性便失禁)を正確に識別できるかどうかが問われています。表面的な症状だけでなく、背景にある原因まで推測する臨床的思考力が重要です。
混同注意
便秘と下痢の症状が混在しているように見えるため、溢流性便失禁と切迫性便失禁、あるいは単純な下痢(感染性など)と混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合、高齢者・寝たきり患者の排便異常について、特に「便塞栓」「溢流性便失禁」「直腸性便秘」といったキーワードと症状の関連性を確認し、適切なアセスメントと看護介入を導き出せるかどうかが問われるでしょう。
関連知識
嵌入便の治療には、まず用手的な除去や浣腸が考慮されます。また、予防としては、規則的な排便習慣、適切な水分摂取、食物繊維の摂取、適度な運動が重要です。寝たきりの場合は、体位変換や腹部マッサージなども有効です。