Aさん(78歳、男性)は、尿路感染症による敗血症で入院し、5日が経過した。中心静脈ラインから輸液ポンプを使用して乳酸加リンゲル液が投与され、その側管からシリンジポンプを使用してノルアドレナリンが投与されている。 Aさんには有害事象はみられなかったが、医師の指示量の2倍のノルアドレナリンが3時間投与されていた。これは、医師がノルアドレナリンの減量を指示書に記載し、夜勤の担当看護師にそれを伝えたが、担当看護師が実際に減量することを忘れたことが原因だった。病棟では、リスクマネジメントとしてこの出来事の再発防止策を考えることとなった。再発防止策で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
医師の指示変更が伝達されたにもかかわらず、その実施が忘れられたことが原因であるため、指示内容の変更時には複数の看護師で情報を共有し、相互に確認する体制を構築することが最も効果的な再発防止策となります。これにより、一人の看護師の見落としや失念を防ぐ「二重確認」のプロセスが確立され、エラーの発生リスクを低減できます。
選択肢ごとの解説
- 1. 今回の事例は薬剤の知識不足が直接の原因ではなく、指示変更時の情報共有と確認の不徹底が問題であるため、薬剤に関する研修会の開催は直接的な再発防止策とは言えません。薬剤知識の向上は重要ですが、この事例の根幹にあるヒューマンエラーを防ぐには別の対策が必要です。正しくは:指示変更時の情報共有と確認のプロセスを強化する研修会を企画する。選びやすい理由:一般的なリスクマネジメント対策として研修会は有効に見えるが、今回の事例に特化した内容ではない。混同注意:薬剤の過量投与なので、薬剤知識が不足していたと誤解する可能性がある。
- 2. 今回の事例は、ノルアドレナリンの減量指示が適切に実施されなかったことが原因であり、医療機器(輸液ポンプなど)の操作方法自体に問題があったわけではありません。そのため、医療機器の操作方法の再教育は、この事例の再発防止策としては適切ではありません。正しくは:指示変更時の情報共有と確認のプロセスを再教育する。選びやすい理由:輸液ポンプなどの医療機器を使用するため、操作方法の見直しも有効に思えるが、今回の原因とは異なる。混同注意:薬剤の投与には医療機器が用いられるため、その操作が原因だと誤解する可能性がある。
- 3. 反省文の提出は、個人の責任を追及する意味合いが強く、組織としての再発防止策としては不適切です。インシデントの発生原因は、個人の過失だけでなく、組織のシステムやプロセスに潜む問題である場合が多いため、個人を罰するだけでは根本的な解決にはつながりません。組織全体のシステム改善に焦点を当てるべきです。正しくは:インシデント発生時は、組織として原因を究明し、システム改善のための対策を検討する。選びやすい理由:個人がミスをしたのだから、反省を促すのは当然と考えるかもしれない。混同注意:個人のミスなので、個人への対応が最優先だと誤解する可能性がある。
- 4. 正解。今回の事例は、医師の減量指示が夜勤の担当看護師に伝達されたものの、その後の実施を忘れてしまったという情報共有および確認プロセスの不徹底が原因です。複数の看護師が関与して指示内容の変更を共有・確認することで、一人の看護師が忘れても他の看護師が気づく可能性が高まり、ヒューマンエラーによる見落としを防ぐことができます。これは「二重確認」や「クロスチェック」と呼ばれるリスクマネジメントの基本的な手法であり、再発防止に非常に効果的です。選びやすい理由:他の選択肢も一見すると有効に見えるが、本事例の直接原因に対応しているのはこの選択肢である。混同注意:情報共有だけでなく、指示簿の記載方法や電子カルテの活用など、他のシステム的な対策も考えられるため、これだけで十分かと迷うかもしれない。
国試ポイント
医療事故・インシデント発生時の再発防止策に関する知識、特に情報伝達の不備やヒューマンエラー対策としての多重確認の重要性が問われています。
混同注意
薬剤研修や医療機器の再教育は一般的なリスク管理対策ですが、今回の事例の直接原因(指示変更時の情報共有と確認の不備)には対応していません。インシデントを起こした個人への罰則は、組織的な再発防止策としては不適切です。
次に同じ論点が出たら
この問題が解けた場合、次のステップとして、インシデントレポートの具体的な活用方法や、部署ごとの特性に応じたリスクマネジメント策についても学習を深めると良いでしょう。
関連知識
医療安全におけるヒューマンエラー対策、フェールセーフ、フールプルーフ、多重確認(ダブルチェック)、インシデントレポートの活用、チーム医療における情報共有の重要性。