Aさん(59歳、女性)は、半年前に下咽頭癌で放射線治療を受けた。口腔内が乾燥し、水を飲まないと話すことも不自由なことがある。Aさんに起こりやすいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
下咽頭癌に対する放射線治療は、唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺)が照射野に含まれることが多く、これらの唾液腺機能が低下し、唾液分泌が減少します。唾液には、口腔内の洗浄、抗菌、歯の再石灰化促進などの作用があるため、唾液分泌が低下すると、口腔内の自浄作用が失われ、細菌が増殖しやすくなります。これにより、う蝕(虫歯)のリスクが著しく高まります。Aさんは口腔乾燥を強く訴えており、これは唾液分泌低下の徴候であるため、う歯が起こりやすいと考えられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。下咽頭癌の放射線治療は、唾液腺にも影響を与え、唾液の分泌を著しく低下させることがあります。唾液には口腔内の自浄作用や抗菌作用、再石灰化作用などがあるため、唾液分泌の減少は口腔内の細菌が増殖しやすくなり、う蝕(虫歯)のリ発リスクを高めます。正しくは:唾液分泌の低下は、口腔内の防御機能を低下させ、う蝕のリスクを高めます。選びやすい理由:口腔乾燥は直接的な症状であり、う歯はその結果として生じやすい合併症であるため、一見すると間接的なように感じられるかもしれませんが、放射線治療後の重要な合併症の一つです。混同注意:口腔乾燥自体が選択肢として提示されていないため、それに続く合併症として何が適切かを見極める必要があります。
- 2. 顎骨壊死は、主にビスホスホネート製剤などの骨吸収抑制薬の使用や、頭頸部への高線量放射線照射によって生じることがありますが、問題文からはビスホスホネート製剤の使用は示唆されていません。放射線による顎骨壊死は、通常、放射線骨髄炎の合併症として見られ、治療部位に近い下顎骨などに発生するリスクがありますが、口腔乾燥と直接的に結びつくAさんの状態に「起こりやすい」とは断言しにくいです。う歯と比較して、より頻繁に発生するわけではありません。正しくは:顎骨壊死は、放射線治療によって引き起こされる可能性がある合併症ですが、ビスホスホネート製剤の使用がより一般的なリスク要因です。Aさんの主訴である口腔乾燥と直接的かつ高頻度に関連するわけではありません。選びやすい理由:頭頸部への放射線治療に関連する合併症であるため、この選択肢も関連があるように見えるかもしれませんが、口腔乾燥の直接的な結果ではありません。混同注意:放射線治療が顎骨壊死のリスク因子であるため、放射線治療を受けた患者に起こりうる合併症として誤解しやすいですが、口腔乾燥に続く症状としてはう歯がより直接的で頻繁です。
- 3. 嗅覚障害は、鼻腔や嗅神経への損傷によって生じます。下咽頭癌への放射線治療は、主に咽頭や喉頭周辺に焦点を当てるため、直接的に嗅覚器に大きな影響を与えることは稀です。口腔乾燥とは直接的な因果関係がありません。正しくは:嗅覚障害は嗅覚器への損傷によるもので、下咽頭癌の放射線治療や口腔乾燥とは直接的な関連性が薄いです。選びやすい理由:頭頸部領域の感覚器に関する障害ではあるため、関連性を疑うかもしれませんが、治療部位とは異なります。混同注意:感覚器の障害という点で一見関連しそうですが、治療部位と嗅覚器の位置関係、そして口腔乾燥との関連性を考慮すると不適切です。
- 4. 甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの過剰分泌によって起こる病態です。下咽頭癌への放射線治療が甲状腺に照射されることで、甲状腺機能低下症を引き起こす可能性はありますが、機能亢進症を直接引き起こすことは通常ありません。また、口腔乾燥との直接的な関連性もありません。正しくは:下咽頭癌への放射線治療は、甲状腺に影響を及ぼす可能性はありますが、一般的には甲状腺機能低下症のリスクを高めます。また、口腔乾燥とは関連がありません。選びやすい理由:甲状腺も頸部にあるため、放射線治療の影響範囲に含まれる可能性はありますが、機能亢進症ではなく機能低下症が起こりえます。また、口腔乾燥とは直接関連しません。混同注意:放射線治療が頸部の臓器に影響を及ぼすという点で、甲状腺の機能障害を連想しやすいですが、機能亢進症ではなく機能低下症が一般的であり、口腔乾燥との直接的な関連性がない点で不適切です。
国試ポイント
放射線治療の副作用、特に頭頸部癌における唾液腺への影響と口腔内合併症(う蝕、口腔乾燥、味覚障害など)に関する知識が問われています。放射線治療後の口腔ケアの重要性も理解しているかを確認する問題です。
混同注意
放射線治療に関連する他の合併症(例:顎骨壊死、粘膜炎)と混同しやすいですが、本問では「口腔乾燥」という具体的な症状から最も頻繁に起こりうる合併症を特定する必要があります。
次に同じ論点が出たら
この患者が実際にう歯に罹患した場合の看護介入、口腔乾燥の緩和策、食生活指導など、具体的な看護計画を立案できるか。
関連知識
放射線治療後の口腔ケア指導(フッ素塗布、こまめな水分摂取、適切な歯ブラシの使用、定期的な歯科受診)、唾液腺機能低下に対する薬剤(人工唾液、唾液分泌促進薬)の適用、放射線誘発性顎骨壊死のリスクと予防策。