Aさん(65歳、男性)は、妻と自営業を営んでおり、2人で暮らしている。2か月前に仕事で大きな失敗をし、謝罪と対応に追われ、あまり夜に眠れなくなり、食欲不振が続いている。1か月前から気分が落ち込み、仕事で妻から間違いを指摘されたことで自信をなくしていた。Aさんは死んでしまいたいと思い、夜に自宅でロープを使って自殺を図ろうとしたところを妻に見つけられた。妻に付き添われ、精神科病院を受診し、うつ病と診断された。受診当日に入院し、抗うつ薬の内服が開始された。Aさんは「生きていても仕方がない。どうせ誰も分かってくれない」と看護師に話した。 このときの看護師の対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
精神看護において、患者が抱える苦痛や感情を言葉にして表現することは、問題解決への第一歩となります。そのためには、看護師が患者の感情を傾聴し、共感を示すことが不可欠です。選択肢4は、「Aさんがつらい状況にあることを私は心配しています」と伝えることで、患者の苦痛な状況を認識し、その感情に寄り添う姿勢を明確に示しています。これにより、患者は自分の感情が受け入れられていると感じ、安心して話せるようになります。他の選択肢は、安易な励ましや一般的な意見の提示、あるいは薬効の断定であり、現在の患者の感情に寄り添う対応としては不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 「生きていれば良いことがある」という言葉は、安易な励ましに聞こえ、患者の現在の苦しい感情を否定したり、軽視したりする可能性があります。傾聴と共感が求められる場面で、患者の感情に寄り添う姿勢が不足しています。正しくは:患者の苦しみに寄り添い、感情を言葉にすることを促すような対応が望ましいです。選びやすい理由:前向きな言葉をかけることで患者を元気づけたいという意図は理解できるが、現在の感情を無視している点で不適切。混同注意:患者を励ます意図と、共感を示すことの区別が曖昧になりやすい。
- 2. 「数日で効いて楽になる」と断定する発言は、薬の効果には個人差があり、すぐに効果が出ない場合に患者をさらに落胆させる可能性があります。また、現在の苦しみに直接的に寄り添う対応ではありません。正しくは:薬の効果について説明する際は、一般的な情報を提供しつつ、効果の発現には個人差があることを伝えるのが適切です。まずは現在の感情を受け止める姿勢が重要です。選びやすい理由:薬による治療への希望を持たせたいという意図は理解できるが、断定的な表現は避けるべき。混同注意:治療への期待と、現実的な説明、そして現在の感情への配慮のバランスが難しい。
- 3. 「誰にでもある」という言葉は、患者の抱える悲しみを一般化し、特別な苦しみではないかのように捉えられかねません。これにより、患者は自分の感情が理解されていないと感じ、孤立感を深める可能性があります。正しくは:患者の個別の感情や経験に焦点を当て、それを傾聴し、共感する姿勢を示すことが重要です。選びやすい理由:患者の感情を普遍的なものとして捉え、共感しようとする意図は理解できるが、共感の仕方が不適切。混同注意:共感を示すことと、普遍的な事実を述べることの区別がつきにくい。
- 4. 正解。この発言は、患者の「つらい状況」を看護師が認識し、「心配している」という共感と関心を示しています。患者の感情を受け止め、寄り添う姿勢を明確に伝えることで、信頼関係の構築を促し、患者が安心して感情を表現できる雰囲気を作ります。これは精神看護における基本的な傾聴と共感の姿勢です。正しくは:患者の感情や状況を肯定的に受け止め、その感情に寄り添う姿勢を示すことは、精神的なサポートにおいて極めて重要です。
国試ポイント
精神看護における傾聴と共感の重要性、特に患者の感情を否定せず、受け止める姿勢が問われる。安易な励ましや一般論は避けるべきである。
混同注意
患者を励ます、希望を持たせる、客観的な事実を伝えるといった行為と、患者の現在の感情に寄り添い、共感を示す行為との区別。
次に同じ論点が出たら
この発言の後に、患者が話したいことを引き出すための開かれた質問や、沈黙を尊重するなどの対応が考えられる。
関連知識
精神科看護における治療的コミュニケーション、ラポール形成の技法、傾聴、共感、受容の原則。