Aさん(20歳、女性)は境界性人格〈パーソナリティ〉障害の診断を受け、精神科外来に通院中である。ある日、人間関係のトラブルから処方されていた睡眠薬を過量服薬して自殺企図をしたところを家族に発見され、救命救急センターに搬送された。 Aさんは救急外来で治療を受け会話ができるまでに回復した。Aさんへの看護師の最初の対応で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第112回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
自殺企図後の急性期にある患者に対し、看護師が最初に行うべき対応は、現在の生命の安全確保です。希死念慮の有無を確認することで、再企図のリスクを評価し、緊急性の高い介入や継続的な観察の必要性を判断できます。その他の選択肢は、患者の精神状態を悪化させる可能性があったり、時期尚早であったりするため適切ではありません。
選択肢ごとの解説
- 1. 急性期で精神的に不安定な状況にある患者に対し、過量服薬に至った直接的な原因や背景を深く掘り下げるのは、患者にさらなる精神的負担をかけ、回復を阻害する可能性があります。まずは安全確保と精神的安定が優先されます。正しくは:急性期には、患者が精神的に落ち着ける環境を提供し、現在の身体的・精神的な苦痛を傾聴することに努めます。選びやすい理由:原因を探ることは問題解決に繋がると思いがちですが、急性期においては時期尚早です。混同注意:危機介入における初期の傾聴と、詳細な原因究明を混同しやすいです。
- 2. 正解。自殺企図後の患者に対する最も重要な初期対応は、現在の自殺リスクを評価することです。希死念慮の有無を確認することで、患者の安全を確保し、適切な精神科的介入や見守りの必要性を判断できます。これは患者の生命を守る上で不可欠な情報です。選びやすい理由:患者を刺激しない方が良いと考えるかもしれませんが、直接的な確認は安全確保のために必要です。
- 3. 患者を問責するような態度は、信頼関係を損ない、患者の精神状態を悪化させるだけでなく、医療者への不信感を抱かせ、今後の治療協力にも影響を与えます。患者への共感的理解と受容が基本です。正しくは:患者の行動の背景には様々な要因があることを理解し、非難することなく、まずは患者の感情を受け止める姿勢で接します。選びやすい理由:患者の行動の不可解さに疑問を持つことは自然ですが、それを直接非難の形で表現してはいけません。混同注意:患者の行動の動機を探ることと、患者を責めることを混同しやすいです。
- 4. 患者に「二度としない」という約束を強制することは、患者に過度なプレッシャーを与え、精神的な負担を増大させます。また、安易な約束は患者の真の治療意欲や根本的な問題解決には繋がらず、再企図のリスクを低減する効果も期待できません。正しくは:患者の意思を尊重し、今後の治療や支援について話し合う姿勢が重要です。再企図防止は、長期的な支援計画の中で取り組むべき課題です。選びやすい理由:再発防止への強い思いから、患者と約束を交わすことが有効だと誤解しやすいです。混同注意:患者との信頼関係構築と、一方的な約束の強制を混同しやすいです。
国試ポイント
自殺企図後の患者に対する急性期看護における最も優先される対応(生命の安全確保とリスク評価)が問われています。倫理的な配慮と、患者の精神状態への理解が求められます。
混同注意
精神科救急における初期介入と、その後の詳細な精神医学的アセスメントや心理支援の段階を混同しやすいです。急性期ではまず安全確保が最優先されます。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず「生命の安全確保」「現在の危険性(自殺リスク)の評価」が最も優先される対応であることを念頭に置く。その上で、患者の精神状態を悪化させない、非難しない、約束を強制しないという倫理的な原則も考慮して判断する。
関連知識
自殺リスク評価、危機介入、精神科救急看護の原則、コミュニケーション技術(傾聴、受容、共感)、精神科における倫理。