Aさん(32歳、男性)は、仕事上のストレスを抱えていた際に知人から誘われ、覚せい剤を常用するようになり逮捕された。保釈後、薬物依存症の治療を受けることができる精神科病院に入院し、治療プログラムに参加することになった。 入院後1か月、Aさんは「正直に言うと、今も覚せい剤を使いたいという気持ちがある。もし誘いがあったら、使いたい気持ちを抑えきれないだろう」と悩みを打ち明けた。Aさんの状態のアセスメントとして適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第110回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Aさんの「今も覚せい剤を使いたいという気持ちがある。もし誘いがあったら、使いたい気持ちを抑えきれないだろう」という発言は、薬物に対する強い心理的な欲求や渇望を示しています。これは、薬物をやめたいと思っても自分の意思ではコントロールできない、薬物使用への衝動であり、精神依存の特徴そのものです。
選択肢ごとの解説
- 1. 否認とは、問題の存在や深刻さを認めない心理状態を指します。Aさんは自身の欲求を認識し、それを言葉にしているため、否認の状態ではありません。正しくは:Aさんが覚せい剤の使用欲求を自覚せず、問題がないと主張している場合選びやすい理由:Aさんが現状を否定しているように見えるかもしれませんが、欲求を認めている点で異なります。混同注意:「否定」という言葉と混同しやすいですが、否認は問題そのものの存在を否定するものです。
- 2. 共依存とは、特定の関係性において相手の行動に過度に囚われ、自己のニーズを犠牲にする状態です。Aさんの発言は自身の薬物使用欲求に関するものであり、特定の対人関係における共依存の状態を示すものではありません。正しくは:Aさんが、例えば家族の薬物問題に過度に関わり、その生活が支配されている場合選びやすい理由:薬物依存症の背景に共依存の問題があることは多いですが、この発言だけでは共依存とアセスメントできません。混同注意:依存症の家族関係でよく見られる概念ですが、個人の欲求とは直接結びつきません。
- 3. 身体依存とは、薬物を中断または減量した際に、身体的な離脱症状(振戦、発汗、吐き気など)が出現する状態を指します。Aさんの発言は「使いたい気持ち」という精神的な欲求であり、身体的な離脱症状を示唆するものではありません。正しくは:Aさんが薬物使用を中断し、その結果として身体的な苦痛を訴えている場合選びやすい理由:薬物依存症には身体依存も伴いますが、この発言は精神的な側面を強調しています。混同注意:「依存」という言葉から身体的なものと誤解しやすいですが、症状の内容が異なります。
- 4. 正解。精神依存とは、薬物の使用によって得られる精神作用に対する強い欲求(渇望)があり、その薬物を繰り返し使用したいという衝動に駆られる状態を指します。Aさんの「今も覚せい剤を使いたいという気持ちがある」「もし誘いがあったら、使いたい気持ちを抑えきれないだろう」という発言は、まさに薬物に対する強い渇望と使用への衝動を示しており、精神依存の状態と評価できます。選びやすい理由:身体依存と混同する可能性がありますが、Aさんの発言は身体症状ではなく精神的な欲求に焦点を当てています。混同注意:身体依存との区別が重要です。精神依存は精神的な欲求や渇望であり、身体依存は薬物中止に伴う身体症状を指します。
- 5. 離脱症状とは、薬物の使用を中止または減量した際に生じる、不快な身体的・精神的症状の総称です。Aさんの発言は薬物を使用したいという欲求であり、薬物中断による不快な症状を訴えているわけではないため、離脱症状とは異なります。正しくは:Aさんが薬物を中断し、身体的な振戦や精神的な不安、幻覚などを訴えている場合選びやすい理由:薬物依存症の治療過程で離脱症状はよく見られますが、Aさんの言葉は使用欲求であり症状ではありません。混同注意:離脱症状と精神依存による渇望はどちらも薬物関連ですが、発生メカニズムと表現される内容が異なります。
国試ポイント
薬物依存における精神依存と身体依存、および離脱症状の違いを明確に理解しているかが問われる問題です。特に、患者の言葉からどのような状態をアセスメントできるかが重要になります。
混同注意
身体依存、離脱症状
次に同じ論点が出たら
Aさんの精神依存の状態を理解した上で、再使用防止のための具体的な介入策(例:SST、ピアサポート、ストレスコーピング)を検討する必要があります。
関連知識
薬物依存症の診断基準(DSM-5など)、薬物の種類と依存の形態(精神依存が主か身体依存が主か)、依存症治療の基本原則(否認への介入、共依存への対応など)