Aさん(43歳、女性)は夫と2人暮らし。身長150 cm、体重98 kg。既往歴はない。先日、庭で転倒し右腓骨を骨折し、膝関節から足関節までのギプス固定をしている。来週、プレート固定術を受けることになっており、本日は夫と一緒に術前オリエンテーションに来院した。来院時のAさんのバイタルサインは、体温36.8°C、呼吸数16/分、脈拍80/分、血圧138/80 mmHgであった。夫によると「妻は、寝ているときはいつも大きないびきと、時々無呼吸があるので、慌てて起こしている」と言う。 Aさんは入院し、手術を受けた。手術室から病室への帰室後1時間、Aさんのバイタルサインは、体温35.9°C、呼吸数16/分、いびき様呼吸、脈拍60/分、血圧145/87 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉96 %(鼻腔カニューレ3L/分酸素投与下)。大きな声で呼ぶと開眼し、簡単な指示に従うことができる。尿量は70mL/時、血糖値128 mg/dLであった。看護師が優先して対処すべきAさんの症状・徴候はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第110回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
いびき様呼吸は、舌根沈下などによる上気道閉塞を示唆する徴候であり、呼吸困難や低酸素血症に繋がり、生命を脅かす可能性があるため、最も優先して対応すべきです。気道確保が最優先されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 体温35.9℃は軽度の低体温であり、術後にはよく見られますが、いびき様呼吸による気道閉塞のリスクより優先度は低いです。重篤な低体温であれば対処が必要ですが、この程度の低体温は直ちに生命を脅かすものではありません。正しくは:保温に努め、必要に応じて加温を行うなど対応します。選びやすい理由:低体温は合併症のリスクを高めるため、重要な徴候と捉えられやすいですが、呼吸器系の問題と比較すると緊急性は劣ります。混同注意:重度の低体温(35℃以下)や、悪性高熱症のような緊急性のある体温異常。
- 2. 正解。いびき様呼吸は、舌根沈下などによる上気道閉塞を示唆する徴候であり、呼吸困難や低酸素血症に繋がり、生命を脅かす可能性があるため、最も優先して対応すべきです。SpO2が96%であっても、この状態が続けば急激な悪化の可能性があるため、直ちに対処が必要です。選びやすい理由:SpO2が96%と比較的保たれているため、緊急性が低いと誤解する可能性がありますが、いびき様呼吸そのものが気道閉塞のサインであり危険です。混同注意:通常の寝息や軽い鼻閉によるいびき。
- 3. 血圧145/87mmHgは軽度の高血圧ですが、術後疼痛やストレスなどによる一時的な上昇の可能性も考慮されます。いびき様呼吸による気道閉塞のリスクより優先度は低く、直ちに生命を脅かすレベルではありません。正しくは:疼痛管理や安静を促し、継続的なモニタリングを行います。必要に応じて医師に報告し、降圧薬の検討を仰ぎます。選びやすい理由:高血圧は心血管イベントのリスクであるため、重要視されやすいですが、気道閉塞と比較すると緊急性は劣ります。混同注意:高血圧緊急症(収縮期血圧180mmHg以上、または拡張期血圧120mmHg以上で臓器障害を伴う場合)や術後出血によるショック。
- 4. 尿量70mL/時は正常範囲内(通常成人では30mL/時以上)であり、異常を示すものではありません。したがって、対応の優先度は最も低いです。正しくは:特段の対応は不要ですが、尿量変化は術後管理の重要な指標であるため、継続的に観察します。選びやすい理由:尿量は循環状態を示す重要な指標の一つであり、低尿量は脱水や腎機能低下を示すため、意識が向きやすいです。混同注意:乏尿(30mL/時未満)や無尿。
- 5. 血糖値128mg/dLは正常範囲内であり、術後管理において特段の対応を要する異常値ではありません。したがって、対応の優先度は最も低いです。正しくは:特段の対応は不要ですが、糖尿病患者や術中管理によっては血糖値の継続的なモニタリングが必要です。選びやすい理由:高血糖は合併症のリスクを高めるため、重要視されやすいですが、この値は正常範囲内です。混同注意:高血糖(200mg/dL以上など)や低血糖(70mg/dL未満)。
国試ポイント
術後の患者管理において、バイタルサインの異常値から優先度の高い問題を識別し、適切な看護介入を選択する能力が求められます。特に気道確保はABCD(Airway, Breathing, Circulation, Disability)の原則に基づき最優先です。
混同注意
他のバイタルサイン異常も重要ですが、いびき様呼吸は緊急性の高い気道閉塞の可能性を示唆するため、血圧高値や低体温よりも優先されます。SpO2が96%であっても、いびき様呼吸がある限り、いつSpO2が低下してもおかしくない状態です。
次に同じ論点が出たら
術後患者の緊急性判断では、常に気道、呼吸、循環のABC(Airway, Breathing, Circulation)の順で評価し、異常があれば最優先で介入することを念頭に置きます。特に呼吸音の異常や努力呼吸の有無は重要です。
関連知識
術後患者の呼吸器合併症には、無気肺、肺炎、舌根沈下、喉頭痙攣などがあります。舌根沈下による気道閉塞には、下顎挙上や側臥位が有効です。必要に応じて経鼻エアウェイや気管内挿管が検討されます。