Aさん(77歳、男性)は、脳梗塞による左片麻痺があり、右膝の痛みにより立位が困難である。端坐位で殿部をわずかに持ち上げることはできる。妻(77歳)は小柄で、体格差のある夫の移乗の介助に負担を感じている。Aさんのベッドから車椅子への移乗の際、妻の介護負担を軽減する福祉用具で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第108回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Aさんは座った姿勢でお尻を少し浮かせられる残存能力があるため、ベッドと車椅子の段差を解消し、滑らせるように移動させるトランスファーボードが、奥様の抱きかかえる負担を軽減しつつ、Aさんのわずかな能力も活用できる最も適切な選択肢です。電動介助リフトも負担軽減にはなりますが、Aさんの残存機能や家庭での利用のしやすさを考えると、トランスファーボードがより現実的かつ適切な選択肢と言えます。
選択肢ごとの解説
- 1. Aさんは右膝の痛みと左片麻痺により、立ち上がって歩行器を使用することが困難な状態です。歩行器は、ある程度の立位保持と歩行能力がある人が対象となります。正しくは:立ち上がりや歩行が可能な場合に検討される。選びやすい理由:移動を助ける道具なので一見適切に見えるかもしれないが、Aさんの現在の身体状況を考えると適切ではない。混同注意:歩行補助具全般と、Aさんの現在の具体的な能力を混同しやすい。
- 2. ベッド柵はベッドからの転落防止や、ベッド上での体位変換、起き上がりを補助する目的で使用されます。ベッドから車椅子への移乗における介護者の負担軽減には直接寄与しません。正しくは:ベッドからの転落防止や起き上がりの補助に用いられる。選びやすい理由:ベッド周りの安全や動作を助けるものとして連想されやすい。混同注意:ベッド周りの様々な補助具と、移乗補助に特化した用具を混同しやすい。
- 3. 電動介助リフトは、寝たきりの方や自力での移乗が全く困難な方の移乗に非常に有効ですが、Aさんは端坐位で殿部をわずかに持ち上げることが可能であり、ここまで大掛かりな用具は必ずしも第一選択とはなりません。また、小柄な奥様が自宅で日常的に操作するには、設置スペースや操作の習熟、費用面なども考慮が必要です。選択肢の中では、よりAさんの残存機能と介護者の状況に合致した用具が他にあるため、このケースでの最適解とは言えません。正しくは:自力での移乗が全く困難な方や、より重度な介助が必要な場合に検討される。選びやすい理由:介護者の負担を大幅に軽減できる強力なツールであるため、最も良い選択肢だと誤解しやすい。混同注意:介護負担軽減という目的だけで判断し、利用者の残存能力や自宅での現実的な運用を考慮せずに選択してしまう。
- 4. 正解。Aさんは端坐位でわずかに殿部を持ち上げられる残存能力があるため、ベッドと車椅子の間にトランスファーボードを渡し、その上を滑らせるように移動することで、小柄な奥様も抱え上げることなく、より少ない力で安全に移乗介助を行うことができます。これは、Aさんの残存機能と奥様の介護負担の両方に配慮した最も適切な選択肢です。
国試ポイント
高齢者や身体機能が低下した人の移乗介助における福祉用具の適切な選択が問われています。特に、利用者の残存能力を最大限に活用しつつ、介護者の負担を軽減できる用具を選ぶ視点が重要です。問題文から利用者の具体的な身体状況(どの程度動けるか)と介護者の状況(体格差、負担)を正確に読み取ることが求められます。
混同注意
電動介助リフトとトランスファーボード。どちらも移乗介助を助けるが、利用者の残存能力の有無や介護環境によって適応が異なる。リフトは全介助に近い場合に、ボードは座位保持や臀部挙上が可能な場合に適している。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が出た場合、利用者の「残存能力(どこまでできるか)」と「介護者の状況(誰が、どのように介助するか)」をまず確認する。その上で、それぞれの福祉用具がどのような状況で最も効果的か、という知識を適用する。
関連知識
移乗介助の原則(ボディメカニクス)、利用者と介護者の身体状況アセスメント、各福祉用具の機能と適応(スライディングボード、スライディングシート、介助ベルト、移乗用リフトの種類など)。