Aさん(77歳、男性)は妻(80歳)と2人で暮らしている。5年前に認知症と診断された。最近、Aさんが妻の介助を拒否し、怒鳴ることが多くなったため、通所介護を利用するようになった。通所施設の看護師が入浴を勧めると「今日はやめておく」「今は忙しくて時間がない」と答えた。Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
認知症のある方は、その時の気分や状況によって行動への意欲が左右されやすい傾向があります。「今は忙しい」「時間がない」といった発言は、その時の気持ちや何かに集中していることを示唆している可能性があります。そのため、すぐに諦めるのではなく、一度時間をおいて本人の気分や周囲の状況が変わった頃合いを見て、改めて入浴を勧めることが適切です。これにより、本人が抵抗なく受け入れやすくなることがあります。
選択肢ごとの解説
- 1. 本人の拒否の理由が不明な段階で、即座に入浴から全身清拭へ切り替えるのは適切ではありません。入浴は清潔保持だけでなく、リラックス効果や爽快感をもたらすため、まずは入浴への動機づけを試みるべきです。正しくは:本人の拒否理由を確認し、可能であれば入浴を促す働きかけを検討する。選びやすい理由:入浴を拒否された場合、清潔保持のために清拭へ切り替えるのは一見合理的ですが、本人の意向を尊重しつつ入浴の可能性を探るのが先決です。混同注意:入浴拒否が繰り返される場合や、身体状況により入浴が困難な場合は清拭も選択肢となりますが、今回は初回の対応として適切ではありません。
- 2. Aさんの返答は「今日はやめておく」「今は忙しくて時間がない」であり、浴槽の使い方が分からないといった認知機能に関する困惑を示しているわけではありません。入浴への意欲がない、あるいは他のことに気を取られている可能性が高いため、浴槽の説明は現時点でのニーズとずれています。正しくは:Aさんの言葉の裏にある理由を探る問いかけを行う。選びやすい理由:認知症と診断されているため、使い方を忘れている可能性を考慮したくなりますが、今回の発言からはその可能性は低いと考えられます。混同注意:認知症患者への対応として、手順の再確認は有効な場合もありますが、本事例では優先順位が低い対応です。
- 3. Aさんは妻の介助を拒否し、怒鳴ることが増えたため通所介護を利用するようになった経緯があります。自宅での入浴を促すことは、この利用理由と矛盾し、夫婦関係の悪化を助長する可能性があり不適切です。通所介護の役割である入浴支援を放棄することにもなりかねません。正しくは:通所介護施設で入浴できるよう、環境調整や働きかけを工夫する。選びやすい理由:本人が施設での入浴に抵抗がある場合、自宅の方が落ち着くのではと考えるかもしれませんが、介護拒否の経緯を考慮すると不適切です。混同注意:自宅入浴は患者の生活習慣を尊重する一環として重要ですが、今回は既に自宅での入浴が困難になっている状況です。
- 4. 正解。認知症の人は、気分や状況によって行動や意欲が変化しやすい特徴があります。「今は忙しい」という言葉から、何かに集中している、あるいはその時の気分が乗らないことが考えられます。一旦時間をおき、気分が変わったり、他の活動が一段落したりしたタイミングで再度声をかけることで、受け入れやすくなる可能性があります。これは認知症の方への基本的な対応の一つです。選びやすい理由:他の選択肢が不適切な理由を理解すると、消去法でこの選択肢が最も適切であると判断できます。混同注意:「今日はやめておく」という言葉を真に受けて諦めてしまうと、入浴機会を失うことになります。時間を置くことで状況が変わることを期待します。
国試ポイント
認知症患者への個別性に応じた支援と、非薬物的介入の基本を理解しているかが問われています。特に、拒否があった際の初期対応として、理由の探索や働きかけの工夫が重要です。
混同注意
認知症の症状と関連する拒否行動に対する初期対応の原則を理解していない場合、他の選択肢を選んでしまう可能性があります。特に、清拭への変更や自宅入浴の推奨は、状況によっては有効ですが、本事例においては不適切です。
次に同じ論点が出たら
もし再度の提案も拒否された場合、拒否の具体的な理由を丁寧に聞き出す(例:「何か気になることでもありましたか?」「もし差し支えなければ、入浴したくない理由を教えていただけますか?」)、あるいは他の清潔保持の方法(足浴、手浴、部分清拭など)を提案し、本人の希望と身体状況を再評価する。
関連知識
認知症患者の行動・心理症状(BPSD)への対応原則、コミュニケーション技法(共感的傾聴、肯定的な声かけ、リダイレクションなど)、生活支援における個別性のアセスメント。