Aさん(58歳、男性、会社員)は、妻(55歳)と2人暮らし。5年前から高血圧症、脂質異常症を指摘され、降圧薬を内服していた。自宅で左半身に脱力感が出現し、救急車で搬送された。救急外来でCT及びMRI検査を行った結果、右中大脳動脈領域に脳梗塞の所見が認められた。入院時は、グラスゴー・コーマ・スケール〈GCS〉E3V4M5、体温36.8°C、呼吸数16/分、脈拍66/分(不整)、血圧160/85 mmHg、HbA1c 5.8 %、心電図では、RR間隔は不定で心拍数100/分であった。入院後、血栓溶解療法を受け、2日後からリハビリテーションが開始された。1週後には回復期リハビリテーション病棟へ転棟した。 Aさんの脳梗塞の原因で考えられるのはどれか。2つ選べ。
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出典:厚生労働省ホームページ(第108回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・4番
解説
高血圧症は動脈硬化の最大の危険因子であり、血管内皮障害を引き起こし、アテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞の直接的な原因となります。心房細動は、心房内で不規則な興奮が生じることで血流が停滞し、血栓(心原性塞栓)が形成されやすくなります。この血栓が脳に飛んで脳血管を閉塞すると心原性脳塞栓症を引き起こします。これらは脳梗塞の主要な原因として挙げられます。
選択肢ごとの解説
- 1. 糖尿病は脳梗塞の危険因子ではありますが、直接的な原因というよりは、動脈硬化を促進し脳梗塞のリスクを高める基礎疾患と考えられます。この設問では、脳梗塞の「原因」として、より直接的に病態に結びつくものを求めていると解釈できます。正しくは:糖尿病は脳梗塞の重要な危険因子である。選びやすい理由:糖尿病が脳梗塞の危険因子であることを知っていると、原因として選びたくなる。混同注意:危険因子と直接の原因との区別が曖昧になりやすい。
- 2. 胃潰瘍は消化器系の疾患であり、脳梗塞の直接的な原因とは関連がありません。正しくは:胃潰瘍は脳梗塞とは直接的な関係がない。選びやすい理由:まったく関係のない疾患なので、誤答として認識しやすい。混同注意:特に混乱することはない。
- 3. 正解。高血圧症は、動脈硬化を進行させる主要な危険因子であり、脳梗塞(特にアテローム血栓性脳梗塞やラクナ梗塞)の直接的な原因となります。血管の内皮細胞に損傷を与え、血栓形成を促進します。正しくは:高血圧症は脳梗塞の強力な原因である。選びやすい理由:危険因子という認識が強いと、直接的な原因ではないと誤解する可能性がある。混同注意:高血圧が動脈硬化を経て脳梗塞を引き起こすメカニズムを理解しているかが重要。
- 4. 正解。心房細動は、心房内で血液が淀みやすく、血栓が形成されやすい状態を引き起こします。この血栓が脳へと運ばれ、脳血管を閉塞することで脳梗塞(心原性脳塞栓症)を引き起こす直接的な原因となります。正しくは:心房細動は心原性脳塞栓症の直接的な原因である。選びやすい理由:不整脈の一種であるため、直接的な原因としての認識が薄れる場合がある。混同注意:心房細動と他の不整脈との脳梗塞リスクの違いを理解しておく必要がある。
- 5. 心房粗動も心房細動と同様に心房での電気的な異常ですが、心房細動に比べて心房内の血栓形成リスクは低いとされています。心原性脳塞栓症のリスクはありますが、心房細動ほど一般的かつ直接的な原因としては挙げられにくいです。正しくは:心房粗動も血栓形成リスクはあるが、心房細動ほどではない。選びやすい理由:心房細動と類似した不整脈であるため、同様に脳梗塞の原因と判断しがちである。混同注意:心房細動と心房粗動の脳梗塞リスクの相対的な違いについて理解が不十分だと、どちらも選んでしまう可能性がある。
国試ポイント
脳梗塞の主要な病型(アテローム血栓性、ラクナ、心原性)と、それぞれに強く関連する原因疾患を理解しているかが問われる問題です。危険因子と直接的な原因の区別も重要です。
混同注意
糖尿病や脂質異常症といった危険因子と、高血圧症や心房細動のような直接的な原因を混同しやすい。また、心房細動と心房粗動のように似た病態でも、脳梗塞リスクの程度に違いがあることを把握しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
Aさんの詳細な検査データ(心電図、頭部MRI、血液検査など)から、どのタイプの脳梗塞であるかを特定し、それに合わせた治療法や看護計画を立案できるか。
関連知識
脳梗塞の病型分類(アテローム血栓性脳梗塞、ラクナ梗塞、心原性脳塞栓症、その他の原因不明の脳梗塞)とその病態生理、およびそれぞれの主要な危険因子や原因疾患について復習することが有効です。