Aさん(68歳、男性、自営業)は、妻(73歳)と2人暮らし。Aさんの就寝時刻は21時で、入眠後90分以上が経過した睡眠中に、大声で叫び、腕や足を振り回し暴れる行動が繰り返しみられたが、昼寝では夜間のような行動はみられない。日中、台所で子どもが遊んでいると言い、妻が台所を確認しても誰もいないことが何度かあった。心配になった妻がAさんとともに病院を受診し、Lewy〈レビー〉小体型認知症と診断された。 Aさんは定期的に精神科外来を受診することになった。受診6か月後、Aさんは足の筋肉がこわばり、動きが鈍くなった。また、幻視を訴える頻度が増え、感情のコントロールができず、妻に暴言や暴力を振るうことが多くなったため、精神科病院に入院となった。入院2日、Aさんは歩行時に床に子どもが寝転んでいると訴えて、子どもをよける動作で転びそうになった。また、突然、興奮して大声で怒り出すため、同室患者が苦情を訴えた。Aさんへの看護師の対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第111回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
Aさんは幻視によって床に子供がいると錯覚し、それを避けようとして転倒しかけているため、転倒リスクが非常に高い状態です。患者の安全確保が最優先されるべきであり、看護師が付き添って歩行を支援することは、転倒を予防するための最も直接的かつ適切な対応です。また、幻視による行動変容があるため、個別的な見守りが必要となります。
選択肢ごとの解説
- 1. 病室の変更は環境調整の一環ですが、興奮状態にあるAさんの行動(転倒リスクや大声)の根本的な解決にはならず、むしろ環境の変化がさらなる混乱を招く可能性があります。まずは安全確保と症状への対応が優先されます。正しくは:病室の変更を検討する前に、Aさんの安全確保と現在の症状に対する具体的な対応を行う。選びやすい理由:同室患者からの苦情があるため、すぐに環境調整が必要だと考えるかもしれない。混同注意:環境調整が常に最優先されると誤解する可能性がある。
- 2. 正解。幻視によって床に子供がいると認識し、それを避けようとして転倒しかけている状況です。これは具体的な転倒リスクであり、患者の安全を最優先するため、看護師が付き添い、安全な歩行を確保することが直接的かつ適切な対応です。選びやすい理由:直接的な行動支援であり、患者の安全に直結するため、選択しやすい。
- 3. Aさんは現在、感情のコントロールが困難な状態にあり、暴言や暴力、突発的な興奮が見られます。このような状況で「自分でコントロール方法を見つけろ」と促すのは、患者に過度な負担をかけ、症状を悪化させる可能性もあります。まずは看護師が介入し、感情のコントロールを支援する必要があります。正しくは:Aさんの感情の背景にあるものを理解しようと努め、怒りの原因を軽減したり、興奮を鎮める具体的な支援策を検討する。選びやすい理由:セルフケアを促すことは良いことだと考えるかもしれない。混同注意:症状の急性期における看護師の直接的な介入と、安定期におけるセルフケア支援の区別がつかなくなる可能性がある。
- 4. 幻視は患者にとって現実として認識されており、それを頭ごなしに「幻視だ」と否定することは、患者との信頼関係を損ね、不安や混乱を増強させる可能性があります。患者の訴えを一旦受け止め、現実検討を促すにしても、より慎重なアプローチが必要です。また、転倒リスクへの対応としては直接的ではありません。正しくは:幻視の内容を頭ごなしに否定せず、患者の訴えを受け止めつつ、安全を確保した上で、必要に応じて現実検討を促すコミュニケーションを工夫する。選びやすい理由:幻視は病的なものであるため、それを患者に自覚させるべきだと考えるかもしれない。混同注意:幻覚・妄想に対する看護師の関わり方(否定せず、受容し、安全を確保しつつ現実検討を促す)の基本原則と混同する可能性がある。
国試ポイント
精神疾患患者、特に幻視や認知機能低下が見られる患者に対する安全管理(転倒予防)と、症状に対する適切なコミュニケーションの原則が問われています。患者の訴えを受容しつつ、安全を確保するための具体的な行動と、病識のない患者への対応の基本を理解しているかが重要です。
混同注意
幻視の否定(4)と、幻視による具体的な危険(転倒リスク)への対応(2)が混同されやすい。患者の訴えを受容しつつ、安全を確保するという視点が重要です。また、衝動性(3)や環境調整(1)の必要性も考えられますが、目の前の安全確保が優先されます。
次に同じ論点が出たら
今後、同様の幻視による行動変容や転倒リスクが継続するか、幻視の頻度や内容に変化があるか、薬剤調整の必要性があるか、興奮や暴力行動の誘因と頻度、同室患者への影響について継続的にアセスメントし、個別の看護計画を立てる必要があります。また、非薬物療法での興奮鎮静化や、安全な環境調整を多職種と検討していく視点も求められます。
関連知識
・幻覚・妄想を持つ患者への看護の原則(否定しない、受容する、安全確保、現実検討の促し方) ・転倒予防に関する看護技術 ・精神科における行動制限と最小化の原則 ・レビー小体型認知症(LBD)やせん妄などで見られる幻視の特徴と対応