Aさん(80歳、男性)は、妻(80歳)と2人暮らし。血管性認知症でパーキンソニズムがみられる。認知症高齢者の日常生活自立度判定基準ランクIIb、要介護2。普段は妻がAさんの身の回りの世話をしているが、妻が入院したため短期入所療養介護のサービスを受けることになった。入所時のAさんは歩行開始困難、加速歩行、すくみ足などの歩行障害がみられた。Aさんは「最近、家の中でつまずくことが多くなりました」と入所中の施設の看護師に話した。 Aさんへの歩行指導で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第109回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
歩行開始前の足踏みは、身体のバランスを整え、重心の移動を安定させる効果があります。これにより、最初の一歩をスムーズかつ安全に踏み出すことができ、特に転倒リスクのある高齢者などにとっては、転倒予防に非常に有効な準備運動となります。他の選択肢は、いずれも転倒リスクを高めるか、不適切な歩行方法を示唆しています。
選択肢ごとの解説
- 1. 素早い方向転換はバランスを崩しやすく、転倒のリスクを高めます。特に高齢者や歩行に不安がある人には不適切です。正しくは:方向転換は、足元をよく確認しながらゆっくりと行うよう指導する。選びやすい理由:日常生活で「素早く動く」ことが推奨される場面があるため、適切な運動指導だと誤解する可能性がある。混同注意:反射神経や敏捷性を高めるトレーニングと混同する。
- 2. 足元ばかり見ていると、前方にある障害物や周囲の状況変化に気づきにくくなり、かえって転倒のリスクが高まります。また、猫背になりやすく、姿勢が悪くなります。正しくは:目線はやや前方に向け、顎を軽く引いて姿勢を正し、足元は時折確認する程度にする。選びやすい理由:安全のために足元をしっかり見るべきだという直感から、正しい選択肢だと感じる可能性がある。混同注意:歩行障害がある場合の局所的な注意と、一般的な安全な歩行姿勢の指導を混同する。
- 3. 正解。歩き始める前の足踏みは、重心の移動を安定させ、バランス感覚を整えるのに役立ちます。これにより、スムーズな一歩目の踏み出しを促し、転倒のリスクを減らすことができます。特に高齢者や歩行に不安がある人にとって、転倒予防に有効な準備運動です。正しくは:選択肢の記述が正しい。選びやすい理由:特になし。一般的な歩行指導としても適切。
- 4. すり足歩行は、足が地面に引っかかりやすく、つまずきや転倒の原因となります。また、推進力が得られにくく、歩行の安定性を損ないます。正しくは:膝をしっかり上げて、かかとから着地し、つま先で地面を蹴り出すように歩くよう指導する。選びやすい理由:転倒を恐れて大股で歩くことを避けようとする心理から、すり足が安全だと誤解する可能性がある。混同注意:パーキンソン病患者に見られるような小刻み歩行と混同し、その指導を一般の歩行指導として捉える。
国試ポイント
高齢者や身体機能が低下した患者に対する安全な歩行指導の原則と、転倒予防の基本的な知識が問われています。具体的な行動指導として何が適切かを判断する能力が必要です。
混同注意
日常生活における一般的な歩行動作と、身体機能が低下した状況での安全な歩行指導を混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず「転倒リスクの軽減」という観点から各選択肢を評価し、次に「安全で安定した歩行を促す具体的な方法」に合致するかどうかを確認する。
関連知識
転倒予防策(環境整備、筋力トレーニング、装具の使用)、杖や歩行器の使用方法、身体のアセスメント(バランス能力、筋力、視力、薬剤の影響)、運動指導の原則。