Aさん(81歳、男性)は、妻(73歳)と2人暮らし。自宅でのADLは自立し、認知機能に障害はない。Aさんは食欲不振と腹部不快感、微熱を主訴に受診したところ、急性胆囊炎と診断され、その日のうちに入院した。Aさんのバイタルサインは、体温37.3°C、呼吸数22/分、脈拍90/分、血圧136/84 mmHg。入院後は絶飲食の指示があり、持続点滴静脈内注射と抗菌薬の投与が開始された。トイレ歩行の許可は出ている。 入院後3週、Aさんは症状が改善し、退院することになった。Aさんは「退院したら孫たちと温泉旅行をして、おいしいものをたくさん食べることが楽しみです。何か気を付けることはありますか」と看護師に話した。退院時のAさんへの指導で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第109回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
急性膵炎は、治療によって症状が改善しても、脂質の多い食事やアルコール摂取、ストレスなどが引き金となり再燃する可能性があります。特に退院直後や、旅行など普段と異なる環境での食事・活動は再燃リスクを高めるため、再燃の兆候である上腹部痛があった場合に速やかに医療機関を受診するよう指導することは、患者の安全確保のために最も重要な指導の一つです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。急性膵炎は治療後も再燃の可能性があるため、特に退院直後や旅行など活動が活発になる時期には、症状の再燃を疑う症状(上腹部痛など)があった場合の受診指導は非常に重要です。自己判断で様子を見ることなく、早期受診を促すのは適切な指導です。
- 2. 急性膵炎は膵臓の炎症であり、再発予防のためには退院後も一定期間は脂質の摂取制限など食事内容に注意が必要です。特に「おいしいものをたくさん食べる」と本人が言っているため、具体的な食事指導は必須です。正しくは:急性膵炎後の食事は、脂質の多いものやアルコールの摂取を控え、消化しやすいものを少量ずつ摂るように指導します。選びやすい理由:症状が改善したため、もう大丈夫だろうと考える人がいるかもしれませんが、再燃リスクは残ります。混同注意:他の消化器疾患後の食事制限が不要なケースや、慢性期で安定している場合の食事内容と混同する可能性があります。
- 3. 急性膵炎からの回復期において、激しい運動は避けるべきですが、一般的な日常生活活動や軽度な散歩などは制限する必要はありません。活動レベルは患者の回復度合いに応じて徐々に上げていくのが基本であり、「控える」と一律に指示するのは適切ではありません。正しくは:患者さんの回復状況に合わせて、徐々に活動量を増やしていくように指導します。激しい運動は避けるべきですが、無理のない範囲で体を動かすことは推奨されます。選びやすい理由:病後の体力低下を考慮し、安静を推奨すべきだと考える人もいるかもしれません。混同注意:手術直後や病状が不安定な時期の安静指示と混同する可能性があります。
- 4. 急性膵炎後の退院時において、入浴が全面的に禁止されることは通常ありません。体力が回復していれば、シャワーや湯船に浸かることも可能です。ただし、高熱や倦怠感が強い場合は避けるべきですが、一律に禁止する指導は適切ではありません。正しくは:体調が安定しており、熱がない場合は入浴しても問題ありませんが、長湯や熱すぎるお湯は避けて、疲労を感じたらすぐに上がるように指導します。選びやすい理由:病後の感染リスクや体力消耗を懸念して、入浴を制限すべきだと考える人がいるかもしれません。混同注意:手術後の傷口がある場合の入浴制限や、発熱時の入浴制限と混同する可能性があります。
国試ポイント
急性膵炎後の退院指導として、最も優先されるべき項目を問う問題です。病気の再燃予防と、再燃時の早期対応の重要性が理解できているかを確認しています。安易な制限解除や、必要以上の制限は患者のQOLを損なうため、適切な指導内容を判断する能力が求められます。
混同注意
急性膵炎後の退院指導では、食事制限、アルコール制限、ストレス管理、服薬遵守など多くの指導項目がありますが、その中でも症状再燃時の早期受診は生命予後に関わる重要な項目です。他の選択肢は、一般論としては間違いではないものの、この状況下で最も『適切』な指導とは言えません。
次に同じ論点が出たら
今後同様の問題が出た場合、慢性疾患患者の退院指導では「症状が悪化した場合の具体的な対応(受診基準)」が最も重要視される傾向があることを意識して解答を選びます。患者の訴え(「旅行」「ごちそう」)から、具体的なリスク要因(過食、脂質摂取増加)が示唆されている点も考慮します。
関連知識
急性膵炎の病態生理、原因(胆石、アルコールなど)、治療(絶飲食、輸液、鎮痛など)、再発予防のための生活指導(食事、アルコール制限)。特に、低脂肪食の重要性と、症状出現時の早期受診の必要性。