Aさん(76歳、女性)。夫(74歳)と2人暮らし。6年前にParkinson〈パーキンソン〉病と診断された。現在、Hoehn-Yahr〈ホーエン・ヤール〉の重症度分類でステージIII、要介護1である。トイレと浴室には手すりが設置されている。レボドパ〈L-dopa〉を1日3回内服している。最近、足がすくむことが増えたため受診した。Aさんは主治医から「薬剤の効果を評価するために、服薬時間や生活の状況を日誌に記録しましょう。2週後にまた受診してください」と説明を受けた。 Aさんと夫は、2週後に日誌を持って受診した。レボドパ〈L-dopa〉の処方が1日4回に増量されることになり、病状管理と療養指導のためAさんは週1回の訪問看護を利用することになった。薬剤が増量されてから1週が経過し、足がすくむことが少なくなった。Aさんから「足がすくむようになってから浴槽に入るのをやめていたけれど、入浴しても大丈夫でしょうか」と訪問看護師に相談があった。Aさんに指導する内容で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
パーキンソン病患者は、足がすくむなどの症状により転倒リスクが高いです。レボドパはこれらの症状を緩和する効果があり、薬効が発現している時間帯は比較的身体が動きやすくなります。Aさんはレボドパ増量により症状が軽減しており、浴槽入浴を希望しています。この状況で最も適切なのは、薬効が最大限に発揮されている時間帯に入浴を促すことで、転倒リスクを最小限に抑えつつ、Aさんの希望する活動(浴槽入浴)を支援することです。これは患者の自立支援とQOL向上に繋がります。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。パーキンソン病患者の入浴は、転倒リスクを伴うため安全確保が重要です。レボドパはパーキンソン病の症状を改善する薬剤であり、薬効が発現している時間帯は運動機能が比較的安定しています。この時間帯に入浴することで、足がすくむ症状が軽減され、転倒のリスクを低減し、安全に入浴できる可能性が高まります。患者の残存能力を最大限に活かす支援であり、自立支援の観点からも適切です。正しくは:正しい選択肢のため修正不要です。選びやすい理由:他の選択肢も安全への配慮ではあるものの、本人が浴槽入浴を希望していること、薬の効果で症状が改善していることを踏まえると、自立支援の観点から最も適切なアドバイスです。混同注意:「シャワー浴にしましょう」も転倒リスク軽減に繋がりますが、本人の希望が浴槽入浴であるため、薬の効果を活かして希望を叶える方向で考えるのが最善です。
- 2. 通所介護の利用は一つの選択肢ですが、Aさんは自宅での浴槽入浴を希望しており、薬の効果で症状が改善している現状があります。いきなり外部サービスを勧めるのではなく、まず自宅での安全な入浴方法を検討するのが適切です。本人の希望や残存能力を尊重する観点から、この指導は最も適切とは言えません。正しくは:「まずはご自宅での安全な入浴方法を一緒に考えましょう。もし自宅での入浴が難しい場合は、通所介護の入浴サービスも検討できますよ」のように、本人の希望と現在の状態を考慮した上で提案を段階的に行う方が適切です。選びやすい理由:安全な入浴方法の一つとして考えられますが、本人が自宅の浴槽入浴を希望している点を考慮すると、優先度は低いです。混同注意:「自宅での自立した生活」と「外部サービスの利用」のバランスを考慮する必要があります。薬の効果が出ている現状で、すぐに外部サービスを勧めるのは、Aさんの自立心を損ねる可能性があります。
- 3. 訪問入浴介護は、自宅での入浴が極めて困難な場合に検討されるサービスです。Aさんはレボドパの増量により症状が改善し、自宅での浴槽入浴を希望しています。現状でただちに訪問入浴介護を勧めるのは、Aさんの身体状況と希望にそぐわず、自立支援の観点からも適切ではありません。正しくは:「訪問入浴介護は、ご自宅での入浴が非常に難しい場合の選択肢です。現状では、薬の効果を活かして安全に自宅で入浴する方法をまず考えましょう」のように、必要性の判断を保留し、他の方法を優先する姿勢を示す方が適切です。選びやすい理由:安全面での配慮はできますが、Aさんの症状改善と希望に合致せず、過剰な介入となる可能性があります。混同注意:通所介護と同様に、本人の残存能力や希望を無視した提案になりかねません。訪問看護師としては、まず本人の自立を促す介入を優先すべきです。
- 4. シャワー浴は浴槽への出入りによる転倒リスクを軽減しますが、Aさんは「浴槽に入るのをやめていたけれど、入浴しても大丈夫か」と、浴槽入浴の再開を希望しています。薬の効果で足がすくむ症状が軽減している状況で、いきなりシャワー浴に限定する指導は、Aさんの希望を尊重せず、QOLを低下させる可能性があります。正しくは:「シャワー浴も一つの方法ですが、薬の効果が出ている時間であれば、浴槽入浴の可能性も考えられます。まずは、手すりの設置や滑り止めマットの使用など、安全対策を検討しましょう」のように、本人の希望を考慮しつつ安全対策を提案する方が適切です。選びやすい理由:転倒リスクを減らすという点では理解できますが、Aさんが浴槽入浴を希望していること、薬の効果で症状が改善していることを考慮すると、より自立支援に繋がる指導が望まれます。混同注意:安全確保と本人の希望のバランスが重要です。単純にリスクを避けるだけでなく、患者の生活の質を高めるための指導が求められます。
国試ポイント
パーキンソン病患者の療養指導において、薬物療法の効果を理解し、その効果を活用した生活指導ができるかどうかが問われています。特に、転倒リスクを考慮しつつ、患者の残存能力を最大限に活かし、QOL向上に繋がる支援が重要です。薬の効果時間と活動のタイミングを合わせるという視点がポイントです。
混同注意
本人が浴槽入浴を希望している中で、安全確保だけを過度に優先し、シャワー浴や訪問入浴介護をすぐに勧めてしまう選択肢が混同しやすいです。患者の残存機能と希望を尊重した上で、安全に配慮した自立支援が最も重要となります。
次に同じ論点が出たら
Aさんの入浴状況をアセスメントする際は、単に薬効時間だけでなく、浴室環境(手すりの有無、滑り止めマット、介助者の有無)、入浴前後の体調変化、入浴方法(湯の温度、入浴時間)など、総合的に判断し、必要に応じて具体的な環境整備や介助方法の検討も行う必要があります。
関連知識
パーキンソン病の薬物療法(レボドパの作用機序と副作用、ウェアリングオフ現象)、パーキンソン病患者の日常生活動作(ADL)援助、転倒予防策、訪問看護におけるアセスメントと個別性のある指導の重要性。