Aさん(72歳、男性)。妻と2人暮らし。朝6時に、妻が一緒に寝ていたAさんの様子がおかしいことに気付き、救急車を呼んだ。Aさんは病院に搬送された。病院到着時、ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉II- 10。右片麻痺および失語がみられる。Aさんのバイタルサインは、体温37.0°C、呼吸数20/分、心拍数110/分、血圧150/90 mmHg。身長160 cm、体重60 kg。頭部CTで明らかな異常所見はなく、頭部MRIを行う予定である。 妻から聴取したAさんに関する以下の情報のうち、治療方針を決定するために最も重要な情報はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
治療方針を決定する上で最も重要な情報として、特に急性期疾患においては発症時刻の特定が不可欠である。脳血管障害(脳梗塞など)において、発症から適切な時間内に治療を開始できるか否かが、その後の予後に大きく影響するため、発症の正確な時間、または最後に健常であったと確認できた時間を把握することが極めて重要となる。妻からの「今朝、何時にトイレから戻ってきた」という情報は、Aさんが最後に意識がはっきりしていた、あるいは自力で活動していた時間を推測する上で重要な手がかりとなり、血栓溶解療法(t-PA療法)などの適応可否や治療開始時間を決定する上で不可欠な情報となる。他の選択肢は、患者の一般的な健康状態や生活習慣に関する情報であり、現在の治療方針決定における緊急性や重要性は低い。
選択肢ごとの解説
- 1. 喫煙歴は脳梗塞の危険因子として重要な情報ですが、いま行う治療方針(血栓溶解療法の適応など)の決定に最も重要な情報ではありません。正しくは:現在の症状や病状を直接示す情報に限定する。選びやすい理由:禁煙は健康意識の高さを示すため、治療への協力姿勢として考慮されるかもしれない。混同注意:患者の既往歴や生活習慣は重要だが、直近の急性期の治療方針決定においては、現在の症状や状態に関する情報が優先される。
- 2. 睡眠の質の低下は一般的な体調不良を示す情報であり、直接的な治療方針決定における緊急性や重要性は低い。全身状態の一部として考慮されるが、最も重要な情報とは言えない。正しくは:急性期の状態変化や緊急性を示す情報に限定する。選びやすい理由:睡眠障害は他の疾患のサインである可能性もあるため、気になる情報ではある。混同注意:睡眠状態は患者のQOLや体調を把握する上で重要だが、具体的な疾病の治療方針を決定する上では、より特異的な情報が求められる。
- 3. 正解。脳梗塞の急性期治療では、発症からの時間によって血栓溶解療法(rt-PA静注療法)などの適応が決まります。発症時刻が分からない場合は、最後に症状がなく元気であったことが確認された時刻(最終健常確認時刻)を発症時刻とみなすため、「今朝5時にトイレから戻って来た」は治療方針の決定に最も重要な情報です。正しくは:この選択肢は正しい情報を示しており、修正の必要はありません。選びやすい理由:一見すると些細な日常の情報に見えるため、重要性を判断しにくいかもしれない。混同注意:家族からの情報で日時が特定できることは、急性期疾患の治療開始時間を特定する上で不可欠な要素であることを理解していないと、他の選択肢に目が行きがちになる。
- 4. 健康診査を受けていなかったことは、危険因子の管理状況を知る手がかりにはなりますが、いま行う治療方針の決定に最も重要な情報ではありません。正しくは:現在の症状や病態の緊急性に関わる情報に限定する。選びやすい理由:健康診断を受けていないことで、重大な病気が見過ごされている可能性を想像させるため、重要に感じるかもしれない。混同注意:予防医療や健康管理の重要性とは別に、急性期の治療方針決定には、具体的な症状や発症時期に関する情報が優先される。
国試ポイント
急性期疾患における治療方針決定において、発症時刻の特定が極めて重要であることを理解しているか。特に脳血管障害におけるt-PA療法の適応判断基準として、発症からの時間が重要な因子であることを問う問題。
混同注意
患者の生活習慣や既往歴、一般的な体調に関する情報は全て看護の視点から重要であるため、何が「最も」重要であるかを判断する際に迷いやすい。急性期治療における時間的制約の重要性を理解しているかどうかが鍵となる。
次に同じ論点が出たら
この情報に基づいて、Aさんの現在の意識レベル、麻痺の有無、既往歴などをさらに確認し、CTやMRIなどの画像診断へ進める。
関連知識
脳梗塞の超急性期治療(t-PA静注療法、血栓回収療法)、発症時刻の重要性、Door-to-Needle Time、脳卒中診療ガイドライン。