発災直後、自家用車に泊まり生活を始めた避難者に発生しやすいのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
災害発生直後の自家用車での避難生活は、狭い空間での長時間にわたる座位や活動の制限、精神的ストレス、水分摂取不足などにより、下肢静脈の血流が滞りやすくなります。これにより深部静脈血栓症(DVT)が発生し、その血栓が肺に流れ込むと肺塞栓症を引き起こす静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクが著しく高まります。これは「エコノミークラス症候群」としても知られ、災害時の車中泊避難者にとって特に注意すべき急性期の合併症です。
選択肢ごとの解説
- 1. 生活不活発病は、長期にわたる活動量の低下や寝たきり状態が原因で起こる全身の機能低下であり、発災直後の自動車内生活といった比較的急性期の状況で、他の急性合併症よりも優先的に発生するとは考えにくいです。正しくは:長期にわたり身体活動が著しく制限された場合に発生しやすい状態です。選びやすい理由:車中泊で活動が制限されることから「不活発」という言葉に引きずられやすいですが、発症までの時間経過が異なります。混同注意:急性期の身体的リスクと、慢性期に顕在化する全身機能低下を混同しやすいです。
- 2. 正解。自家用車での避難生活では、狭い空間で長時間同じ姿勢を続けるため、下肢の血流が滞りやすくなります(静脈うっ滞)。これに脱水やストレスが加わることで、深部静脈血栓症(DVT)を発症しやすくなり、その血栓が肺に移動すると肺塞栓症(PE)を引き起こす可能性があります。これらを合わせて静脈血栓塞栓症(VTE)と呼び、発災直後の車中泊避難者にとって極めて重要な急性期の健康リスクです。
- 3. 圧挫症候群(クラッシュ症候群)は、瓦礫などに長時間身体の一部が挟まれ、その圧迫が解除された際に、損傷した筋肉から放出される物質が全身に悪影響を及ぼす状態です。自動車での生活自体が、身体が「圧挫される」状況とは異なります。正しくは:地震などで倒壊した建物や瓦礫の下敷きになり、長時間身体が圧迫された後に発生する病態です。選びやすい理由:「車に閉じ込められる」というイメージから、何らかの圧迫による症状を連想しやすいかもしれません。混同注意:「閉じ込められる」ことによる精神的苦痛や活動制限と、物理的な圧迫による直接的な身体損傷を混同しやすいです。
- 4. PTSDは、生命を脅かすような出来事(災害など)を経験した後に発症する精神疾患ですが、通常は出来事から数週間から数か月を経て症状が現れるとされています。「発災直後」の段階では、急性ストレス反応や急性ストレス障害(ASD)の方がより適切です。PTSDは診断基準上、症状の持続期間が1ヶ月以上とされています。正しくは:災害などの極度な心的外傷を経験した後、通常は数週間から数か月を経て発症する精神的な状態です。選びやすい理由:災害が心的外傷となることは事実であり、避難者が精神的な影響を受けることは広く知られています。しかし、「発災直後」という時間軸と、PTSDの診断基準上の時間経過を考慮する必要があります。混同注意:災害による精神的な影響全般(急性ストレス反応、急性ストレス障害など)と、特定の診断名であるPTSDを混同しやすいです。
国試ポイント
災害時の避難生活における特有の健康リスク、特に身体活動の制限や環境要因が引き起こす急性期の身体合併症に関する知識が問われています。時間軸(発災直後か長期か)と状況(自家用車泊まり)に特化したリスクを見極める能力が必要です。
混同注意
各選択肢が示す病態はすべて災害に関連する可能性がありますが、発症のタイミング(急性期か慢性期か)、原因となる状況(圧迫、不活動、心的外傷など)、および具体的な病態が異なります。特に、漠然とした「不活発」から生活不活発病を選びそうになること、精神的な影響からPTSDを選びそうになることに注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出題された場合、設問の状況(避難場所、避難期間、身体的・精神的状況)と、選択肢の病態の発生メカニズムおよび時間経過を正確に結びつけて判断する必要があります。特に「直後」「長期」などの時間を示すキーワードに注目します。
関連知識
深部静脈血栓症(DVT)と肺塞栓症(PE)の病態生理、症状(下肢の腫脹、疼痛、呼吸困難、胸痛など)、予防策(足関節の運動、弾性ストッキング、水分補給)、災害時におけるDVT予防の指導内容、エコノミークラス症候群の概念。