A君(4歳、男児)は地震による災害のため体育館に両親と避難し、2週後に仮設住宅に移動した。その後1か月経過したころから、A君はわざと机や椅子をガタガタ揺らしながら「地震だ、逃げろ」などと騒いで遊んでいた。母親は仮設住宅に巡回に来ていた看護師に「Aの遊びにどのように対応したらよいでしょうか」と相談した。看護師の母親への説明で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
災害を経験した子どもが、遊びを通してその出来事を再現することは、恐怖や不安といった感情を表現し、出来事を整理しようとする自然な心のプロセスです。この時期の子どもには、安全が確保された環境で、保護者が寄り添い、安心感を与える言葉をかけながら見守ることが最も重要です。子どもの感情表現を受け止めることで、心的ストレスの緩和につながります。
選択肢ごとの解説
- 1. 現在の状況だけでは、直ちに専門医の診察が必要なほどの深刻な状態とは判断できません。子どもの遊びは、災害によるストレスを処理しようとする自然な心の反応である可能性が高いため、まずは見守りながら受容的な態度で接することが基本です。正しくは:「もし、この行動が長期にわたり改善が見られない、あるいは日常生活に支障をきたすような状況であれば、専門家への相談を検討しましょう」選びやすい理由:「わざと…騒いで遊んでいた」という表現から、問題行動と捉え、早期の専門家介入が必要だと考える学生がいるかもしれません。しかし、子どもにとっての『遊び』は感情表現の重要な手段です。混同注意:重度のPTSD症状や、自傷他害の恐れがあるような深刻な状況との混同。
- 2. この種の遊びは、子どもが災害体験による恐怖や不安を再演し、自分の感情をコントロールしようとする健康的な心のプロセスである可能性があります。頭ごなしにやめさせると、感情を抑圧することにつながり、かえって精神的な負担を増大させる恐れがあります。正しくは:「遊びの内容を理解し、安全に配慮しながら見守り、子どもの感情を受け止めることが大切です」選びやすい理由:「危険な遊び」という言葉に反応し、子どもの安全を最優先すべきだと考える学生や、「しつけ」の問題と捉える学生がいるかもしれません。しかし、この場合は安全への配慮と同時に、心のケアが重要です。混同注意:本当に危険な自傷行為や他害行為につながる遊びと、感情表出のための遊びとの混同。
- 3. 正解。子どもが遊びを通して災害体験を再現し、感情を表現することは、心のストレスを処理する上で重要なプロセスです。この行為を否定せず、保護者が「もう安全だよ」「私たちはそばにいるよ」といった安心感を与える言葉をかけながら見守ることで、子どもは徐々に心の安定を取り戻しやすくなります。安心できる環境の提供と共感的な見守りが、この時期の子どもにとって最も大切です。
- 4. 役割を与えることは子どもの自立心や自己肯定感を育む上で良いことですが、この状況で最も優先すべきは、災害体験によって生じたストレスへの対応と、それによる感情表出の受容です。子どものストレスの要因を理解せず、いきなり役割を課すことは、かえって負担になる可能性があります。正しくは:「子どもの感情を受け止め、安心できる環境を提供した上で、もし子ども自身が望むようであれば、年齢に応じた簡単な役割を与え、達成感を促すことも良いでしょう」選びやすい理由:役割を持つことが自己肯定感を高め、成長につながるという一般的な知識と結びつけてしまい、一見ポジティブな対応だと感じる学生がいるかもしれません。混同注意:通常の子育てにおける自主性や社会性の育成と、災害後の特殊な状況でのストレスケアの優先順位の混同。
国試ポイント
災害看護における小児への心理的ケアに関する基本的な知識が問われています。特に、発達段階に応じたストレス反応の表出方法(遊び、退行など)を理解し、それに対する養育者への適切な助言ができるかがポイントです。
混同注意
災害後の子どものストレス反応を単なる『問題行動』と捉えて早期介入を勧める選択肢や、通常のしつけや教育的介入と混同する選択肢は不適切です。また、感情表現としての遊びと、本当に危険な行為につながる遊びとの区別も重要です。
次に同じ論点が出たら
この行動がどのくらい継続しているか、頻度や強さに変化があるか、睡眠・食欲・学業・対人関係など日常生活に影響が出ているか、保護者の精神状態やサポート体制はどうかなどを継続的に観察し、必要に応じて専門機関への相談を検討します。
関連知識
災害後の子どもの心的外傷後ストレス反応(PTSD)、心的外傷後成長(PTG)、レジリエンス、発達段階に応じたストレス反応(乳幼児期、学童期、思春期などでの表現の違い)、保護者への心理教育、心の健康を支援する地域の資源について理解しておくことが望ましいです。