口渇、多飲、多尿を主訴とする患者が、夜間の排尿が頻回で不眠を訴えている。1日の尿量は5Lほどで、尿比重は1.005、尿浸透圧は110 mOsm/kgであった。この症状の原因と考えられるホルモンの内分泌器官はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第114回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
提示された「口渇、多飲、多尿」という症状と、「1日の尿量3L、尿比重1.005、尿浸透圧110mOsm/kg」という検査結果は、尿を濃縮する能力が著しく障害されている状態、すなわち尿崩症の典型的な所見です。尿崩症は、抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)の分泌不足(中枢性尿崩症)か、あるいは腎臓が抗利尿ホルモンに反応しないこと(腎性尿崩症)によって引き起こされます。抗利尿ホルモンは、視床下部で産生され、下垂体後葉に貯蔵された後、血中に分泌されるホルモンです。したがって、これらの症状の原因となるホルモンを分泌する内分泌器官は「下垂体後葉」が適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。提示された症状(口渇、多飲、多尿、夜間頻尿)と検査データ(大量の薄い尿:尿比重1.005、尿浸透圧110mOsm/kg)は、尿を濃縮する能力が低下している状態、すなわち尿崩症を示唆しています。尿崩症は、抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)の分泌不足または作用不全によって起こります。抗利尿ホルモンは視床下部の神経細胞で産生され、下垂体後葉から分泌されます。
- 2. 甲状腺からは甲状腺ホルモンが分泌され、全身の代謝を調節します。甲状腺機能亢進症では口渇が見られることもありますが、多尿の主要な原因となることはなく、尿比重や尿浸透圧の異常とは直接関連しません。正しくは:甲状腺は、甲状腺ホルモンを分泌し、全身の代謝を調節する内分泌器官です。選びやすい理由:甲状腺機能亢進症でも発汗亢進による口渇感が出ることがあるため、水分の異常と関連付けて選びやすいかもしれません。混同注意:甲状腺機能亢進症の症状と尿崩症の症状。
- 3. 膵臓からはインスリンやグルカゴンが分泌され、血糖値の調節に関与します。糖尿病では多飲・多尿・口渇が見られますが、これは高血糖による浸透圧利尿が原因であり、尿浸透圧はむしろ高くなるか正常範囲内で、極端な低比重の尿にはなりません。本症例のデータは糖尿病による多尿とは異なります。正しくは:膵臓は、インスリンなどを分泌し、血糖値を調節します。糖尿病における多尿は高血糖による浸透圧利尿が原因で、尿比重は通常、高めになる傾向があります。選びやすい理由:糖尿病の三大症状(多飲、多尿、口渇)が尿崩症と共通しているため、混同しやすいです。混同注意:尿崩症と糖尿病による多尿。尿比重と尿浸透圧のデータが両者の鑑別に重要です。
- 4. 副甲状腺からは副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌され、血中のカルシウムとリンの濃度を調節します。尿量や尿濃縮機能には直接的な関与はありません。正しくは:副甲状腺は、副甲状腺ホルモンを分泌し、血中のカルシウム濃度とリン濃度を調節します。選びやすい理由:他の内分泌器官の一つとして、知識があやふやだと選びかねません。混同注意:他の内分泌疾患や電解質異常を伴う病態。
- 5. 副腎からはコルチゾール、アルドステロン、アドレナリンなどが分泌されます。これらはストレス反応、電解質バランス、血圧調節などに関与しますが、抗利尿ホルモンとは異なる作用機序であり、直接的な原因ではありません。正しくは:副腎からは、コルチゾールやアルドステロンなどが分泌され、ストレス応答や電解質バランス、血圧調節に関与します。選びやすい理由:アルドステロンが水・電解質バランスに関わるため、水分代謝と関連付けて選びやすいかもしれません。しかし、アルドステロンは主にナトリウムとカリウムの調節を行い、抗利尿ホルモンとは異なる働きをします。混同注意:アルドステロンと抗利尿ホルモンの作用機序、および関連する水・電解質代謝異常。
国試ポイント
尿崩症の主要な症状(多飲、多尿、口渇)と、その病態生理(抗利尿ホルモン作用不全による尿濃縮障害)、そして特徴的な検査データ(低尿比重、低尿浸透圧、多量の希釈尿)を正確に理解しているかが問われる問題です。特に、多尿を呈する疾患として糖尿病との鑑別が重要であり、尿比重や尿浸透圧の数値から病態を読み取る力が求められます。また、主要な内分泌器官とその分泌ホルモンの働きを正確に把握しておくことも必要です。
混同注意
尿崩症の多飲・多尿・口渇は、糖尿病の主要症状と共通するため、混同しやすいです。しかし、糖尿病の多尿は高血糖による浸透圧利尿が原因であり、尿比重は通常高値または正常範囲内となります。これに対し、尿崩症では尿濃縮能が障害されるため、低尿比重・低尿浸透圧の薄い尿が大量に排泄される点で鑑別が可能です。
次に同じ論点が出たら
患者の水分摂取量と排尿量の記録、血漿浸透圧、血中ナトリウム濃度、尿浸透圧、および血中抗利尿ホルモン値の測定を行い、尿崩症の診断を確定します。特に、水制限試験やデスモプレシン(抗利尿ホルモン誘導体)負荷試験は、中枢性か腎性かの鑑別にも重要です。さらに、尿崩症の原因となる基礎疾患(例:頭部外傷、脳腫瘍、自己免疫疾患など)の有無を特定するため、頭部MRIなどの画像診断も検討します。
関連知識
抗利尿ホルモン(ADH、バソプレシン)は、腎臓の集合管において水の再吸収を促進し、尿量を減少させて尿を濃縮する役割があります。尿崩症の種類には、下垂体後葉からのADH分泌が不足する「中枢性尿崩症」と、腎臓がADHに反応しない「腎性尿崩症」があります。診断には、水制限試験やバソプレシン負荷試験などが用いられます。主要な内分泌器官とそのホルモン(例:甲状腺と甲状腺ホルモン、膵臓とインスリン/グルカゴン、副甲状腺とPTH、副腎とコルチゾール/アルドステロンなど)の機能を理解しておくことが基礎知識となります。