A君(15歳、男子)は、蒸し暑い夏の午後に行われたサッカーの試合に出ていた。A君は試合中に大量の汗をかいて、気分が悪くなったので多量の水道水を飲み、日陰で休んでいたが、突然、意識消失して倒れた。このときのA君の細胞外液のナトリウムイオン濃度と水分量の正常時に対する割合を図に示す。このときのA君の体液の状態で正しいのはどれか。

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出典:厚生労働省ホームページ(第114回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢・図は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整え、図は冊子から切り出しています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
A君は大量の汗(水分と電解質の喪失)をかいた後、多量の水道水(低張液)を摂取しています。これにより細胞外液のナトリウムイオン濃度が希釈され低下します。細胞外液の浸透圧が低下すると、水分は浸透圧の高い細胞内へ移動するため、細胞内液は増加しますが、細胞外液量は実質的に減少し、特に血管内の水分量である循環血液量が減少します。循環血液量の減少は、意識消失やショックの原因となります。下図のグラフが示すように、細胞外液の水分量は減少傾向にあり、ナトリウムイオン濃度も低下しているため、この状態は低張性脱水に相当し、循環血液量の減少が起こります。
選択肢ごとの解説
- 1. A君は大量の汗をかいた後に水道水を多量に摂取しており、細胞外液のナトリウムイオン濃度が低下(希釈)している状態です。これにより細胞外液の浸透圧が低下し、水分は細胞外から細胞内へ移動するため、細胞内液はむしろ増加する傾向にあります。正しくは:細胞内液は増加している。選びやすい理由:脱水症状の一種と混同し、体液全体が減少していると誤解する可能性がある。混同注意:高張性脱水の場合と混同しやすい。
- 2. 多量の汗により水分と電解質(ナトリウムイオン)が失われましたが、その後に多量の水道水(低張液)を摂取したため、細胞外液のナトリウムイオン濃度は相対的に低下しています。血漿浸透圧は主にナトリウムイオン濃度に依存するため、この状況では血漿浸透圧は低下しています。正しくは:血漿浸透圧は低下している。選びやすい理由:脱水=浸透圧上昇と反射的に考えてしまう。混同注意:純粋な水分不足による脱水(高張性脱水)との区別が曖urb。
- 3. 正解。A君は大量の汗をかいており、これにより水分と電解質が失われています。その後水道水を多量に摂取したものの、これは主に細胞外液を希釈し、細胞内への水分移動を促進します。結果として細胞外液全体の水分量は相対的に減少しており、特に血管内の水分量(循環血液量)が減少することで、意識消失などの症状が引き起こされます。これは低ナトリウム血症を伴う脱水(低張性脱水)の一種と考えられます。正しくは:適切です。選びやすい理由:体液量が増えたと誤解する可能性。混同注意:細胞内液の変動と混同しやすい。
- 4. 循環血液量が減少している状態では、血液中の水分が減少し相対的に赤血球の割合が増加するため、ヘマトクリット値は上昇する傾向にあります。この状況は循環血液量の減少を示唆するため、ヘマトクリットは低下しません。正しくは:ヘマトクリットは上昇している。選びやすい理由:水分摂取による一時的な希釈効果を考慮し、ヘマトクリットが低下すると誤解する。混同注意:循環血液量の減少と貧血によるヘマトクリット低下を混同しやすい。
国試ポイント
体液の組成と浸透圧の調整メカニズム、特に脱水の種類(等張性、高張性、低張性脱水)とその病態生理を理解しているかが問われています。汗をかいた後の水分の種類(電解質を含むか否か)が体液バランスに与える影響を正確に把握することが重要です。
混同注意
等張性脱水、高張性脱水、低張性脱水のそれぞれの病態生理と、細胞内外液の水分量・ナトリウムイオン濃度の変化を混同しやすい。特に、多量の水分摂取後の体液変動を見誤ることがある。
次に同じ論点が出たら
意識消失した患者への初期対応(ABC)、体液輸液療法の選択(等張液、高張液、低張液の使い分け)、採血データ(Na値、Hct値)の解釈。
関連知識
体液の構成(細胞内液、細胞外液、間質液、血漿)、浸透圧の概念と主要な決定因子(ナトリウムイオン)、ADH(抗利尿ホルモン)の作用、アルドステロンの作用、熱中症における体液管理。