Aさん(71歳、女性)は、要介護1で、ベッドからの立ち上がりや入浴などに一部介助を必要とするが、歩行器で室内を移動できる。失禁することがあるため失禁用のパッドを装着している。Aさんは介護老人保健施設の短期入所〈ショートステイ〉を利用している。入所した日の夕方から、水様便と嘔吐とがみられ、感染性胃腸炎が疑われてトイレ付きの個室に移動した。 発症から2日目の午後、Aさんの仙骨部に直径2cm程度のステージIの褥瘡が出現した。嘔吐は消失したが下痢が続き、2〜5時間ごとにトイレを使用している。この時点の褥瘡に対する看護で最も優先されるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
下痢が続いており、仙骨部にステージIの褥瘡が発症している状況では、便による皮膚の汚染や湿潤が褥瘡の主な悪化因子となります。撥水性の高いクリームを塗布することで、皮膚を便や尿から保護し、褥瘡の悪化を防ぐことが喫緊の課題であり、最も優先される看護介入です。
選択肢ごとの解説
- 1. ステージIの褥瘡は皮膚の発赤のみで、壊死組織はまだ形成されていません。正しくは:壊死組織の除去は、黒色壊死組織や黄色壊死組織がある場合に考慮されます。ステージII以降の褥瘡で壊死組織が認められる場合に検討します。選びやすい理由:褥瘡治療において壊死組織の除去が重要なことは一般的に知られているため。混同注意:ステージ分類が進んだ褥瘡の治療法と混同しやすい。
- 2. エアマットレスの使用は褥瘡の予防や悪化防止に有効ですが、すでにステージIの褥瘡が発生しており、さらに下痢による皮膚汚染のリスクがある状況では、より直接的なケアが優先されます。特に、仙骨部の褥瘡の原因として、下痢による皮膚の湿潤と汚染が強く示唆されるため、その対策が急務です。正しくは:エアマットレスは長期的な体圧分散のために重要ですが、下痢による皮膚障害が顕著な場合は、まず皮膚の保護と清潔を保つことが最優先です。選びやすい理由:褥瘡対策の一般的な知識として、体圧分散が重要であるという認識から選びやすい。混同注意:褥瘡の基本的な予防策と、すでに発生した褥瘡が悪化するリスクがある場合の優先順位を混同しやすい。
- 3. 正解。Aさんは下痢が続いており、2〜3時間ごとにトイレを使用している状況です。仙骨部のステージI褥瘡は、この下痢による皮膚の湿潤や便の刺激が主な原因である可能性が高いです。撥水性の高いクリームを塗布することで、便や尿による皮膚の汚染や湿潤から皮膚を保護し、褥瘡の悪化や新たな発生を防ぐことが最も優先されます。正しくは:この選択肢は正しいです。選びやすい理由:下痢による皮膚炎の予防策として正しい知識があれば迷わず選べる。混同注意:他の褥瘡ケアの選択肢も正しい処置だが、この状況における最優先事項を見極める必要がある。
- 4. 栄養状態の改善は褥瘡の治癒促進に重要ですが、ステージIの褥瘡が出現した直後で、かつ下痢による皮膚汚染のリスクが高い状況では、栄養補助食品の摂取は即効性に欠け、現在の皮膚トラブルへの直接的な対処としては優先度が低いです。正しくは:栄養補助食品の摂取は、長期的な視点で褥瘡の治癒を促すために重要ですが、まずは局所の保護と清潔を確保することが先決です。選びやすい理由:栄養状態が褥瘡の発生や治癒に影響することは事実であるため、正しい知識の一部と捉えられやすい。混同注意:褥瘡の全身管理と局所管理の優先順位を混同しやすい。特に「最も優先されるのはどれか」という問いに対して、局所の緊急対応が求められる状況。
国試ポイント
褥瘡ケアにおいて、患者の状況(特に便失禁や尿失禁の有無)に応じた適切な局所ケアの優先順位を理解しているかが問われています。ステージIの褥瘡であっても、原因となっているリスク因子(この場合は下痢による湿潤と汚染)への対処が重要です。
混同注意
褥瘡の一般的な治療法(壊死組織除去、体圧分散)と、特定の状況(下痢による皮膚トラブル)における最優先の局所保護ケアの区別。栄養管理も重要だが、急性期の局所保護と清潔保持が優先される点を理解しているか。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず褥瘡のステージと、発生または悪化要因となっている患者の身体状況(特に排泄状況や清潔状況)を確認し、その原因に対する直接的な対策が最も優先されると判断する。
関連知識
褥瘡のステージ分類(NPUAP/国際分類)、仙骨部や踵部などの好発部位、排泄物による皮膚障害(失禁関連皮膚炎:IAD)のメカニズムと予防、皮膚保護剤の種類と選択、栄養と褥瘡治癒の関係。