Aさん(68歳、女性)は、1人暮らし。隣の市に娘がいる。日常生活は自立している。10年前に糖尿病と診断され、血糖降下薬を服用している。最近の血液検査でHbA1cが8.5 %のため、インスリンの自己注射を導入するかどうかを検討することになった。医師からAさんには自己注射についてまだ説明されていない。 Aさんは、医師から自己注射について説明された。Aさんは医師に質問はないと答えたが、考え込んでいたため、看護師はAさんに心配なことがあるか質問した。Aさんは「10年間、食事療法をがんばってきたのに、注射になるのですね。今後どうしたら良いかわからなくなりました」と話した。この時の看護師の言葉かけで適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第108回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
患者は10年間の食事療法の努力が報われなかったという喪失感と、今後の治療への不安を抱いています。看護師はまず、患者のこれまでの努力を認め、共感を示すことが重要です。過去の努力を一緒に振り返ることで、患者は自身の経験が意味のあるものであったと再認識し、自己肯定感を保ちながら、次のステップに進むための心理的準備を整えることができます。これは受容と共感に基づく関わりであり、適切なコミュニケーションです。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者のこれまでの努力を否定し、さらに精神的負担をかける不適切な声かけです。自己注射導入への落胆や不安を増幅させてしまいます。正しくは:患者の努力を認め、共感を示す言葉に修正する。選びやすい理由:患者が「頑張ってきた」と発言しているため、その言葉に安易に乗ってしまいそうになるかもしれない。混同注意:患者の気持ちに寄り添うことと、患者の行動を評価・批判することの混同。
- 2. 患者は自己注射導入への精神的な動揺を訴えており、食事療法の具体的な方法論を提案するのは時期尚早です。まずは患者の感情に寄り添う必要があります。正しくは:まずは患者の心情を受け止め、それから必要に応じて具体的な解決策を検討する。選びやすい理由:食事療法に関する具体的な困り事の解決策を提供することが、看護師の役割だと考えてしまうかもしれない。混同注意:患者の感情面への配慮と、問題解決型アプローチのタイミングの混同。
- 3. 患者の不安な気持ちを無視し、一方的に「うまくいきます」と断定する声かけは、患者の主体性や自己決定権を阻害し、信頼関係を損ねる可能性があります。患者の感情に寄り添う姿勢が欠けています。正しくは:患者の不安な気持ちに共感し、その上で今後の治療方針を一緒に考えていく姿勢を示す言葉に修正する。選びやすい理由:患者を励まし、安心させようとする意図から、つい言ってしまいがち。しかし、根拠のない断定は患者の不安を解消しない。混同注意:患者への励ましと、患者の感情の否定・安易な断定の混同。
- 4. 正解。患者が「10年間、食事療法を頑張ってきた」と訴えていることに対し、その努力と経験を肯定的に受け止め、ねぎらう言葉です。患者のこれまでの努力を認め、共感することで、自己肯定感を保ち、自己注射導入という新たな治療への適応を支援する第一歩となります。これにより、患者は自分の気持ちを話しやすくなり、次のステップへと進むための土台を築けます。
国試ポイント
患者の精神的苦痛や感情の揺れに対し、看護師がどのように受容的・共感的に関わるべきか、適切なコミュニケーションスキルが問われる。特に、患者のこれまでの努力や自己肯定感に配慮した声かけの重要性。
混同注意
患者の感情を安易に励ます言葉(例:「大丈夫ですよ」)や、具体的な解決策を性急に提示する言葉(例:「〇〇をしましょう」)は、患者の不安や喪失感を受け止めていないため不適切であると混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
同様の状況では、まず患者の感情や思いを傾聴し、受容する姿勢を示すことが重要である。次に、その感情がどこから来ているのかを理解しようと努め、患者が自身の力で乗り越えられるようなサポートを検討する。
関連知識
治療方針変更時の患者の心理的プロセス(受容のプロセス、喪失体験)、コミュニケーション技法(傾聴、共感、受容、肯定的なフィードバック)、自己効力感の維持・向上、自己決定の支援。