Aさんは職場の上司に不満をぶつけたいと考えているが、それができないので、不満をぶつけやすい対象である後輩を叱責している。Aさんの防衛機制で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第111回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
Aさんは上司に直接向けられない不満を、後輩という別の人間に向けて発散しています。これは、感情の対象を別の安全な対象に転換する『置き換え(displacement)』という防衛機制の典型例です。置き換えは、欲求や感情の元々の対象が脅威となる場合に、より安全な対象にその感情を向けることで心理的な安定を保とうとする無意識の心の働きです。
選択肢ごとの解説
- 1. 解離は、耐えがたい状況や感情から精神的なつながりを切り離し、自己の意識や記憶、同一性、知覚などに一時的な断絶が生じる状態を指します。Aさんの行動は感情の対象が変更されたもので、意識の断絶ではありません。正しくは:耐えがたい経験から意識や記憶を切り離すこと。選びやすい理由:ストレスからの回避という点で誤解されやすいかもしれません。混同注意:抑圧、否認など意識を関与させない防衛機制と混同しやすいですが、解離はより深刻な意識の変容を伴います。
- 2. 昇華は、社会的に受け入れがたい衝動や欲求を、より建設的で社会的に価値のある活動や目標へと転換することです。後輩を叱責する行動は建設的ではなく、社会的に望ましい行動とは言えません。正しくは:満たされない欲求を、社会的に認められる生産的な活動へと高めていくこと。選びやすい理由:不満エネルギーの方向転換という点で似ていると感じるかもしれませんが、その質が異なります。混同注意:置き換えと似ていますが、昇華は転換先がポジティブな社会的価値を持つ点で区別されます。
- 3. 合理化は、自分の行動や感情、欲求に対して、もっともらしい理由や口実をつけて正当化することです。Aさんは不満の対象を直接上司にぶつけられないという事実を変えず、単に発散先を変えているだけなので合理化にはあたりません。正しくは:自分の不都合な感情や行動を、社会的に受け入れられやすい理由をつけて正当化すること。選びやすい理由:「後輩を指導している」などとAさんが考えている場合、合理化に見えるかもしれませんが、問題文の主眼は『不満をぶつけやすい対象である後輩を叱責している』という発散対象の変更です。混同注意:否認や投影など、自己防衛的な思考過程と混同されがちです。
- 4. 正解。置き換え(displacement)は、ある対象に向けられた感情や衝動を、直接表現することが困難または不適切であるため、より安全で受け入れやすい別の対象へと転換して表現することです。Aさんは上司への不満を直接ぶつけられないため、より弱い立場である後輩へ転換して発散しており、これは置き換えの典型的な例です。正しくは:(正答のため修正不要)選びやすい理由:(正答のため記述不要)混同注意:(正答のため記述不要)
- 5. 反動形成は、自分が抱いている受け入れがたい衝動や欲求とは正反対の態度や行動を示すことです。Aさんの行動は不満を抱えているという感情自体は変わらず、その対象が変わっただけなので、反動形成ではありません。正しくは:受け入れがたい感情や衝動とは真逆の行動をとることで、それを打ち消そうとすること。選びやすい理由:上司への不満があるにもかかわらず、その不満を別の形で表現していることから、一見すると逆の行動のように感じられるかもしれませんが、感情そのものが逆転しているわけではありません。混同注意:否認や抑圧と混同されやすいですが、反動形成は表面的な行動が真逆になる点で特徴的です。
国試ポイント
防衛機制の種類と具体的な状況への適用を理解しているかが問われています。特に、複数の防衛機制が似たような状況で起こりうるため、それぞれのメカニズムを正確に区別できるかが重要です。
混同注意
置き換えと昇華はどちらもエネルギーの方向転換ですが、昇華は社会的に価値のある建設的な方向へ向かう点で異なります。また、合理化は行動の正当化であり、感情の転換とは異なります。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出題された場合、まず「問題となっている感情(不満、怒りなど)」と「その感情の本来の対象」そして「実際に向けられた対象」を明確に特定し、その関係性から適切な防衛機制を判断します。
関連知識
防衛機制には、抑圧、否認、投影、退行、同一視など多くの種類があります。これらは無意識のうちに自己を守るために働く心のメカニズムであり、適切に機能することで精神の安定が保たれますが、過度になると不適応行動につながることもあります。