Aさん(52歳、女性)。自宅で突然激しい頭痛と悪心が出現し、自力で救急車を要請し、搬送された。ジャパン・コーマ・スケール〈JCS〉I-2で頭痛を訴えており、発汗著明であった。瞳孔径は両側3.0 mm。上下肢の麻痺はない。Aさんは頭部CTでくも膜下出血と診断され、ICUに入室した。入室時のバイタルサインは、体温36.8°C、呼吸数24/分、脈拍92/分、血圧156/98 mmHg、経皮的動脈血酸素飽和度〈SpO2〉95 %であった。 ICU入室から24時間以内に注意すべきAさんの症状や徴候はどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第107回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は4番
解説
頭部外傷患者のICU入室から24時間以内は、脳浮腫の進行や頭蓋内圧亢進による脳ヘルニアのリスクが最も高い時期です。瞳孔散大、特に片側の瞳孔散大は、脳ヘルニアが進行し、動眼神経が圧迫されていることを示す非常に重要な徴候であり、緊急の医療介入が必要となります。これは生命予後を左右する重大なサインであるため、最も注意すべき症状・徴候です。
選択肢ごとの解説
- 1. クスマウル呼吸は主に重度の代謝性アシドーシス、特に糖尿病性ケトアシドーシスで見られます。ICU入室直後にこの症状が発現する可能性もありますが、頭部外傷患者の緊急性とは直結しません。脳ヘルニアにおいては、中枢性過換気などが見られることはありますが、クスマウル呼吸とは異なります。正しくは:頭部外傷では、呼吸パターン異常(不規則呼吸、チェーン・ストークス呼吸など)に注意します。選びやすい理由:呼吸は生命維持に直結するため、意識レベル低下患者では常に注意が必要ですが、特徴的な呼吸パターンと病態の関連性を理解することが重要です。混同注意:クスマウル呼吸は深くて速い呼吸であり、チェーン・ストークス呼吸(無呼吸と過呼吸を繰り返す)や中枢性過換気(速く深い呼吸だが、代謝性アシドーシスではない)と混同されやすいです。
- 2. 膝蓋腱反射の低下は、脊髄損傷や末梢神経障害、電解質異常(高マグネシウム血症など)で認められることがあります。頭部外傷においては、むしろ反射の亢進が見られることが多く、反射低下は直接的な重症化のサインとはなりにくいです。正しくは:頭部外傷では、病変の部位によっては反射の亢進や左右差に注意を払う必要があります。選びやすい理由:神経系の評価は重要であり、反射の変化もその一部ですが、頭部外傷における反射の意義を理解しておく必要があります。混同注意:反射の亢進と低下は全く異なる病態を示唆するため、注意が必要です。特に錐体路障害では反射亢進が見られます。
- 3. 企図振戦は、目的を持った運動時に現れる振戦であり、小脳の機能障害を示唆します。急性期の頭部外傷、特にICU入室から24時間以内に緊急で注意すべき症状としては、意識障害の進行や脳ヘルニア徴候が優先されます。企図振戦は、慢性期や後遺症として出現することが多いです。正しくは:急性期の頭部外傷では、意識レベルの変動、瞳孔不同、麻痺の出現などに注意が必要です。選びやすい理由:振戦は神経系の異常を示唆するため、注意を引きますが、その性質(安静時振戦、企図振戦)と出現時期が重要です。混同注意:安静時振戦(パーキンソン病など)と企図振戦(小脳疾患など)は原因が異なります。また、意識障害が強い急性期には、企図振戦を評価することが困難な場合があります。
- 4. 正解。瞳孔散大、特に片側の瞳孔散大は、脳ヘルニアの兆候として非常に重要です。脳圧が亢進し、動眼神経が圧迫されることで生じます。ICU入室後の頭部外傷患者において、意識レベルの低下と合わせて瞳孔散大が観察された場合、緊急の介入が必要な状態である可能性が高く、生命予後を左右する重大な徴候です。正しくは:この選択肢は正しい記述です。選びやすい理由:瞳孔の評価は、意識障害の患者において最も迅速かつ重要な神経学的所見の一つであり、他の症状と組み合わせて判断されます。混同注意:瞳孔不同(左右差)と瞳孔散大(両側あるいは片側が大きくなる)は、異なる病態を示唆することがありますが、特に片側の瞳孔散大は脳ヘルニアの典型的な徴候として認識することが重要です。
国試ポイント
頭部外傷や脳血管障害など、急性期の脳疾患患者における神経学的所見の観察は非常に重要です。特に瞳孔所見(瞳孔径、対光反射、左右差)は、脳幹機能や頭蓋内圧亢進の指標として、看護師が迅速に評価し、異常を早期に発見するスキルが求められます。
混同注意
脳損傷の種類によって出現する症状は異なりますが、瞳孔散大は共通して重篤な状態を示すことが多いです。他の症状(意識レベルの変化、麻痺、呼吸パターン異常など)と組み合わせて総合的に判断する必要があります。
次に同じ論点が出たら
瞳孔散大が確認された場合、直ちに医師に報告し、頭部CTなどの画像検査の手配、脳圧降下療法、呼吸・循環管理の強化など、緊急の対応が求められます。患者の意識レベルやバイタルサインの変化と合わせて継続的に観察することが不可欠です。
関連知識
脳ヘルニアの分類(テント上ヘルニア、テント下ヘルニアなど)、意識レベル評価(グラスゴー・コーマ・スケールGCS)、クッシング現象(血圧上昇、徐脈、呼吸不整の三徴)、頭蓋内圧亢進症状(頭痛、嘔吐、乳頭浮腫)