Aさん(50歳、男性、自営業)は妻(48歳)、長男(23歳、会社員)と3人で暮らしている。3年前から歩行時のふらつきを自覚していたが、日常生活動作〈ADL〉は自立していた。最近、転倒が多くなり医療機関を受診して頭部CT検査を受けたところ、小脳と脳幹に萎縮を認め、遺伝性の脊髄小脳変性症と診断された。Aさんは「母も同じ疾患で亡くなりました。妹が同じ敷地内に1人で暮らしていますが、妹も転ぶことが多くなり、医師の勧めで遺伝子診断を受ける予定です。明日、保健所に難病の医療費助成の申請に行くのですが、保健師に伝えた方がよいことはありますか」と看護師に質問した。 Aさんから保健師に伝える内容で優先度が高いのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第112回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
保健師は、個人の健康状態だけでなく、その生活全体を包括的に支援する役割を担っています。Aさんの経済状況は、医療サービスの受診機会、食料の確保、住居の安定性など、健康の基盤となる多くの側面に直接影響を及ぼします。経済的な困難は、ストレスの増大や必要なケアへのアクセスを阻害する大きな要因となるため、保健師がAさんの現在の状況を理解し、適切な支援を検討する上で、最も早期に把握し対応すべき優先度の高い情報です。これにより、他の健康問題への介入も効果的に行えるようになります。
選択肢ごとの解説
- 1. 長男の勤務先の業種は、Aさんの差し迫った健康問題や生活状況に直接影響を与える情報ではないため、優先度は低いと考えられます。正しくは:Aさんの健康状態や生活に直接関連する情報を優先する。選びやすい理由:家族構成の一部として考慮されるかもしれないが、直接的な介入には結びつきにくい。混同注意:家族の状況全てを把握する必要があると思われがちだが、緊急性や影響度を考慮すべき。
- 2. 正解。Aさんの経済状況は、保健医療サービスへのアクセス、栄養状態、住環境、ストレスレベルなど、Aさんの健康と生活の質に直接的かつ広範な影響を及ぼす可能性が高い情報です。特に困窮している場合、早急な支援が必要となるため、保健師が最初に把握すべき優先度の高い情報と考えられます。
- 3. 母親の疾病の進行度合いは、Aさんの介護負担や精神的ストレスに関わる重要な情報ですが、Aさん自身の健康状態や生活に直結する緊急性という点では、経済状況よりも優先度が低い可能性があります。母親のケアは別途検討されるべき事柄です。正しくは:Aさん自身の生活の基盤となる情報を優先する。選びやすい理由:家族の健康問題は重要であるため、迷う可能性がある。混同注意:介護状況はAさんのストレス要因だが、まずはAさん自身の基盤状況を把握すべき。
- 4. 妹の遺伝子診断の予定は、Aさん自身の健康状態や生活に直接的な影響を及ぼす情報は少なく、現状では保健師が直ちに対応すべき優先度の高い情報とは言えません。家族歴として参考にはなるかもしれませんが、緊急性は低いと考えられます。正しくは:Aさん自身の現在の課題に直接関連する情報を優先する。選びやすい理由:遺伝性疾患の可能性など、将来的な健康リスクに関わるため重要に思えることがある。混同注意:家族の健康情報すべてが同等に重要と捉えられがちだが、現在のAさんへの影響度を評価すべき。
国試ポイント
保健師の役割と、健康問題の背景にある社会的・経済的要因の重要性を理解しているか、そして限られた情報の中で何が最も緊急性・重要性が高いかを判断できるかが問われています。
混同注意
家族の病状や介護状況も重要ですが、個人の生活基盤、特に経済状況は、他のすべての健康問題に影響を与えるため、より優先順位が高いと判断されます。
次に同じ論点が出たら
経済状況が判明した後、具体的な困窮度合いに応じて、公的支援制度の紹介(生活保護、医療費助成など)、食料支援、専門機関への連携などを検討する。
関連知識
地域保健活動、ソーシャルワーク、健康の社会的決定要因(SDH)、経済的困窮者支援、介護保険制度、生活保護制度。