Aさん(19歳、男性、専門学校生)は、1人暮らし。「皆が自分を嫌っている」と言い、昨年から学校を休学し、アパートに引きこもるようになった。先週、夜中に大声で叫ぶ日が続いたため、アパートの管理人が両親へ連絡をした。連絡の翌日、Aさんの両親が訪ねてみると、Aさんは「隣の人に嫌がらせを受けている。助けてくれ」と叫び続けたため、両親とともに精神科病院へ行き、その日のうちに任意入院となった。Aさんは統合失調症と診断され、抗精神病薬による治療が開始された。 入院後2か月。Aさんは症状も落ち着いてきたため、退院の準備をすることになった。Aさんは看護師に「病気はすっかりよくなったのに、ずっと薬を飲まなければならないのか。体がだるく、体力が落ちた気がする。朝から学校へ行けるかどうか心配だ」と話した。Aさんの退院の準備のために行う支援で優先度が高いのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第108回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
Aさんは「病気はすっかりよくなったのに、ずっと薬を飲まなければならないのか」と発言しており、自身の病状認識と服薬治療の必要性について乖離があることが示唆されます。薬物治療の中断は再燃のリスクを高めるため、退院後の安定した生活を送るためには、薬物治療への理解と継続意欲を高めることが最も重要です。そのため、服薬に関する心理教育を行い、薬の必要性や副作用への対処法などを具体的に説明し、患者の疑問や不安を解消することが優先されます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。Aさんは「病気はすっかりよくなったのに、ずっと薬を飲まなければならないのか」と、薬物治療の継続に対する疑問や不満を抱いています。これは服薬アドヒアランス低下のリスクであり、再燃や病状悪化に繋がりかねません。優先的に服薬の必要性、効果、副作用、中断のリスクについて教育し、心理的な側面から服薬継続への理解を深める支援が必要です。選びやすい理由:他の選択肢も重要ですが、服薬継続への疑問は退院後の自己管理に直結し、疾患の予後を大きく左右するため、緊急性と優先度が高いです。混同注意:単なる服薬指導だけでなく、患者の感情や認識に働きかける心理教育の視点が含まれる点が重要です。
- 2. Aさんは「体がだるく、体力が落ちた気がする」と訴えていますが、直接的に食事の問題を明言しているわけではありません。食事への援助も体調管理には重要ですが、薬物療法への疑問の方が退院後の生活の質や再発予防に直結する課題であり、優先度は服薬心理教育より低いです。正しくは:必要であれば個別性に応じて食事指導も検討しますが、現時点では最優先ではありません。選びやすい理由:体調不良の訴えから栄養面を連想しやすいですが、薬への不満の方が具体的な課題です。
- 3. 「体力が落ちた気がする」という訴えはありますが、筋力トレーニングが最優先の支援とは限りません。体力低下の原因は多岐にわたり、まずは症状の安定と自己管理の基盤となる服薬の理解が重要です。筋力トレーニングは退院後の生活支援の一部として検討されますが、現段階での最優先事項ではありません。正しくは:退院後の生活調整の一環として身体活動の指導は有効ですが、服薬の自己管理の方が優先されます。選びやすい理由:体力低下の訴えから身体的な介入を想像しやすいですが、精神的な問題が隠れている可能性も考慮すべきです。
- 4. アサーティブトレーニングは、自己主張を適切に行うためのコミュニケーションスキルを向上させるものですが、Aさんの現状の訴えからは、このスキルが喫緊の課題であるとは読み取れません。学校への不安はありますが、対人関係の悩みや自己表現の困難さが直接的に示されているわけではないため、優先度は低いです。正しくは:必要に応じて検討される支援ですが、現在の課題解決には直結しません。選びやすい理由:学校生活への不安から、対人関係のスキルが不足しているのではと推測するかもしれませんが、直接的な訴えではありません。
国試ポイント
患者の訴えから、優先度の高い看護問題を特定し、適切な介入を選択する能力が問われています。特に、精神疾患患者の退院支援においては、自己管理能力の向上、特に服薬アドヒアランスの維持が重要なポイントとなります。
混同注意
「体力が落ちた気がする」という訴えから、身体的な介入(食事や運動)を優先したくなるかもしれませんが、精神科領域の患者の場合、病識や服薬アドヒアランスに関わる心理的側面が最も優先されるべき問題であることが多いです。
次に同じ論点が出たら
服薬心理教育後も服薬への抵抗が続く場合、薬剤師と連携した服薬指導の強化、服薬形態の検討、家族への支援を含めた多職種連携による個別ケアプランの見直しを検討します。
関連知識
精神疾患患者の退院支援では、服薬アドヒアランスの維持、病識の獲得、ストレス対処能力の向上、社会復帰への支援が主な柱となります。特に服薬アドヒアランスは再燃予防に不可欠です。心理教育は、患者自身が病気と治療について理解し、主体的に治療に参加できるよう促す有効な方法です。