Aさん(72歳、男性)は、妻と2人暮らしで子どもはいない。定年後は2人で旅行するのが趣味であった。Aさんは、1か月前から残尿感や夜間頻尿が気になり病院を受診した結果、前立腺癌と診断され根治的前立腺摘出手術を受けた。退院後は、手術後の補助療法として、外来で放射線の外照射療法を行うことになっている。 Aさんの放射線療法が開始され初回の照射を終えた。放射線外来の看護師は、終了後にAさんへ声をかけた。Aさんは「ベッドは硬いし、最後まで同じ姿勢でいることがとても苦痛です。大きな音がするので恐怖も感じます」と訴えた。このときの看護師の説明で正しいのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第113回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
Aさんの訴えは、治療体位の維持による身体的苦痛と、機械音による精神的恐怖です。この中で、身体的苦痛である「ベッドは硬いし、最後まで同じ姿勢でいることがとても苦痛」という点に対して、「治療体位をとるための固定具を工夫してみる」という対応は、患者の苦痛軽減に直接的に繋がり、看護師の役割として適切です。固定具の調整やクッションの利用など、具体的な改善策を放射線技師や医師と連携して検討することで、患者の治療継続への意欲を高めることができます。
選択肢ごとの解説
- 1. 放射線照射中は、放射線防護の観点から看護師が治療室内に留まることはできません。インターホンやカメラを通して患者の状態を観察するのが一般的です。正しくは:「インターホンやカメラを通して、常にAさんの様子を観察していますのでご安心ください」選びやすい理由:患者の不安軽減には繋がるが、現実的ではない。混同注意:患者の訴えへの共感と行動が混同される。
- 2. 正解。Aさんは「ベッドは硬いし、最後まで同じ姿勢でいることがとても苦痛」と訴えています。これは治療体位を維持する際の身体的負担を示唆しており、固定具の調整や工夫によって苦痛を軽減できる可能性があります。看護師が患者の苦痛緩和のために介入を検討する姿勢として適切です。正しくは:この選択肢は正しい説明であるため、修正の必要はありません。選びやすい理由:すぐに解決できない問題かもしれないと感じるかもしれないが、解決に向けた姿勢を示すことが重要。混同注意:具体的な解決策ではないため、より直接的な解決策を求めてしまう。
- 3. 放射線治療の照射時間は、治療効果を最大限に引き出すために、疾患や病状に応じて緻密に計画されています。患者の苦痛を理由に安易に短縮することは治療効果を損なう可能性があり、看護師の一存で主治医に相談する内容としては不適切です。正しくは:「照射時間は治療効果に関わるため、変更は難しいですが、苦痛を和らげる他の方法を検討しましょう」選びやすい理由:患者の苦痛を直接的に解決しようとする姿勢に見える。混同注意:苦痛の原因(姿勢)と直接的な関連がないのに、苦痛そのもの(時間)を解決しようとする発想。
- 4. 放射線治療は、治療計画に基づいて特定の部位に正確に放射線を照射する必要があります。照射中に体位を変更することは、放射線が目的とする部位から外れ、治療効果の低下や周囲の正常組織への不必要な被曝につながるため、原則としてできません。正しくは:「正確な治療のために、照射中は体位を維持していただく必要があります。しかし、苦痛軽減のために他の方法を放射線技師と相談してみます」選びやすい理由:苦痛の訴えに対して、直接的な解決策のように聞こえる。混同注意:治療の安全性や正確性よりも、患者の快適性を優先しようとしてしまう。
国試ポイント
放射線治療を受ける患者の苦痛に対する看護師の適切な対応が問われています。特に、治療の安全性や効果を損なわずに、患者の身体的・精神的苦痛を緩和するための具体的介入について理解しているかが重要です。
混同注意
患者の訴えに対して共感を示すことと、医療行為の原則を理解した上で可能な範囲で解決策を提案することの区別がつきにくい。特に「照射時間を短くする」「体位を変える」といった選択肢は、一見すると患者の苦痛を軽減するように見えるが、治療の根幹に関わるため不適切である点に注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
この問題から、放射線治療における患者の身体的・精神的苦痛への個別的なアセスメント能力、および多職種連携(医師、放射線技師)の重要性を学ぶことができます。また、治療の安全性と効果を損なわずに患者のQOL向上に寄与する具体的な看護介入の選択肢を常に考える視点が養われます。
関連知識
放射線治療を受ける患者への看護では、治療の目的、照射方法、副作用、そしてセルフケアの指導が重要です。特に、皮膚の変化、倦怠感、食欲不振などの副作用への対処、また治療中の体位保持の重要性とその苦痛緩和策について理解しておく必要があります。患者の訴えに対して、共感を示しつつ、現実的かつ治療を阻害しない範囲での介入を検討する能力が求められます。