大規模災害が発生し、被災した住民は自治体が設置した避難所に集まり避難生活を始めた。発災3日、自治体から派遣された看護師は避難所の片隅で涙ぐんでいるAさんへの関わりを始めた。Aさんは「悲しい気持ちが止まりません」と話している。このときのAさんへの看護師の発言で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第112回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
災害直後の悲嘆反応は、喪失体験やストレスに対する自然な反応であり、異常なことではありません。この段階で感情の表出を受け止め、共感的に理解を示すことは、Aさんが自身の感情を正常なものとして認識し、心理的な安定を得る上で極めて重要です。看護師が「異常ではない」と伝えることで、Aさんは孤立感を軽減し、感情を抱くことへの罪悪感から解放され、その後の心理的対処へと進む土台が築かれます。
選択肢ごとの解説
- 1. 災害以外のことを考えるよう促すことは、Aさんの悲しい感情を否定し、無視することにつながります。感情を抑圧させると、かえって心理的負担が増大し、回復を妨げる可能性があります。正しくは:Aさんの悲しい気持ちを受け止め、「悲しい気持ちなのですね」と共感を示す。選びやすい理由:気分転換が効果的な場合もあるという一般的な認識から、早期に気分を変えさせたいという意図で選んでしまうかもしれない。混同注意:適切な気分転換やレクリエーションが有効になる、もう少し落ち着いた段階での介入。
- 2. 「きっと乗り越えられる」という声かけは、Aさんの感情を軽視し、安易な励ましになってしまう可能性があります。現在のAさんは「悲しい気持ちが止まらない」と訴えており、この段階で未来の克服を強調しても、共感を得られず、かえって孤立感を深める可能性があります。正しくは:Aさんの現在の悲しい気持ちを認め、「悲しい気持ちが止まらないのですね」と共感し、傾聴する姿勢を示す。選びやすい理由:励ましは良いことだという一般的な考え方から、相手を元気づけようとして選んでしまうかもしれない。混同注意:被災者が回復過程で具体的な支援や目標設定を必要とする、より回復期に近い段階での介入。
- 3. 正解。Aさんの「悲しい気持ちが止まらない」という訴えに対し、「異常なことではないですよ」と伝えることは、Aさんの感情が自然な反応であることを認め、安心感を与える上で適切です。これにより、Aさんは自身の感情を肯定的に捉え、孤立感を軽減できます。選びやすい理由:特になし。災害急性期の心理的ケアとして最も適切な選択肢である。
- 4. 「みんなが大変」という言葉は、Aさんの個別の苦しみを軽視し、自分の感情を表現してはいけないというプレッシャーを与える可能性があります。また、「元気を出してください」という安易な励ましは、Aさんの感情を受け止めていないため、不適切です。正しくは:Aさんの悲しい気持ちに寄り添い、「大変な状況ですね」と共感を示しながら、個別の感情を尊重する。選びやすい理由:集団の中での一体感を促し、連帯感を持たせることで元気づけたいという意図で選んでしまうかもしれない。混同注意:集団での心理的支援が有効な、もう少し時間が経過した後の介入や、集団の中で支え合うことの重要性を伝える場面。
国試ポイント
災害時の心理的反応と初期介入。災害直後の急性期における被災者の心理状態を理解し、適切な傾聴と共感に基づく声かけができるか。
混同注意
災害急性期の正常な心理反応と、専門的な精神科介入を要する病的な状態の区別。悲嘆反応は正常な範囲であり、安易に精神疾患と結びつけない。
次に同じ論点が出たら
災害直後の被災者の感情表出に対し、その感情を否定せず、受容と共感を示す声かけが適切であるかを判断の軸とする。
関連知識
災害サイクルに応じた看護介入、心理的応急処置(PFA)の原則、PTSDの予防、急性ストレス反応の症状とケア、被災者の感情の段階的変化。