Aさん(87歳、女性)は1人で暮らしている。難聴のため補聴器を使用している。自宅で転倒して痛みで起き上がれなくなり、救急搬送され入院した。搬送先の病院で右大腿骨頸部骨折と診断され、全身麻酔下で人工骨頭置換術を受けた。術後は前腕部に点滴静脈内注射と右大腿の創部に吸引式ドレーンが一本挿入されている。手術直後の検査所見:赤血球410万/μL、白血球7800/μL、Hb 12.0 g/dL、総蛋白6.5 g/dL、アルブミン4.0 g/dL、尿素窒素20 mg/dL、Na145 mEq/L、K 3.8 mEq/L。術後のドレーン出血量は少量である。創部痛に対して非ステロイド性抗炎症薬の坐薬と内服が処方され、手術当日の21時に坐薬を使用した。 術後1日。午前中に看護師がAさんのバイタルサインを測定しているときは眠っていた。昼食後に看護師が訪室すると、Aさんは多弁で、落ち着かない様子がみられた。看護師のAさんへの対応で適切なのはどれか。2つ選べ。
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出典:厚生労働省ホームページ(第114回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3・5番
解説
患者Aさんは術後で、午前中と午後の様子に変化が見られ、多弁で落ち着きがないことからせん妄が疑われます。せん妄の対応では、まず原因を検索し、その除去や環境調整を行うことが重要です。選択肢3の膀胱留置カテーテルは不快感や感染源となり、せん妄の原因となり得るため、その機能確認と不必要であれば抜去を検討することは適切です。選択肢5の補聴器の装着確認は、感覚器の障害が見当識障害や誤解を生み、せん妄を悪化させる因子となり得るため、これも適切な対応です。一方、選択肢1の安易な薬物療法、選択肢2の無理な安静、選択肢4の過度な外部刺激の遮断は、せん妄を悪化させる可能性があり不適切です。
選択肢ごとの解説
- 1. せん妄の原因検索と環境調整が優先されます。薬物療法はあくまで対症療法であり、安易な使用はせん妄を悪化させる可能性があります。正しくは:せん妄の原因を特定し、その上で必要に応じて薬物療法を検討する。選びやすい理由:患者の落ち着きのなさを即座に解消したいという気持ちから、薬物療法を想起しやすい。混同注意:一時的な興奮状態に対する鎮静と、せん妄に対する根本的な介入。
- 2. せん妄の患者は、無理に安静を強いられると状況を理解できず、さらに興奮したり、転倒などの危険な行動につながったりする可能性があります。原因の特定と環境調整が優先されます。正しくは:安全を確保しつつ、患者の訴えを聞き、可能な範囲で落ち着ける環境を提供する。選びやすい理由:患者の落ち着きのなさを安全に管理しようとする一般的な看護介入の一つ。混同注意:安静が必要な他の病態(例:出血リスク)と、せん妄による興奮状態。
- 3. 正解。膀胱留置カテーテルは不快感や尿路感染のリスクとなり、せん妄の原因や増悪因子となることがあります。不必要であれば抜去することで、身体的苦痛の軽減とせん妄の改善が期待できます。また、カテーテルが閉塞して排泄が滞っている場合もせん妄を悪化させることがあるため、機能確認も重要です。
- 4. せん妄の患者にとって、外部からの刺激を完全に遮断することは、かえって状況の理解を妨げ、不安や混乱を増強させる可能性があります。時間や場所の見当識を保つための適切な刺激は必要です。正しくは:過剰な刺激は避けつつ、日付や時間、今いる場所を伝えるなど、見当識を保つための適切な情報を提供する。選びやすい理由:外部からの刺激を減らすことが患者の落ち着きにつながると誤解しやすいため。混同注意:睡眠環境の整備と、せん妄患者に対する過度な遮断。
- 5. 正解。聴覚障害がある患者の場合、補聴器が適切に装着されていないと、周囲の状況を正確に把握できず、不安や混乱が生じ、せん妄の原因や増悪因子となることがあります。感覚器の問題を解消することはせん妄の予防・改善に重要です。
国試ポイント
せん妄の原因と適切な初期対応に関する知識が問われています。身体的苦痛の除去、感覚器の補正、環境調整が重要であることを理解しているかが鍵です。
混同注意
せん妄の患者に対する『刺激の調整』について、過剰な刺激の遮断と適切な刺激の提供のバランスを混同しやすい。また、安易な薬物療法と根本原因へのアプローチを混同しやすい。
次に同じ論点が出たら
同様の問題が出た場合、まず『せん妄の可能性』を疑い、その上で『身体的苦痛の除去』『感覚器障害の補正』『環境調整(過不足ない刺激)』『原因となりうる薬剤の確認』という視点で選択肢を検討する。
関連知識
せん妄の危険因子(高齢、術後、脱水、感染、薬剤、睡眠不足、感覚器障害など)、せん妄の症状(意識障害、見当識障害、幻覚、妄想、感情不安定など)、非薬物療法の重要性(環境調整、傾聴、リオリエンテーション、睡眠リズムの調整など)。