Aさん(63歳、男性)は、右肺癌で化学療法を受けていたが、右腕を動かしたときに上腕から肩にかけて痛みが生じるようになった。検査を行ったところ骨転移が認められ、疼痛の原因と判断された。WHO3段階除痛ラダーに基づいてがん疼痛のコントロールを開始することになった。この時点でAさんに使用する鎮痛薬で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第110回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
WHOがん疼痛治療法は、痛みの程度に応じて段階的に鎮痛薬を選択する原則です。Aさんのケースでは、骨転移による痛みはあるものの、治療開始時点であり、まずは第一段階の非オピオイド鎮痛薬から開始するのが適切とされています。これにより、必要最小限の薬剤で痛みをコントロールし、副作用のリスクを抑えることを目指します。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。WHOがん疼痛治療法では、疼痛の初期段階(軽度疼痛)ではまず非オピオイド鎮痛薬の使用が推奨されます。骨転移による痛みであっても、初回治療としては最も段階の低い薬剤から開始するのが原則です。選びやすい理由:骨転移と聞くと痛みが強い印象があり、より強力な薬剤を想起しがちですが、WHOラダーでは段階的に薬を上げていくのが基本です。混同注意:患者の訴えが強いからといって、すぐに強力なオピオイドを使用するケースと混同しやすいですが、WHOラダーの原則に従う必要があります。
- 2. 弱オピオイド鎮痛薬は、非オピオイド鎮痛薬で効果が不十分な中等度疼痛に対して使用されます。本事例では初回治療の選択肢としては適切ではありません。正しくは:非オピオイド鎮痛薬を使用し、疼痛が改善しない場合に弱オピオイド鎮痛薬の使用を検討します。選びやすい理由:骨転移による痛みは中程度以上であると判断し、選択してしまう可能性があります。混同注意:WHOラダーの第2段階の薬剤であり、がん性疼痛管理の基本的な選択肢の一つであるため、選んでしまいがちです。
- 3. 強オピオイド鎮痛薬は、非オピオイド鎮痛薬や弱オピオイド鎮痛薬で効果が不十分な、重度疼痛に対して使用されます。初回治療としては適切ではありません。正しくは:非オピオイド鎮痛薬や弱オピオイド鎮痛薬を使用しても疼痛が改善しない場合に、強オピオイド鎮痛薬の使用を検討します。選びやすい理由:骨転移による痛みが非常に強いと想定し、最初から強力な薬剤が必要だと誤解してしまう可能性があります。混同注意:モルヒネなどの強オピオイドががん性疼痛治療の中心であるという知識と混同しやすいですが、導入段階が異なります。
- 4. 鎮痛補助薬は、特定の種類の疼痛(神経障害性疼痛など)や、鎮痛薬の効果を補完する目的で使用されます。WHOラダーの各段階において併用されることがありますが、単独で最初の鎮痛薬として選択されることは稀です。特にこのケースでは、まず一般的な疼痛管理から始めるべきです。正しくは:神経障害性疼痛の要素がある場合や、他の鎮痛薬と併用して効果を高める目的で使用します。選びやすい理由:鎮痛補助薬ががん性疼痛管理に重要であるという知識から、選択肢として魅力的だと感じるかもしれません。混同注意:プレガバリンやデュロキセチンなどの神経障害性疼痛治療薬と混同したり、がん性疼痛におけるアジュバントの役割を初期治療と誤解しやすいです。
国試ポイント
この問題は、WHOがん疼痛治療法の段階(疼痛ラダー)の基本的な理解を問うものです。特に、初回治療における薬剤選択の原則が重要となります。痛みの原因が骨転移であっても、ラダーの第一段階から開始する原則を理解しているかがポイントです。
混同注意
骨転移と聞くと痛みが強いイメージがあるため、最初から弱オピオイドや強オピオイドを選択しがちですが、WHOラダーは痛みの程度と薬剤の強さを段階的に上げていくことが基本であることを理解しているかが重要です。
次に同じ論点が出たら
今後同様の論点が出た場合、痛みの初期段階(軽度)では非オピオイド鎮痛薬が第一選択であること、および痛みの程度に応じて段階的に薬剤を上げていくWHOラダーの原則を最も優先して判断します。
関連知識
WHOがん疼痛治療法の3段階ラダー(非オピオイド鎮痛薬 ± 鎮痛補助薬 → 弱オピオイド鎮痛薬 + 非オピオイド鎮痛薬 ± 鎮痛補助薬 → 強オピオイド鎮痛薬 + 非オピオイド鎮痛薬 ± 鎮痛補助薬)、各段階で使用される具体的な薬剤の種類(アセトアミノフェン、NSAIDs、コデイン、トラマドール、モルヒネ、オキシコドンなど)、鎮痛補助薬の種類と適応(ステロイド、抗うつ薬、抗てんかん薬など)。