Aちゃん(11歳、女児)。眼瞼浮腫がみられたため、眼科を受診し治療を受けたが改善しなかった。その後、Aちゃんと母親が下腿の浮腫に気付き眼科の医師に相談したところ、特発性ネフローゼ症候群を疑われたため、小児科のある病院を紹介され受診した。 Aちゃんは排尿回数が減少し、全身に浮腫が認められた。血圧は110/68 mmHgであった。尿検査を行い、尿蛋白4+であった。血液検査は、アルブミン1.3g/dL、総コレステロール350 mg/dL、クレアチニン0.4 mg/dL、Na 130 mEq/L、K 4.5 mEq/Lであった。特発性ネフローゼ症候群と診断され入院した。Aちゃんが摂取を制限する必要があるのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第106回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
特発性ネフローゼ症候群では、尿中への大量の蛋白排泄により血漿膠質浸透圧が低下し、水分が血管外に漏出することで浮腫が生じます。体液量減少によりレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系が活性化され、腎臓でのナトリウムと水の再吸収が亢進し、さらに浮腫を悪化させます。このため、ナトリウム摂取を制限することで、体液貯留と浮腫の悪化を防ぎます。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。ネフローゼ症候群の病態である浮腫の悪化を防ぐため、ナトリウムの摂取を制限することが重要です。Aさんは全身性浮腫があり、尿蛋白陽性、低アルブミン血症(1.3g/dL)、高コレステロール血症(350mg/dL)からネフローゼ症候群と診断されており、ナトリウム制限が必要です。選びやすい理由:症状と検査値からネフローゼ症候群の管理としてナトリウム制限が適切であるため、迷わず選択できます。混同注意:カリウム制限や水分制限など、他の電解質・栄養素の制限
- 2. Aさんの血清K値は4.5mEq/Lであり、正常範囲内です。ネフローゼ症候群でカリウムが問題になることは稀で、むしろ利尿薬(特にループ利尿薬やサイアザイド系利尿薬)の使用により低カリウム血症をきたすことがあるため、通常はカリウム制限は不要であり、場合によっては補充が必要です。正しくは:カリウムは制限する必要はなく、むしろ状態によっては補充の検討が必要な場合があります。選びやすい理由:腎疾患ではカリウム制限がよく行われるため、腎臓に関連する疾患であるネフローゼ症候群でもカリウム制限が必要だと誤解しやすいです。混同注意:慢性腎臓病(CKD)の進行期における高カリウム血症時のカリウム制限。
- 3. Aさんは低アルブミン血症(1.3g/dL)を呈しており、これは尿中への蛋白喪失によるものです。過度な蛋白制限は低アルブミン血症を悪化させ、栄養状態を低下させるリスクがあります。ネフローゼ症候群では、尿中への蛋白喪失量に応じて、やや多めの蛋白摂取が推奨されることもあります。腎機能が著しく低下している場合は蛋白制限が必要となることもありますが、Aさんのクレアチニンは0.4mg/dLと正常範囲であり、腎機能低下は認められません。正しくは:適切な量の蛋白質を摂取する必要があり、過度な制限は避けるべきです。むしろ低アルブミン血症の改善のため、必要に応じて推奨されることもあります。選びやすい理由:腎臓病では蛋白制限がよく行われるため、腎臓に関連する疾患であるネフローゼ症候群でも蛋白制限が必要だと誤解しやすいです。混同注意:慢性腎臓病(CKD)の進行期における、腎臓への負担を軽減するための蛋白制限。
- 4. Aさんには全身性のむくみが見られますが、水分制限は病状(低アルブミン血症による血管内脱水)を悪化させる可能性があり、通常は行いません。水分摂取は個々の患者の状態に応じて調整されますが、厳格な水分制限は低アルブミン血症による有効循環血液量減少を助長し、腎血流低下や急性腎不全のリスクを高めることがあります。ナトリウム制限が適切に行われれば、水分貯留も改善されることが多いです。正しくは:通常は厳格な水分制限は行わず、個々の患者の尿量や浮腫の程度に応じて調整します。過度な制限は避けるべきです。選びやすい理由:むくみがあるため、水分を制限すればむくみが改善すると考えやすいです。また、心不全や腎不全など他の浮腫を伴う病態では水分制限が行われるため、混同しやすいです。混同注意:心不全や腎不全における厳格な水分制限。
- 5. Aさんのリンに関する検査値は示されておらず、ネフローゼ症候群においてリン制限が必要となることは稀です。リン制限は主に末期腎不全で高リン血症を呈する場合に必要となりますが、Aさんのクレアチニンは0.4mg/dLと正常範囲であり、腎機能低下は認められません。正しくは:リンは制限する必要はありません。リン制限は腎機能低下による高リン血症の場合に考慮されます。選びやすい理由:腎疾患ではリン制限がよく行われるため、腎臓に関連する疾患であるネフローゼ症候群でもリン制限が必要だと誤解しやすいです。混同注意:慢性腎臓病(CKD)の進行期における高リン血症時のリン制限。
国試ポイント
ネフローゼ症候群における食事療法、特にナトリウム制限の必要性と、その病態生理学的根拠を理解すること。
混同注意
ネフローゼ症候群におけるナトリウム制限と、腎不全におけるカリウム制限やタンパク質制限との違い。ネフローゼ症候群では、主に浮腫管理のためナトリウムが制限されますが、腎機能が著しく低下していない限り、カリウムやタンパク質は通常の摂取量を維持するか、病態に応じて調整されます。
次に同じ論点が出たら
患者の浮腫の程度、血圧、尿量、電解質バランス(特に血清Na値)、および腎機能(eGFRやクレアチニン値)を評価し、ナトリウム制限の必要性と程度を判断します。また、利尿薬の使用状況も考慮します。
関連知識
ネフローゼ症候群の診断基準(大量蛋白尿、低アルブミン血症、高コレステロール血症、浮腫)。治療の基本はステロイドや免疫抑制剤、対症療法として利尿薬、降圧薬、脂質異常症治療薬、抗凝固薬など。食事療法では、塩分制限の他に、低コレステロール食、適切なタンパク質摂取(過剰制限は避ける)、十分なエネルギー摂取が推奨されます。