大型の台風が直撃するという予報を受けて、午前9時、病院では災害対策本部が立ち上がった。また、病院の所在する市から避難所への看護師派遣の要請を受け、対応することになった。 この台風による大雨の影響で、大規模な土砂災害が発生した。病院から派遣されて避難所内を巡回していた看護師は、元気がないCさん(66歳、女性)のことが気になり、毎日声をかけていた。発災3日目、Cさんは避難所内を巡回していた看護師を呼び止めて話をした。Cさんは、土砂災害があったときに娘と自宅にいたが、Cさんが先に屋外に避難したことを悔やんでいた。「娘の行方がまだ分からない。静かになると、あのときのことを思い出して涙が止まらなくなる」と悲しんでいる。このときの看護師のCさんへの対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第115回看護師国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
災害後の避難生活において、精神的な苦痛を抱えるCさんに対し、まずは基本的な生活状況(睡眠・食事)を把握することが重要です。これは、Cさんの身体的・精神的な健康状態をアセスメントし、今後の支援計画を立てる上での基盤となります。精神的な問題が顕著な場合でも、身体の健康維持は回復の重要な要素です。睡眠不足や栄養状態の悪化は、精神状態をさらに悪化させる可能性があるため、看護師として最初に介入すべき点の一つです。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。災害後のストレスや悲しみは、心身に大きな影響を及ぼします。食欲不振や睡眠障害はよく見られる症状であり、これらはCさんの健康状態を評価し、適切なケアを提供するための重要な情報源となります。特にCさんのように精神的に不安定な状況では、身体的な側面からのアセスメントが不可欠です。選びやすい理由:Cさんの精神的な苦痛が表出しているため、精神的な側面への介入を急ぎたくなるかもしれませんが、まずは基本的な生活状況の把握が重要です。混同注意:精神的な苦痛に直接働きかけるアプローチと混同しやすいが、身体的な健康維持は精神的安定の基盤となる。
- 2. 災害で家族の安否が不明な状況で、悲しんでいる人に「忘れる」ように促すのは、その感情を否定し、Cさんの苦しみを理解していない態度と受け取られかねません。これはCさんの感情を抑圧させ、信頼関係を損なう不適切な対応です。正しくは:Cさんの感情を傾聴し、共感を示す。選びやすい理由:悲しみから解放してあげたいという気持ちから、早く立ち直ってほしいと考えてしまう。混同注意:悲嘆のプロセスを理解せずに、安易にポジティブな方向へ誘導しようとすること。
- 3. 不確実な状況で安易に「見つかる」と断言して励ますことは、Cさんに誤った期待を抱かせ、もし娘さんが見つからなかった場合に、より深い絶望感を与える可能性があります。また、これは根拠のない発言であり、専門職としての信頼性を損ないます。安易な励ましは避けるべきです。正しくは:Cさんの不安な気持ちに寄り添い、現在の状況や情報提供のプロセスについて説明する。選びやすい理由:Cさんを元気づけたいという善意から、希望的な言葉をかけてしまう。混同注意:共感と希望的観測の区別がつかないこと。災害時の情報は不確実であることを認識する必要がある。
- 4. Cさんは現在、深い悲嘆と後悔の念に囚われており、娘さんの安否が不明な状況です。このような時に「気分転換のために新しいことを始める」という提案は、Cさんの現在の精神状態と感情を無視したものであり、Cさんの苦痛をさらに増大させる可能性があります。まずは感情の表出を受け止めることが重要です。正しくは:Cさんの感情に寄り添い、傾聴する姿勢を示す。その上で、Cさん自身が望む形でストレス対処法を探る。選びやすい理由:悲しみから注意をそらすことが有効だと考えてしまうが、時期尚早であり、Cさんのニーズに合わない。混同注意:一般的なストレス解消法と、悲嘆過程にある人へのケアを混同すること。
国試ポイント
災害看護における精神的ケアの初期段階でのアセスメント能力が問われています。特に、被災者の身体的・精神的なニーズを統合的に捉え、まずどの側面から介入すべきかを判断する能力が重要です。
混同注意
災害後の精神的苦痛に対する直接的な言葉かけ(励ましや忘れることを促す)と、基盤となる身体的ケアのアセスメントとの優先順位で迷いやすい。精神的な問題が表面化していても、その基盤にある身体的健康状態の維持が重要であるという視点を見落としがち。
次に同じ論点が出たら
Cさんの睡眠と食事の状況を把握した後、必要に応じて具体的な介入(例:睡眠導入を促す環境調整、食事提供の検討、精神科医やカウンセラーへの連携など)を検討します。また、Cさんの悲嘆の感情を傾聴し、共感を示す継続的な精神的サポートも不可欠です。
関連知識
災害時の身体的・精神的健康問題、悲嘆のプロセスと看護介入、避難所の健康管理、PTSDの初期症状とケア、危機介入の原則。