立位姿勢が安定しているのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
立位姿勢の安定性において、重心線と関節の位置関係は非常に重要です。重心線が膝関節中心のわずかに前方を通ることで、膝関節は伸展方向へのモーメントを受け、筋肉の大きな力を必要とせずに膝関節の伸展位を保つことができます。これにより、姿勢が安定しやすくなります。このメカニズムは、重力を使って関節をロックし、エネルギー消費を抑えながら安定性を維持する身体の巧みな生体力学的特徴の一つです。
選択肢ごとの解説
- 1. 支持基底面が狭いと、重心が支持基底面から逸脱しやすくなり、バランスを崩しやすいため、姿勢の安定性は低下します。正しくは:支持基底面が広い選びやすい理由:立位での身体の柔軟性や素早い動作を可能にするために、あえて支持基底面を狭くする状況もありますが、一般的な「安定性」の定義においては、支持基底面が広い方が安定します。混同注意:静止安定性と動的安定性。
- 2. 重心の位置が高いと、わずかな重心の移動でもバランスを崩しやすくなり、支持基底面からの逸脱リスクが高まるため、姿勢の安定性は低下します。正しくは:重心の位置が低い選びやすい理由:視点が高い方が見晴らしが良いなどのイメージから、高い位置が良いと錯覚する可能性がありますが、物理的な安定性とは異なります。混同注意:身長の高さと重心の高さが直結すると誤解し、背が高い人ほど不安定という認識と混同する可能性があります。
- 3. 正解。重心線が膝関節中心の前方を通ることで、膝関節には伸展方向へのモーメント(力が回転軸を中心に作用する効果)が生じ、関節をロックする力が働きます。これにより、筋肉の活動が少なくても膝関節は伸展位で安定し、立位姿勢が維持されやすくなります。選びやすい理由:特にひっかけの要素は少なく、生体力学の基礎知識を問うものです。膝関節の解剖学的位置関係と力学的な作用を理解していれば正答できます。混同注意:重心線が膝関節中心の『後方』を通過すると、膝関節には屈曲方向のモーメントが生じ、膝折れしやすくなり不安定になります。この前後関係を混同しやすいです。
- 4. 床と足底の摩擦抵抗が小さいと、体が滑りやすくなり、姿勢を維持するための十分な反力を得られなくなるため、安定性は著しく低下します。正しくは:床と足底の接地面での摩擦抵抗が大きい選びやすい理由:日常生活で滑りやすい床を経験していれば、直感的に安定性が低いと判断しやすい選択肢です。ただし、摩擦抵抗の具体的な役割を理解していないと迷う可能性はあります。混同注意:摩擦抵抗の大小と安定性の関係。
- 5. 重心線が支持基底面の中心から遠い位置にあると、支持基底面の縁に近づき、重心が支持基底面から逸脱するまでの余裕が少なくなるため、バランスを崩しやすくなり、姿勢の安定性は低下します。正しくは:重心線の位置が支持基底面の中心に近い選びやすい理由:重心線が常に一点に固定されているわけではなく、わずかに動くことが正常であるため、動的なバランスを考慮しすぎて誤解する可能性があります。しかし、安定性を最大化するには中心に近い方が有利です。混同注意:重心線の『移動範囲』と『平均的な位置』。
国試ポイント
作業療法士国家試験では、人の基本的な動作における生体力学的原理の理解が頻繁に問われます。本問題は、立位姿勢の安定性を決定する主要な要因(支持基底面、重心の高さ、重心線と関節の関係、摩擦抵抗など)について、正確な知識があるかを評価するものです。特に、重心線と各関節の関係は、姿勢制御を理解する上で非常に重要なポイントであり、解剖学的な位置と力学的な作用を結びつけて考える能力が求められます。
混同注意
支持基底面の広さと安定性、重心の高さと安定性の関係、そして重心線が関節のどの位置を通ると安定するか、といった生体力学の基礎概念を混同しやすいです。また、静的安定性と動的安定性の違いも理解しておく必要があります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が出題される場合、特定の疾患(例:パーキンソン病、脳卒中、脊髄損傷など)における姿勢制御の問題点や、不安定な状況下(例:揺れる電車内、不整地歩行時など)での姿勢安定化メカニズムについて問われる可能性があります。また、立位から座位への移行動作や、移乗動作などの複合的な動作における重心移動と支持基底面の変化についても問われるかもしれません。
関連知識
人体の静的・動的安定性、支持基底面と重心の関係、重力とモーメントアームの概念、各関節(足関節、股関節、脊柱など)における重心線と安定性の関係、そして姿勢制御に関わる神経生理学的要因(視覚、前庭覚、固有受容覚など)。