25歳の女性。会社員。細かいことにこだわる性格。3年前から「自分の手が汚れている」と思い、繰り返し手を洗うようになった。最近は「大切なものを捨てたのではないか」と思うようにもなり、ゴミ箱を3時間かけて点検している。仕事に遅刻するようになったため、精神科を受診した。この患者にみられるのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
強迫性障害の診断基準の一つに、成人の場合「不合理であるという認識がある」ことが挙げられます。患者は自分の強迫観念や強迫行為が非現実的または過剰であると理解しているにもかかわらず、その行為を止めることができません。本症例の女性は、仕事に影響が出ているにもかかわらず強迫行為を継続していることから、不合理さを自覚しているが故に苦悩している状況と解釈できます。
選択肢ごとの解説
- 1. この症例は、強迫観念(手が汚れている、大切な物を捨てた)と強迫行為(手洗い、ゴミ箱の確認)を示しており、他者の視線に対する恐怖とは直接関係ありません。正しくは:「強迫観念や強迫行為が見られる」選びやすい理由:特定の恐怖症として見られなくもないが、強迫性障害の診断基準には当てはまらない。混同注意:社交不安症の症状の一つである「視線恐怖」や、自己視線恐怖といった特殊な恐怖症と混同しやすい。
- 2. 正解。強迫性障害の患者は、自分の強迫観念や強迫行為が、現実離れしている、あるいは過剰であると自覚していることが多いです。しかし、その行為を止められないという特徴があります。本症例の女性も、不合理だと感じつつも手を洗いやゴミ箱の確認を止められず、仕事に影響が出ていることから、この自覚があると推測されます。混同注意:精神病性障害における「病識の欠如」と混同されやすい。強迫性障害では病識は保たれているのが一般的です。
- 3. フラッシュバックは主に心的外傷後ストレス障害(PTSD)で見られる症状であり、この症例で述べられている強迫観念や強迫行為とは関連がありません。正しくは:「強迫観念や強迫行為が見られる」選びやすい理由:過去の出来事に対する「こだわる」という点で関連があるように感じるかもしれないが、その本質は異なる。混同注意:強迫観念と、心的外傷体験の再体験としてのフラッシュバックを混同しやすい。強迫観念は不安を伴う侵入的思考であり、フラッシュバックは過去のトラウマ体験が五感を通して現実のように再体験されるものです。
- 4. これは分離不安や依存性パーソナリティ障害、あるいはその他の不安障害の一部で見られる可能性のある症状ですが、本症例の強迫性障害の中核症状とは異なります。正しくは:「強迫観念や強迫行為が見られる」選びやすい理由:不安症全般でみられる可能性のある恐怖の一つと誤解するかもしれない。混同注意:全般性不安障害やパニック障害、分離不安障害など、他の不安障害の症状と混同しやすい。
- 5. 死への恐怖はパニック障害や全般性不安障害、特定の恐怖症(死恐怖症)などで見られる症状ですが、この症例で示されている「手が汚れている」「大切なものを捨てた」といった強迫観念とは異なります。正しくは:「強迫観念や強迫行為が見られる」選びやすい理由:全般的な不安症状の一つとして関連付けてしまうかもしれないが、本症例の核となる症状とは異なる。混同注意:パニック障害における「死ぬのではないかという恐怖」や、全般性不安障害における漠然とした不安と混同しやすい。
国試ポイント
強迫性障害(OCD)の主要な症状(強迫観念と強迫行為)とその特徴、特に「病識の有無」について問う問題です。他の精神疾患の代表的な症状との鑑別も重要になります。
混同注意
他の不安障害(パニック障害、全般性不安障害、社会不安障害など)における様々な恐怖や不安、PTSDのフラッシュバック、統合失調症の妄想(病識がない点が異なる)などと混同しやすい。特に、強迫性障害の病識の有無は重要な鑑別点となります。
次に同じ論点が出たら
次に同様の論点が問われる場合、強迫性障害の具体的な治療法(特に作業療法士が関わる部分)や、小児の強迫性障害(成人とは異なり病識が乏しい場合がある)に関する内容が問われる可能性があります。
関連知識
強迫性障害の診断基準(DSM-5)、強迫観念と強迫行為の具体例(汚染、確認、対称性、ため込みなど)、治療法(薬物療法:SSRI、精神療法:曝露反応妨害法)。