21歳の女性。統合失調症。「誰かに監視されている」と言い、近隣でのトラブルが続いたため精神科に入院となった。入院後、症状は軽減したが、無為の状態が続いており、入院3週目に作業療法が開始された。作業活動中に、「いつも誰かに見られているから、作業活動をやめたい」と申し出た。作業療法士の対応で最も適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
統合失調症の患者が妄想を訴えた場合、その妄想の内容を直接否定したり、深入りして聴取したりすることは避けるべきです。妄想は患者にとって現実であり、否定することで信頼関係を損ねたり、患者を混乱させたりする可能性があります。また、深入りすることは妄想を強化する恐れがあります。最も適切な対応は、妄想から意識をそらし、現実の活動に注意を向けさせることです。このケースでは、入院後症状が軽減し、無為の状態への介入として作業療法が開始されていることから、作業活動への集中を促すことで、現実検討能力の維持・向上を図り、活動を継続させることが治療目標に合致します。
選択肢ごとの解説
- 1. 患者の訴えは妄想によるものであり、特定の活動種目が原因である可能性は低い。活動種目を変更しても根本的な問題解決にはならず、むしろ妄想に囚われている状態を強化してしまう恐れがあるため、この時点での変更は適切ではありません。正しくは:まずは作業への集中を促し、妄想から意識をそらすよう支援します。活動変更は、集中を促す介入後も強い不適応が続く場合に検討すべきです。選びやすい理由:活動に問題があると感じたり、患者の意欲低下を懸念したりする際に、活動変更が手っ取り早い解決策のように見えることがあります。混同注意:意欲低下や集中力低下が、実際に活動内容の不適合による場合と混同しやすいですが、本件は妄想が主因です。
- 2. 作業療法は、症状が軽減し無為の状態が続いている患者の活動の維持・促進を目的として導入されています。妄想の訴えがあったからといってすぐに中止することは、患者の活動機会を奪い、無為の状態を助長する可能性が高く、治療目標に反します。また、妄想を肯定する姿勢と捉えられかねません。正しくは:作業療法は継続し、妄想にとらわれず活動に集中できるよう、環境調整や適切な声かけを行います。選びやすい理由:患者の苦痛を軽減したいという思いから、負担を減らす選択肢として考えがちです。混同注意:患者の精神状態が極めて不安定で、OT継続が危険を伴うような緊急事態と混同しやすいですが、このケースでは急性期症状は軽減しています。
- 3. 正解。統合失調症患者の妄想は、現実と非現実の区別が曖昧になっている状態です。妄想の内容を直接否定したり、深入りして聴取したりすることは避け、現実の活動に注意を向けるよう促すことが重要です。作業活動への集中は、妄想から意識をそらし、現実検討能力を養う効果が期待できます。患者は急性期症状が軽減しており、無為の状態への介入としてOTが開始されていることから、活動の継続が治療目標に合致します。
- 4. 妄想を詳細に聴き出すことは、患者の妄想をさらに強化したり、妄想の世界に引き込まれたりする危険性があるため避けるべきです。作業療法の場では、妄想の内容に深入りせず、現実的な活動に意識を向ける対応が基本となります。報告は重要ですが、活動中ではなく別途時間を設けるか、簡潔に状況を伝えれば良いです。正しくは:妄想の内容に深入りせず、患者の訴えがあったという事実と、それに対する作業療法士の対応を記録し、必要に応じて主治医に簡潔に報告します。詳細な聴取は、精神科医や専門の看護師が行うべきです。選びやすい理由:情報収集と多職種連携の重要性から、詳細な聴取が必要だと考えてしまうことがあります。混同注意:患者の気分や体調不良など、現実的な訴えと混同しやすいですが、妄想的訴えに対しては、対応の仕方が異なります。
- 5. 妄想を正面から否定することは、患者との信頼関係を損ねるだけでなく、患者を混乱させたり、反発を招いたりする可能性があります。妄想は患者にとって現実であるため、それを否定しても患者の考えは変わらないことが多いです。正しくは:妄想を否定せず、受容的な態度で接しつつ、現実の活動に意識を向けるよう促します。選びやすい理由:患者が現実を誤解している状況を正したいという心理が働くため、選びやすい選択肢です。混同注意:現実検討能力が保たれているが、事実を誤認している場合(例:記憶違い)と混同しやすいですが、妄想は思考障害の一種であり、単純な誤解とは異なります。
国試ポイント
精神疾患を持つ患者、特に統合失調症患者の症状(妄想、幻覚、意欲低下など)に対する作業療法士の適切な対応が問われる問題です。妄想への対応の基本原則(否定しない、深入りしない、現実への誘導)と、作業療法介入の目的(活動性の維持・向上、現実検討能力の促進)を理解しているかが重要となります。
混同注意
患者の訴えが妄想ではなく、現実的な不満や不安である場合(例:本当に他の患者から見られている気がする、活動が難しすぎる、疲れているなど)と、妄想性障害やうつ病など他の精神疾患での症状への対応と混同しやすいです。また、患者の精神状態が非常に不安定で、興奮状態にある場合や、自傷他害のリスクがある場合の対応とは異なります。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、以下の点に注目して判断しましょう。1. 患者の精神状態の段階(急性期か、回復期か、維持期か)。2. 訴えの内容がどの症状に由来するものか(妄想、幻覚、意欲低下、不安など)。3. 作業療法の具体的な目的(現実検討能力の向上、対人関係の改善、生活習慣の再獲得など)。4. 各選択肢が患者の症状や治療目標に対してどのような影響を与えるか、特に「否定する」「中止する」「深入りする」といった選択肢は原則避けるべき対応であることが多いです。
関連知識
統合失調症の主な症状には、陽性症状(妄想、幻覚)と陰性症状(意欲低下、感情鈍麻、無為)があります。作業療法では、これらの症状を理解し、患者の残存機能に着目して現実的な活動を通して社会適応能力の向上を目指します。妄想への対応の基本は、妄想を否定せず、内容に深入りせず、患者の感情を受容しつつ、現実的な活動や対話に焦点を当てることです。