7歳の男児。学校ではじっと座って授業を受けることが苦手で、授業中に立ち上がったり、他児に話しかけたりすることが多い。教科書や提出物の忘れ物も多い。気に入らないことがあると、すぐに感情的になり暴れる行動があり、他児とトラブルを繰り返している。母親に付き添われて精神科を受診し、外来作業療法が開始された。この男児への対応で適切なのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第61回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は3番
解説
ADHDの特性を持つ7歳男児に対し、望ましい行動を具体的に褒めることは、行動変容を促すための行動療法的アプローチとして非常に有効です。ポジティブなフィードバックは自己肯定感を高め、適切な行動の定着を助けます。
選択肢ごとの解説
- 1. 言語的な指導だけでは、不注意や衝動性が高いADHD児には効果が限定的です。具体例や視覚的な手がかり、行動のきっかけとなる環境調整を併用することが重要です。正しくは:言語的な指導と併せて、視覚的な手がかりや具体的な行動の見本を示したり、行動のきっかけを促す環境調整を行ったりする。選びやすい理由:一般的な子どものしつけや教育では言語的な指導が中心となるため、つい選んでしまいがちです。しかしADHDの特性を考慮すると、それだけでは不十分です。混同注意:定型発達児への一般的な教育アプローチと、ADHD児への個別化されたアプローチの混同。
- 2. 集団活動はソーシャルスキルの学習機会であり、完全に避けるべきではありません。男児は「他の子供たちとのトラブルが絶えない」状況ですが、適切な支援(構造化された活動、役割の付与、見守り)があれば集団での活動から多くのことを学べます。正しくは:集団での活動には、構造化された環境で少人数から段階的に参加させ、トラブルを未然に防ぐための支援や適切な介入を行う。選びやすい理由:トラブルが多い状況から、集団活動を避けることで問題が解決すると考えやすいですが、これは長期的な視点での成長機会を奪うことになります。混同注意:問題行動の回避と、ソーシャルスキルの発達機会の確保の混同。一時の問題回避が最善策だと考えがち。
- 3. 正解。7歳の男児が「落ち着いて座っていられず」「教科書や提出物を忘れがち」といったADHDの特性を示しており、さらに「感情的になり暴れる」という行動が見られます。このような状況で望ましい行動(例えば、指示通り座る、忘れ物をしない、感情を適切に表現する)ができた際に、具体的にその行動を褒めることは、行動療法においてポジティブな強化となり、その行動の頻度を高める効果があります。これは行動の変容を促す上で最も効果的なアプローチの一つです。選びやすい理由:一般的な子育てや教育においても褒めることは重要ですが、ADHD児に対しては特に「具体的」に褒めることが有効であり、その重要性を見落とされがちです。混同注意:単なる精神論的な褒めることと、行動療法に基づいた具体的な行動への肯定的強化の区別。
- 4. ADHD児への対応においては、保護者の理解と介入が非常に重要です。特に「感情的になり暴れる」行動があるため、ペアレントトレーニングなどを通じた保護者への支援は不可欠であり、介入を最小限にするのは適切ではありません。正しくは:保護者と密に連携し、家庭での対応方法(ペアレントトレーニングなど)を共有・指導することで、一貫した支援体制を築く。選びやすい理由:子どもの自律性を尊重するという考え方から、保護者の介入を減らすことが良いと誤解しやすいですが、ADHD児の特性を考慮すると適切な支援なしでは困難です。混同注意:子どもの自律性の尊重と、発達特性を持つ子どもへの必要な保護者支援の混同。
- 5. 不注意特性を持つADHD児に対して、作業の手順を一度に全て伝えると、情報処理が追いつかず、混乱したり忘れてしまったりする可能性が高いです。手順は細かく分け、一つずつ確認しながら進める方が効果的です。正しくは:作業の手順は、一度に一つずつ、短く具体的に伝える。必要に応じて視覚的な手がかり(絵カードなど)も用いる。選びやすい理由:定型発達の児童への一般的な指示方法として、一度に伝えることが多いからですが、ADHDの不注意特性には配慮が必要です。混同注意:定型発達児への指示方法と、ADHD児への構造化された指示方法の混同。
国試ポイント
ADHDの特性と、それに対する具体的な行動療法、環境調整、多職種連携による支援の原則を理解しているか。
混同注意
単なるしつけ不足と、神経発達症に起因する行動特性との区別。衝動性や不注意を本人の意図的な問題行動と捉えがちだが、脳機能の特性によるものである。
次に同じ論点が出たら
ADHD児への介入問題が出た場合、まず行動療法的アプローチ(肯定的強化、環境調整)が選択肢にあるか、次に多職種連携や保護者支援の視点が含まれているかを確認する。
関連知識
ADHDの診断基準(DSM-5)、薬物療法(メチルフェニデート、アトモキセチンなど)、感覚統合療法、ソーシャルスキルトレーニング(SST)、ペアレントトレーニング。