50歳の男性。1年前より物忘れのために仕事で失敗が認められるようになった。また、通勤中道に迷うようになったため、3か月前に退職。精神科病院でAlzheimer型認知症の診断を受け、精神科作業療法に通うこととなった。この患者の症状を評価する尺度で最も適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は1番
解説
アルツハイマー型認知症患者に見られる記憶障害以外の行動・心理症状(BPSD)を評価する尺度として、NPIが最も適切である。事例の患者は物忘れだけでなく、道に迷う、仕事での失敗、退職といった状況から、見当識障害、実行機能障害、さらにはそれに伴う意欲低下や焦燥感などのBPSDが示唆される。NPIはこれらのBPSDを網羅的に評価し、作業療法における介入計画の立案や効果判定に役立つ。
選択肢ごとの解説
- 1. 正解。NPIは、認知症患者に見られる行動・心理症状(BPSD)の評価に特化した尺度です。本事例の患者は、物忘れだけでなく、道に迷う、仕事での失敗、退職といった状況から、見当識障害や実行機能障害、さらにはそれに伴う意欲低下や活動性の変化などのBPSDが生じている可能性が高く、これらの症状を包括的に評価するのに最も適しています。
- 2. PANSSは主に統合失調症の陽性症状(幻覚、妄想など)と陰性症状(感情鈍麻、意欲低下など)を評価するために用いられる尺度であり、アルツハイマー型認知症患者の行動・心理症状の評価には適していません。正しくは:主に統合失調症患者の陽性症状および陰性症状を評価する際に用いられます。選びやすい理由:精神疾患の評価尺度として広範に知られているため、一般的な知識として選んでしまう可能性があります。混同注意:認知症患者の行動・心理症状(BPSD)と、統合失調症の陽性・陰性症状とを混同している可能性があります。
- 3. RASは、主に脳損傷後の患者の地域社会への再統合の程度や、活動・参加レベルを評価するための尺度です。本事例の患者の認知機能低下に伴う「症状」を直接評価するものではありません。正しくは:主に脳損傷などにより地域生活への再統合を目指す患者の活動や社会参加の程度を評価する際に用いられます。選びやすい理由:患者が退職し生活の変化があるため、社会適応を評価する尺度が必要だと誤解するかもしれません。混同注意:患者の機能障害そのものの評価と、その結果としての社会生活への影響評価を混同している可能性があります。
- 4. SANSは統合失調症の陰性症状(感情鈍麻、思考の貧困、意欲の欠如など)を詳細に評価するための尺度であり、アルツハイマー型認知症の行動・心理症状の評価には適切ではありません。正しくは:主に統合失調症患者の陰性症状を詳細に評価する際に用いられます。選びやすい理由:患者が退職するなど意欲低下を示唆する状況に見えるため、陰性症状の評価が必要だと考えるかもしれません。混同注意:アルツハイマー型認知症における意欲低下や活動性低下と、統合失調症の陰性症状を混同している可能性があります。
- 5. SMSFは、主に知的障害児・者の社会性の発達レベルや適応行動を家族の視点から評価する尺度です。アルツハイマー型認知症の成人患者の症状評価には適していません。正しくは:主に知的障害を持つ児童や成人における社会性や適応行動を家族から評価する際に用いられます。選びやすい理由:患者の社会生活の変化に着目し、社会性に関する尺度として誤って選んでしまう可能性があります。混同注意:成人の認知症における社会性の変化と、知的障害における社会性の発達評価を混同している可能性があります。
国試ポイント
認知症患者の行動・心理症状(BPSD)を評価する主要な尺度とその適用疾患を理解しているか問われています。特にNPI、MMSE、HDS-Rなど、認知症関連の評価尺度は頻出であり、他の精神疾患(統合失調症など)や身体疾患(脳損傷など)の評価尺度との区別が重要です。
混同注意
認知機能全体を評価するMMSEやHDS-Rと、BPSDを評価するNPIの違い。また、精神科領域の様々な評価尺度の適用疾患が混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
次に同じ論点が出た場合、まず設問が「認知症患者」か、特に「BPSD」の評価を求めているかを確認します。その上で、選択肢にある尺度一つ一つがどの疾患の、どのような側面を評価するものなのかを正確に判断します。
関連知識
NPIの他に、MMSE(Mini-Mental State Examination)やHDS-R(長谷川式簡易知能評価スケール)は全般的な認知機能評価に用いられます。ADAS-cog(Alzheimer's Disease Assessment Scale-cognitive subscale)はアルツハイマー病の認知機能変化を詳細に評価します。Dementia Behavior Disturbance Scale (DBDS)などもBPSD評価に用いられることがあります。BPSDの具体例(徘徊、妄想、興奮、無気力、不眠など)も理解しておく必要があります。