30歳の女性。事務職。元来仕事熱心で上司の信頼が厚かった。指導していた新人の部下が突然退職し、自分の指導方針が誤っていたためではないかと自責の念にかられた。その後、抑うつ気分、意欲低下、食欲低下および睡眠障害が出現し、仕事上のミスが増えたため、精神科を受診した。うつ病と診断され、希死念慮も認められたため入院となった。入院2週目に作業療法が開始された。作業療法開始時に収集すべき情報で適切でないのはどれか。
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出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は5番
解説
うつ病で入院中の患者さん、特に希死念慮を伴う重症例の場合、入院初期の作業療法では、まずは患者さんの心身の安定を図り、基本的な生活リズムの再構築、意欲の回復、自己効力感の向上を目指します。復職は重要な目標となり得ますが、具体的な時期に関する問いかけは、この段階では患者さんに過度なプレッシャーを与え、かえって負担となる可能性があります。復職に関する情報は、症状が安定し、日常生活動作や対人交流能力がある程度回復した後、段階的に収集・検討すべき情報です。
選択肢ごとの解説
- 1. うつ病患者は睡眠障害を抱えていることが多く、これは患者さんの現在の状態や日中の活動レベルに大きく影響します。適切な介入計画を立てる上で、初期段階で把握すべき重要な情報です。
- 2. うつ病による意欲低下は、日中の活動量の減少やパターン変化に直結します。患者さんがどのように時間を使っているかを知ることは、作業療法の目標設定や活動提供の基礎となります。
- 3. 患者さんが自身の病気(うつ病)をどのように捉え、どの程度理解しているかを知ることは、作業療法士が患者さんとの信頼関係を築き、病気に関する教育やセルフケア指導を行う上で不可欠です。
- 4. うつ病では身体的な疲労感や倦怠感がしばしば伴います。患者さんの疲労度を把握することは、作業活動の負荷量を調整し、無理なく治療を進める上で非常に重要です。
- 5. 正解。入院2週目で希死念慮も認められるような重度のうつ病患者の場合、作業療法の初期段階ではまず症状の安定化、基本的な生活リズムの確立、そして活動への意欲向上に焦点を当てるべきです。復職に関する具体的な時期の検討は、患者さんの状態が回復し、症状が安定してから進めるべき課題であり、初期の情報収集としては時期尚早で、かえって患者さんにプレッシャーを与える可能性があります。正しくは:患者さんの状態が回復し、症状が安定した後の段階で、復職への意向や時期について話し合うことが適切です。選びやすい理由:患者さんが事務職であり、仕事熱心だったという情報から、復職への関心が高いと推測され、早期に確認すべき情報だと誤解する可能性があります。しかし、現在の重症度と治療段階を考慮すると不適切です。混同注意:患者さんの職種(事務職)と復職支援の重要性とは混同しやすいです。復職支援は重要ですが、その開始時期や内容が患者の病状によって変わることを理解する必要があります。
国試ポイント
作業療法の初期評価において、患者の病状の重症度や治療段階に応じた適切な情報収集の優先順位を判断できるかが問われています。特に精神科領域では、患者に不必要な負担をかけない配慮が重要です。
混同注意
患者の職歴や仕事への意欲自体は確認すべき情報ですが、「具体的な復職時期」という詳細かつ時間軸を伴う質問が、初期段階で不適切であるという点と混同しやすいです。
次に同じ論点が出たら
同様の論点が問われた場合、患者の診断名、現在の病状の重症度、入院期間、治療フェーズ(急性期、回復期、維持期)をまず確認し、そのフェーズで最も優先されるべき介入や評価項目は何かを判断します。特に「適切なのはどれか」「不適切なのはどれか」という形式の問題では、各選択肢の時期が適切かどうかがポイントになります。
関連知識
うつ病の治療段階(急性期、回復期、維持期)、作業療法の評価プロセス、作業機能障害に対する介入、就労支援の段階的アプローチ、患者中心のケア、精神科における治療的関係の構築。