60歳の女性。うつ病。半年前から家事はできず横になって過ごすことが増えた。最近、悲哀感や不安感が強くなり夫に付き添われ精神科を受診したところ、不安の軽減と活動性の向上を目的に外来作業療法が開始された。この患者の評価に使用する非自記式の尺度で適切なのはどれか。
選択肢をタップすると答えと解説が表示されます
出典:厚生労働省ホームページ(第60回作業療法士国家試験の問題および正答)。公共データ利用規約(第1.0版)に基づき利用。問題文・選択肢は公式の問題冊子のとおり掲載しています(文字の体裁を一部整えています)。解説は medimichi が作成したものです。
正解は2番
解説
ハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)は、うつ病の重症度を医療専門家が面接を通して評価する代表的な非自記式の尺度です。設問の患者はうつ病と診断され、不安や活動性の低下といった症状を呈しており、これらの症状の程度を客観的に評価し、治療の経過を追う上でHAM-Dは非常に適しています。
選択肢ごとの解説
- 1. BDI-Ⅱ(ベックうつ病評価尺度第2版)は、患者さん自身が記入する自記式の尺度であり、設問で求められている「非自記式」の尺度には該当しません。正しくは:非自記式の尺度を選ぶ場合は、医療従事者が患者を観察・面接して評価する尺度である必要があります。選びやすい理由:うつ病の評価尺度としては非常に有名であり、広範に使用されるため、うつ病患者の評価であることから選択肢として魅力的に映るかもしれません。混同注意:自記式と非自記式の区別が曖昧な場合や、単に「うつ病の評価尺度」というキーワードで選択してしまう場合に混同しやすいです。
- 2. 正解。HAM-D(ハミルトンうつ病評価尺度)は、医療専門家が患者との面接を通じてうつ病の様々な症状の重症度を評価する非自記式の尺度です。本症例のようにうつ病と診断され、不安や活動性の低下を呈している患者の現状把握や治療経過の評価に非常に適しています。
- 3. L-SAS(生活満足度尺度)は、個人の生活全般に対する満足度を評価する尺度であり、うつ病の症状の重症度を直接的に評価する主たる尺度ではありません。また、自記式としても用いられます。正しくは:うつ病の症状そのものの重症度を評価するには適していません。選びやすい理由:作業療法では患者の生活状況や満足度も重要な評価項目であるため、関連性があるように感じられ、選択肢として考慮される可能性があります。混同注意:うつ病患者のQOL(生活の質)や生活機能の評価と、うつ病の診断や重症度を直接測る尺度との目的の違いが混同される可能性があります。
- 4. SDS(自己評価式抑うつ尺度、ツングうつ病自己評価尺度)は、患者さん自身が記入する自記式の尺度であり、設問で求められている「非自記式」の尺度には該当しません。正しくは:非自記式の尺度を選ぶ場合は、医療従事者が患者を観察・面接して評価する尺度である必要があります。選びやすい理由:名称から直接的に「うつ病」の評価尺度であることがわかるため、患者がうつ病であることから正解のように見えるかもしれません。混同注意:BDI-Ⅱと同様に、自記式と非自記式の区別が曖昧な場合や、「うつ病の評価尺度」という点で選んでしまう場合に混同しやすいです。
- 5. STAI(状態-特性不安尺度)は、患者さん自身が現在の「状態不安」と一般的な「特性不安」の程度を評価する自記式の尺度であり、設問が求める非自記式の尺度ではありません。また、患者さんは不安を訴えていますが、本尺度自体はうつ病の重症度を包括的に評価する主たる尺度ではありません。正しくは:非自記式の尺度を選ぶ場合は、医療従事者が患者を観察・面接して評価する尺度である必要があります。選びやすい理由:患者さんが「不安感」を強く訴えているため、不安に関する尺度として適切だと誤解される可能性があります。混同注意:うつ病に合併しやすい不安を評価する尺度と、うつ病そのものの重症度を評価する尺度、および自記式と非自記式の区別が混同される可能性があります。
国試ポイント
精神科領域の評価尺度に関する問題は国家試験で頻繁に出題されます。特に重要なのは、「自記式」と「非自記式」の区別、および各尺度が何を主な目的として評価するのか(例:うつ病の重症度、不安の程度、QOLなど)を正確に理解しておくことです。患者の疾患名や症状、評価の目的に合致する適切な尺度を選択できる知識が求められます。
混同注意
この問題では、うつ病の自己評価尺度(BDI-Ⅱ、SDS)と、医療従事者が評価する他者評価尺度(HAM-D)との区別が最も重要です。また、うつ病そのものの重症度を評価する尺度と、うつ病に合併しやすい症状(例:不安に対するSTAI)や生活機能(L-SAS)を評価する尺度を混同しないように注意が必要です。
次に同じ論点が出たら
次に同様の問題が出題された際は、まず設問文で「評価の対象となる疾患や症状」「評価の目的」「評価形式(自記式か非自記式か)」を明確に把握しましょう。その上で、選択肢にある各尺度がどのような目的で、どのような形式で使われるかを想起し、最も条件に合致するものを選ぶことが重要です。主要な精神疾患(うつ病、統合失調症、不安障害など)における代表的な評価尺度の名称、形式、評価内容をしっかりと整理しておきましょう。
関連知識
精神科における主な評価尺度には、患者自身が記入する『自記式』と、医療従事者が面接や観察で評価する『非自記式(他者評価式)』があります。うつ病の評価では、自記式としてBDI-Ⅱ、SDS、CES-Dなどが、非自記式としてHAM-D、MADRS、CDRSなどが用いられます。不安の評価にはSTAIなどが、QOLの評価にはWHO/QOL26などが使われます。作業療法士は、これらの尺度の中から患者の状態や評価目的に応じて適切なものを選択し、活用する能力が求められます。